刑法39条 心神喪失及び心神耗弱

第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
 
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

e-Gov 刑法

 

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cf. 最決昭58・9・13(昭和58(あ)753  窃盗) 全文

判示事項
 一 心神喪失又は心神耗弱の判断の性質
 二 責任能力判断の前提となる生物学的要素及び心理学的要素についての判断権

裁判要旨
 一 刑法三九条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であつて、専ら裁判所に委ねられるべき問題である。
 二 刑法三九条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかの法律判断の前提となる生物学的、心理学的要素についての評価は、右法律判断との関係で究極的には裁判所に委ねられるべき問題である。

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cf. 最決昭59・7・3(昭和58(あ)1761  殺人、殺人未遂) 全文

判示事項
 精神分裂病者と責任能力

裁判要旨
 被告人が犯行当時精神分裂病に罹患していたからといつて、そのことだけで直ちに被告人が心神喪失の状態にあつたとされるものではなく、その責任能力の有無・程度は、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判定すべきである。

 
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cf. 最判平21・12・8(平成20(あ)1718 殺人,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件) 全文

判示事項
 1 精神鑑定の意見の一部を採用した場合と責任能力の有無・程度の判断
 2 責任能力の有無・程度について原判決の判断手法に誤りがないとされた事例

裁判要旨
 1 裁判所は,特定の精神鑑定の意見の一部を採用した場合においても,責任能力の有無・程度について,当該意見の他の部分に拘束されることなく,被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して判定することができる。
 2 精神医学者の精神鑑定における意見のうち被告人が心神喪失の状態にあったとする部分を前提資料や推論過程に疑問があるとして採用せず,責任能力の有無・程度について,被告人の犯行当時の病状,犯行前後の言動や犯行の動機,従前の生活状態から推認される人格傾向等を総合考慮して,統合失調症による病的体験と犯行との関係,被告人の本来の人格傾向と犯行との関連性の程度等を検討し,被告人が心神耗弱の状態にあったと認定した原判決の判断手法に誤りはない。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:

いわゆる原因において自由な行為を認めたものと解される

cf. 最決昭43・2・27(昭和42(あ)1814 恐喝、道路交通法違反) 全文

判示事項
 酒酔い運転につき刑法第三九条第二項の適用がないとされた事例

裁判要旨
 酒酔い運転の行為当時に飲酒酩酊により心神耗弱の状態にあつたとしても、飲酒の際酒酔い運転の意思が認められる場合には、刑法第三九条第二項を適用して刑の減軽をすべきではない。

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cf. 大阪高判昭56・9・30(昭和56(う)517  覚せい剤取締法違反被告事件) 全文

判示事項
 覚せい剤の使用及び所持につき刑法三九条の適用がないとされた事例

裁判要旨
 覚せい剤の使用及び所持について、犯行当時覚せい剤中毒等により少なくとも心神耗弱の状態にあつても、責任能力がある当時における覚せい剤の反復使用、継続所持の意思が実現されたものと認められる場合には、刑法三九条を適用すべきではない。