第96条 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
一 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
二 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
四 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
五 被告人が、正当な理由がなく前条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
六 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
2 前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取することができる。
3 保釈を取り消された者が、第九十八条の二の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときも、前項と同様とする。
4 拘禁刑以上の刑に処する判決(拘禁刑の全部の執行猶予の言渡しをしないものに限る。以下同じ。)の宣告を受けた後、保釈又は勾留の執行停止をされている被告人が逃亡したときは、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消さなければならない。
5 前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取しなければならない。
6 保釈を取り消された者が、第九十八条の二の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しない場合又は逃亡した場合において、その者が拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者であるときは、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取しなければならない。ただし、第四項の規定により保釈を取り消された者が逃亡したときは、この限りでない。
7 保釈された者が、拘禁刑以上の刑に処する判決又は拘留に処する判決の宣告を受けた後、第三百四十三条の二(第四百四条(第四百十四条において準用する場合を含む。第九十八条の十七第一項第二号及び第四号において同じ。)において準用する場合を含む。)の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しないとき又は逃亡したとき(保釈されている場合及び保釈を取り消された後、逃亡した場合を除く。)は検察官の請求により又は職権で、刑の執行のため呼出しを受け正当な理由がなく出頭しないときは検察官の請求により、決定で、保証金の全部又は一部を没取しなければならない。
刑事訴訟法97条 上訴と勾留に関する決定
第97条 上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないものについて、勾留の期間を更新し、勾留を取り消し、又は保釈若しくは勾留の執行停止をし、若しくはこれを取り消すべき場合には、原裁判所が、その決定をしなければならない。
2 上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて前項の決定をすべき裁判所は、裁判所の規則の定めるところによる。
3 前二項の規定は、勾留の理由の開示をすべき場合にこれを準用する。
刑事訴訟法98条 保釈の取消し等と収容の手続
第98条 保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があつたとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員又は刑事施設職員は、検察官の指揮により、勾留状の謄本及び保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定の謄本又は期間を指定した勾留の執行停止の決定の謄本を被告人に示してこれを刑事施設に収容しなければならない。
2 前項の書面を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、同項の規定にかかわらず、検察官の指揮により、被告人に対し保釈若しくは勾留の執行停止が取り消された旨又は勾留の執行停止の期間が満了した旨を告げて、これを刑事施設に収容することができる。ただし、その書面は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
3 第七十一条の規定は、前二項の規定による収容についてこれを準用する。
刑事訴訟法98条の2 保釈等の取消し後の被告人への出頭命令
第98条の2 検察官は、保釈又は勾留の執行停止を取り消す決定があつた場合において、被告人が刑事施設に収容されていないときは、被告人に対し、指定する日時及び場所に出頭することを命ずることができる。
刑事訴訟法98条の3 保釈等の取消し後の被告人の出頭命令違反に対する罰則
第98条の3 保釈又は勾留の執行停止を取り消され、検察官から出頭を命ぜられた被告人が、正当な理由がなく、指定された日時及び場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。
刑事訴訟法98条の4 監督者の選任、責務
第98条の4 裁判所は、保釈を許し、又は勾留の執行停止をする場合において、必要と認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て監督者として選任することができる。
2 裁判所は、前項の同意を得るに当たつては、あらかじめ、監督者として選任する者に対し、次項及び第四項に規定する監督者の責務並びに第九十八条の八第二項、第九十八条の十一及び第九十八条の十八第三項の規定による監督保証金の没取の制度を理解させるために必要な事項を説明しなければならない。
3 監督者は、被告人の逃亡を防止し、及び公判期日への出頭を確保するために必要な監督をするものとする。
4 裁判所は、監督者に対し、次の各号に掲げる事項のいずれか又は全てを命ずるものとする。
一 被告人が召喚を受けたときその他この法律又は他の法律の規定により被告人が出頭しなければならないときは、その出頭すべき日時及び場所に、被告人と共に出頭すること。
二 被告人の住居、労働又は通学の状況、身分関係その他のその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所の定めるものについて、次に掲げるところに従つて報告をすること。
イ 裁判所の指定する時期に、当該時期における当該事項について報告をすること。
ロ 当該事項に変更が生じたときは、速やかに、その変更の内容について報告をすること。
刑事訴訟法98条の5 監督保証金
第98条の5 監督者を選任する場合には、監督保証金額を定めなければならない。
2 監督保証金額は、監督者として選任する者の資産及び被告人との関係その他の事情を考慮して、前条第四項の規定により命ずる事項及び被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
刑事訴訟法98条の6 監督者を選任した場合の保釈等の手続
第98条の6 監督者を選任した場合には、保釈を許す決定は、第九十四条第一項の規定にかかわらず、保証金及び監督保証金の納付があつた後でなければ、執行することができない。
2 監督者を選任した場合には、第九十五条第一項前段の決定は、監督保証金の納付があつた後でなければ、執行することができない。
3 第九十四条第二項及び第三項の規定は、監督保証金の納付について準用する。この場合において、同条第二項中「保釈請求者でない者」とあるのは「監督者でない者(被告人を除く。)」と、同条第三項中「被告人」とあるのは「被告人及び監督者」と読み替えるものとする。
刑事訴訟法98条の7 被告人の召喚等に関する監督者への通知、監督者の出頭・報告に関する検察官への通知
第98条の7 裁判所は、監督者を選任した場合において、被告人の召喚がされたときその他この法律又は他の法律の規定により被告人が指定の日時及び場所に出頭しなければならないこととされたときは、速やかに、監督者に対し、その旨並びに当該日時及び場所を通知しなければならない。
2 裁判所は、第九十八条の四第四項(第一号に係る部分に限る。)の規定による出頭があつたときはその旨を、同項(第二号に係る部分に限る。)の規定による報告があつたときはその旨及びその報告の内容を、同項(第一号に係る部分に限る。)の規定による出頭若しくは同項(第二号イに係る部分に限る。)の規定による報告がなかつたとき又は同項(第二号ロに係る部分に限る。)の規定による報告がなかつたことを知つたときはその旨及びその状況を、それぞれ速やかに検察官に通知しなければならない。
刑事訴訟法98条の8 監督者の解任
第98条の8 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、監督者を解任することができる。
一 監督者が、正当な理由がなく、第九十八条の四第四項の規定による命令に違反したとき。
二 心身の故障その他の事由により、監督者が第九十八条の四第四項の規定により命ぜられた事項をすることができない状態になつたとき。
三 監督者から解任の申出があつたとき。
2 前項(第一号に係る部分に限る。)の規定により監督者を解任する場合には、裁判所は、決定で、監督保証金の全部又は一部を没取することができる。