第249条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
判示事項
恐喝罪における交付の意義
裁判要旨
恐喝取財罪の本質は、被恐喝者の畏怖に因る瑕疵ある同意を利用する財物の領得行爲であると解すべきであるから、その領得行爲の形式が被恐喝者において自から財物を提供した場合は勿論、被恐喝者が畏怖して默認し居るに乗じ恐喝者において財物を奪取した場合においても亦本罪の成立を妨ぐるものではないと謂わねばならぬ。それ故本罪の正條たる刑法第二四九條第一項の「交付せしめ」との語義は以上の各場合を包含する趣旨と解するを正當とし、亦原判決事實摘示中の「交付せしめて之を喝取し」との用辭は、右刑法正條の用語例に從いたるものと解するを相當とする。
詐欺的手段と恐喝手段とが併用された場合、「その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至つた場合は詐欺罪ではなく恐喝罪となる」としている。
cf. 最判昭24・2・8(昭和23(れ)1241 恐喝) 全文判示事項
一 警察官を装うて他人の所持する盜品を取上げる行爲と恐喝罪
二 他人の所持する盜品に對する恐喝罪の成立
裁判要旨
一 他人が窃取した綿糸を運搬して來るところを、被告人が警察官を装うて之を畏怖させその綿糸を交付させた行爲は、恐喝罪をもつて問擬すべきである。被告人の施用した手段の中に虚僞の部分即ち警察官と稱した部分があつても、その部分も相手方に畏怖の念を生ぜしめる一材料となり、その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至つた場合は詐欺罪ではなく、恐喝罪となるのである。
二 本件において被害者Aの持つていた綿糸は盜品であるから、Aがそれについて正當な權利を有しないことは明らかである。しかし正當な権利を有しない者の所持であつても、その所持は所持として法律上の保護を受けるのであつて、例へば窃盜したものだからそれを強取しても處罰に値しないとはいえないのである。恐喝罪にしても同様であつて、賍物を所持する者に對し恐喝の手段を用いてその賍物を交付させた場合には矢張り恐喝罪となるのである。
