第316条の5 公判前整理手続においては、次に掲げる事項を行うことができる。
一 訴因又は罰条を明確にさせること。
二 訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許すこと。
三 第二百七十一条の五第一項又は第二項(これらの規定を第三百十二条の二第四項において準用する場合を含む。)の請求について決定をすること。
四 公判期日においてすることを予定している主張を明らかにさせて事件の争点を整理すること。
五 証拠調べの請求をさせること。
六 前号の請求に係る証拠について、その立証趣旨、尋問事項等を明らかにさせること。
七 証拠調べの請求に関する意見(証拠書類について第三百二十六条の同意をするかどうかの意見を含む。)を確かめること。
八 証拠調べをする決定又は証拠調べの請求を却下する決定をすること。
九 証拠調べをする決定をした証拠について、その取調べの順序及び方法を定めること。
十 証拠調べに関する異議の申立てに対して決定をすること。
十一 第三目の定めるところにより証拠開示に関する裁定をすること。
十二 第三百十六条の三十三第一項の規定による被告事件の手続への参加の申出に対する決定又は当該決定を取り消す決定をすること。
十三 公判期日を定め、又は変更することその他公判手続の進行上必要な事項を定めること。
刑事訴訟法316条の6 公判前整理手続期日の決定と変更
第316条の6 裁判長は、訴訟関係人を出頭させて公判前整理手続をするときは、公判前整理手続期日を定めなければならない。
2 公判前整理手続期日は、これを検察官、被告人及び弁護人に通知しなければならない。
3 裁判長は、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判前整理手続期日を変更することができる。この場合においては、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
刑事訴訟法316条の7 公判前整理手続の出席者
第316条の7 公判前整理手続期日に検察官又は弁護人が出頭しないときは、その期日の手続を行うことができない。
刑事訴訟法316条の8 弁護人の選任
第316条の8 弁護人が公判前整理手続期日に出頭しないとき、又は在席しなくなつたときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
2 弁護人が公判前整理手続期日に出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。
刑事訴訟法316条の9 被告人の出席
第316条の9 被告人は、公判前整理手続期日に出頭することができる。
2 裁判所は、必要と認めるときは、被告人に対し、公判前整理手続期日に出頭することを求めることができる。
3 裁判長は、被告人を出頭させて公判前整理手続をする場合には、被告人が出頭する最初の公判前整理手続期日において、まず、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨を告知しなければならない。
刑事訴訟法316条の10 被告人の意思確認
第316条の10 裁判所は、弁護人の陳述又は弁護人が提出する書面について被告人の意思を確かめる必要があると認めるときは、公判前整理手続期日において被告人に対し質問を発し、及び弁護人に対し被告人と連署した書面の提出を求めることができる。
刑事訴訟法316条の11 受命裁判官
第316条の11 裁判所は、合議体の構成員に命じ、公判前整理手続(第三百十六条の五第二号、第三号、第八号及び第十号から第十二号までの決定を除く。)をさせることができる。この場合において、受命裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
刑事訴訟法316条の12 調書の作成
第316条の12 公判前整理手続期日には、裁判所書記官を立ち会わせなければならない。
2 公判前整理手続期日における手続については、裁判所の規則の定めるところにより、公判前整理手続調書を作成しなければならない。
刑事訴訟法316条の13 検察官による証明予定事実の提示と証拠調べ請求
第316条の13 検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実(公判期日において証拠により証明しようとする事実をいう。以下同じ。)を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない。この場合においては、当該書面には、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調べを請求する意思のない資料に基づいて、裁判所に事件について偏見又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載することができない。
2 検察官は、前項の証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。
3 前項の規定により証拠の取調べを請求するについては、第二百九十九条第一項の規定は適用しない。
4 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の書面の提出及び送付並びに第二項の請求の期限を定めるものとする。
刑事訴訟法316条の14 検察官請求証拠の開示、証拠の一覧表の交付
第316条の14 検察官は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については、速やかに、被告人又は弁護人に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。
一 証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
二 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
2 検察官は、前項の規定による証拠の開示をした後、被告人又は弁護人から請求があつたときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表の交付をしなければならない。
3 前項の一覧表には、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、証拠ごとに、当該各号に定める事項を記載しなければならない。
一 証拠物 品名及び数量
二 供述を録取した書面で供述者の署名又は押印のあるもの 当該書面の標目、作成の年月日及び供述者の氏名
三 証拠書類(前号に掲げるものを除く。) 当該証拠書類の標目、作成の年月日及び作成者の氏名
4 前項の規定にかかわらず、検察官は、同項の規定により第二項の一覧表に記載すべき事項であつて、これを記載することにより次に掲げるおそれがあると認めるものは、同項の一覧表に記載しないことができる。
一 人の身体若しくは財産に害を加え又は人を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれ
二 人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
三 犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障を生ずるおそれ
5 検察官は、第二項の規定により一覧表の交付をした後、証拠を新たに保管するに至つたときは、速やかに、被告人又は弁護人に対し、当該新たに保管するに至つた証拠の一覧表の交付をしなければならない。この場合においては、前二項の規定を準用する。