梅が香を ~ ことばの道しるべ

 
寛平の御時、きさいの宮の歌合の歌
 
         よみ人知らず
 
梅が香を袖に移してとどめてば
 
   春は過ぐとも形見ならまし
 


<<古今和歌集 巻第一 春歌上 0046>>

 
梅が香を、もし薫物たきもののように袖に移して、留める事ができたならば、春は過ぎ去っても、その香が春の形見となろう。


<<窪田空穂. 古今和歌集(やまとうたeブックス)>>

 

言志録35条 容人三則 その一

 
物、美徳也。然亦有明暗
 


 
物をるるは美徳びとくなり。しかれども亦明暗まためいあんあり。


<<佐藤一斎著/川上正光全訳注. 言志四録(一)言志録(講談社学術文庫)>>

 
雅量がりょうがあって人を容れるのは、美徳である。しかし、その場合善と悪があって、善を容れるのはよいが悪を容れるのはよくない。


<<佐藤一斎著/川上正光全訳注. 言志四録(一)言志録(講談社学術文庫)>>

 

言志録36条 容人三則 そのニ ~ ことばの道しるべ

 
人言、須容而択一レ之。
 
拒。
 
又不惑。
 


 
人の言はすべ<か/rt>らくれてこれえらぶべし。こばからず。又惑またまどう可からず。


<<佐藤一斎著/川上正光全訳注. 言志四録(一)言志録(講談社学術文庫)>>

 
他人のいうことは、一応、聴き入れてからよしあしを選択すべきである。始めから、断ってはいけない。また、その言に惑ってはいけない(しっかりした自分の考えがなければいけない。)


<<佐藤一斎著/川上正光全訳注. 言志四録(一)言志録(講談社学術文庫)>>

 

山高み ~ ことばの道しるべ

 
題しらず
 
         よみ人知らず
 
山たかみ人もすさめぬ桜花
 
 いたくなわびそ我れ見はやさむ
 


<<古今和歌集 巻第一 春歌上 0050>>

 
山が高くして、人の賞翫しない桜花よ。はなはだしくわびるな。我が賞翫しよう。


<<窪田空穂. 古今和歌集(やまとうたeブックス)>>

 

人はいさ ~ ことばの道しるべ

 
初瀬はつせまうづる毎に宿りける人の家に、久しく宿らで、程へて後にいたれりければ、かの家の主人あるじかく定かになむ宿りはあるといひ出だして侍りければ、そこに立てるける梅の花を折りてよめる
 
         つらゆき
 
人はいさ心も知らず故里は
 
  花ぞ昔の香ににほひける
 


<<古今和歌集 巻第一 春歌上 0042>>

 
人の方は、如何であろうか、心が知られない。しかし故里の方は変らないもので、第一に花が、このように昔通りに香ににおっている事であるよ。


<<窪田空穂. 古今和歌集(やまとうたeブックス)>>