民法32条 失踪の宣告の取消し

第32条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
 
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。


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もう一歩先へ
原則、失踪宣告の取消により、死亡は遡及的になかったことになります。よって、相続により得た所有権は失われ、返還の対象になります。売買は他人物売買となります。失踪宣告後に婚姻をしていれば重婚状態になります。この場合、前婚は離婚原因(民法770条1項5号)、後婚が取消原因(前婚は適法な婚姻なので)となります。
cf. 民法770条 裁判上の離婚
cf. 民法732条 重婚の禁止
cf. 民法744条 不適法な婚姻の取消し
もう一歩先へ 1項:
例外1:善意でした行為(e.g. 売買、婚姻)の効力は影響されません。売買の場合ならば他人物売買にならず、返還義務も生じません。婚姻の場合ならば前婚は復活せず、重婚状態になりません。この場合の「善意」とは行為の当事者双方の善意を要するとされています(e.g. 売買、後婚をした者の双方が善意であること)。
もう一歩先へ 2項:
例外2:双方が善意の場合は1項が適用されますが、そうでない場合で、権利を得た者が善意の場合は2項が適用されます。

この場合は、現存利益の範囲で返還義務を負います。民法703条と同じ趣旨になります。

cf. 民法703条 不当利得の返還義務

悪意の場合は不当利得の悪意の受益者(民法704条)となり、受けた利益に利息を付して返還する義務を負います。

cf. 民法704条 悪意の受益者の返還義務等
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失踪宣告の取消しの申立ては、失踪者の住所地の家庭裁判所になります。
cf. 家事事件手続法149条 失踪の宣告の取消しの審判事件
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失踪宣告の取消しがなされた場合は、訴えを提起した者は、審判が確定してから10日以内に、市区町村役場に失踪の届出をしなければなりません。届出には、審判書謄本と確定証明書が必要になります。
cf. 戸籍法94条 失踪宣告又は失踪宣告取消の裁判が確定した場合の届出