刑法36条 正当防衛

第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
 
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。


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Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最決昭41・7・7(昭和40(あ)1998  殺人未遂、銃砲刀剣類等所持取締法違反) 全文

判示事項
 殺人未遂罪につき誤想過剰防衛が認められた事例。

裁判要旨
 被告人の長男甲が乙に対し、乙がまだなんらの侵害行為に出ていないのに、これに対し所携のチエーンで殴りかかつた上、なお攻撃を加えることを辞さない意思をもつて、庖丁を擬した乙と対峙していた際に、甲の叫び声を聞いて表道路に飛び出した被告人は、右のごとき事情を知らず、甲が乙から一方的に攻撃を受けているものと誤信し、その侵害を排除するため乙に対し猟銃を発射し、散弾の一部を同人の右頸部前面鎖骨上部に命中させたものであること、その他原判決認定の事実関係(原判文参照)のもとにおいては、被告人の本件所為は、誤想防衛であるが、その防衛の程度を超えたものとして、刑法第三六条第二項により処断すべきものである。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最決昭62・3・26(昭和59(あ)1699  傷害致死) 全文

判示事項
 傷害致死につき誤想過剰防衛であるとされた事例

裁判要旨
 空手三段の在日外国人が、酩酊した甲女とこれをなだめていた乙男とが揉み合ううち甲女が尻もちをついたのを目撃して、甲女が乙男から暴行を受けているものと誤解し、甲女を助けるべく両者の間に割つて入つたところ、乙男が防衛のため両こぶしを胸に前辺りに上げたのを自分に殴りかかつてくるものと誤信し、自己及び甲女の身体を防衛しようと考え、とつさに空手技の回し蹴りを乙男の顔面付近に当て、同人を路上に転倒させ、その結果後日死亡するに至らせた行為は、誤信にかかる急迫不正の侵害に対する防衛手段として相当性を逸脱し、誤想過剰防衛に当たる。

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cf. 最決平29・4・26(平成28(あ)307  殺人,器物損壊被告事件) 全文

単に予期したに留まらず、その機会を利用して積極的に加害する意思が肯定できれば「急迫」性が否定される。

判示事項
 侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法

裁判要旨
 行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。

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cf. 最決昭52・7・21(昭和51(あ)671  兇器準備集合、暴力行為等処罰に関する法律違反) 全文

判示事項
 刑法三六条における侵害の急迫性

裁判要旨
 刑法三六条における侵害の急迫性は、当然又はほとんど確実に侵害が予期されただけで失われるものではないが、その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは失われることになる。

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cf. 最判昭44・12・4(昭和44(あ)1165 傷害) 全文

判示事項
 刑法三六条一項にいう「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」の意義

裁判要旨
 刑法三六条一項にいう「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」とは、反撃行為が急迫不正の侵害に対する防衛手段として相当性を有することを意味し、右行為によつて生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であつても、正当防衛行為でなくなるものではない。

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cf. 最判昭46・11・16(昭和45(あ)2563  殺人) 全文

判示事項
 一 刑法三六条にいう「急迫」の意義
 二 刑法三六条の防衛行為と防衛の意思
刑法三六条の防衛行為と防衛の意思」

裁判要旨
 一 刑法三六条にいう「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫つていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。
 二 刑法三六条の防衛行為は、防衛の意思をもつてなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといつて、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。

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cf. 最決平20・5・20(平成18(あ)2618  傷害被告事件) 全文

判示事項
 被告人が,自らの暴行により相手方の攻撃を招き,これに対する反撃としてした傷害行為について,正当防衛が否定された事例

裁判要旨
 相手方から攻撃された被告人がその反撃として傷害行為に及んだが,被告人は,相手方の攻撃に先立ち,相手方に対して暴行を加えているのであって,相手方の攻撃は,被告人の暴行に触発された,その直後における近接した場所での一連,一体の事態ということができ,被告人は不正の行為により自ら侵害を招いたものといえるから,相手方の攻撃が被告人の上記暴行の程度を大きく超えるものでないなどの本件の事実関係の下においては,被告人の上記傷害行為は,被告人において何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえない。

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cf. 最判昭32・1・22(昭和29(あ)1808   殺人) 全文

判示事項
 喧嘩と正当防衛

裁判要旨
 喧嘩闘争において正当防衛が成立するかどうかを判断するに当つては喧嘩闘争を全般的に観察することを要し、闘争行為中の瞬間的な部分の攻防の態様のみによつてはならない。

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cf. 最判昭50・11・28(昭和49(あ)2786 殺人未遂) 全文

防衛に名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は、防衛の意思を欠く結果、正当防衛のための行為と認めることはできないが、防衛の意思と攻撃の意思とが併存している場合の行為は、防衛の意思を欠くものではない

判示事項
 防衛の意思と攻撃の意思とが併存している場合と刑法三六条の防衛行為

裁判要旨
 急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するためにした行為であるかぎり、同時に侵害者に対する攻撃的な意思に出たものであつても、刑法三六条の防衛行為にあたる。

 
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cf. 最判昭24・8・18(昭和24(れ)295 傷害) 全文

判示事項
 一 刑法第三六條にいわゆる「急迫」の意義―刑法第三七條にいわゆる「現在の危難」の意義
 二 公益のための正當防衞
 三 國家的公共的法益の侵害等に對する私人の正當防衞行爲の限界

裁判要旨
 一 刑法第三六條にいわゆる急迫の侵害における「急迫」とは、法益の侵害が間近に押し迫つたことすなわち法益侵害の危險が緊迫したことを意味するのであつて、被害の現在性を意味するものではないまた刑法第三七條にいわゆる「現在の危難」についても、ほぼこれと同様のことが云い得るわけである

 二 公共の福祉を最高の指導原理とする新憲法の理念からいつても、公共の福祉をも含めてすべての法益は、國家的、國民的、公共的法益についても正當防衞の許さるべき場合が存することを認むべきである。だがしかし、本來國家的、公共的法益を保全防衞することは、國家又は公共團體の公的機關の本來の任務に属する事柄であつて、これをた易く事由に私人又は私的團體の行動に委することは却つて秩序を亂し事態を悪化せしむる危險を伴う虞がある。それ故、かかる公益のための正當防衞等は、國家公共の機關の有効な公的活動を期待し得ない極めて緊迫した場合においてのみ例外的に許容さるべきものと解するを相當とする。そこで原判決の判示した具體的な客觀的事態情勢は、國家公共の機關(連合國の占領下にある現状においては、占領軍機關をも含めて)の有効な公的活動を期待し得ない極めて緊迫した場合に該當するに至つたものとは到底認めることができない從つてかかる事態の下においては、被告人の行動を正當防衞又は緊急避難として寛恕するを得ないものと云わねばならぬ。

 三 防衞行爲が己むことを得ないとは、當該具體的事態の下において當時の社會的通念が、防衞行爲として當然性、妥當性を認め得るものを云うのである。そして、殊に國家的公共的法益に對する侵害等を私人が防衞する場合に、己むことを得ざるものとして當然許容さるべき範圍は、整備せる現在國家の機構組織の下において、必然的に比較的極めて狭少な限局されたものたるべきことは國家理論の歸結として何人も承認しなければならぬところである。

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cf. 最判平21・7・16(平成20(あ)1870  暴行被告事件) 全文

判示事項
 財産的権利等を防衛するためにした暴行が刑法36条1項にいう「やむを得ずにした行為」に当たるとされた事例

裁判要旨
 相手方らが立入禁止等と記載した看板を被告人方建物に取り付けようとすることによって被告人らの上記建物に対する共有持分権,賃借権等や業務,名誉に対する急迫不正の侵害に及んだのに対し,上記権利等を防衛するために被告人が相手方の胸部等を両手で突いた暴行は,相手方らが以前から継続的に被告人らの上記権利等を実力で侵害する行為を繰り返しており,上記暴行の程度が軽微であるなどの事実関係(判文参照)の下においては,防衛手段としての相当性の範囲を超えるものではない。

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cf. 最判平1・11・13(昭和61(あ)782 暴力行為等処罰に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反) 全文

判示事項
 刑法三六条一項にいう「巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為」に当たるとされた事例

裁判要旨
 年齢も若く体力にも優れた相手方が、「お前、殴られたいのか。」と言って手拳を前に突き出し、足を蹴り上げる動作をしながら目前に迫ってきたなど判示のような状況の下において、危害を免れるため、菜切包丁を手に取ったうえ腰のあたりに構えて脅迫した本件行為は、いまだ防衛手段として相当性の範囲を超えたものとはいえない。

 
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cf. 最判昭60・9・12(昭和59(あ)1256  殺人) 全文

判示事項
 殺人につき防衛の意思を欠くとはいえないとされた事例

裁判要旨
 被告人が、自己の経営するスナツク店内において、相手方から一方的にかなり激しい暴行を加えられているうち、憎悪と怒りから調理場にあつた文化包丁を持ち出し、「表に出てこい」などと言いながら出入口へ向かつたところ、相手方から物を投げられ、「逃げる気か」と言つて肩を掴まれるなどしたため、更に暴行を加えられることをおそれ、振り向きざま手にした包丁で相手方の胸部を一突きして殺害した本件事実関係のもとにおいては(判文参照)、被告人の行為は、「表に出てこい」などの言辞があつたからといつて、専ら攻撃の意思に出たものとはいえず、防衛の意思を欠くことにはならない。

刑法37条 緊急避難

第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
 
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。


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判例は危険の切迫性の不存在ゆえに緊急避難の成立を否定したものの、社会的法益を本条の保護法益として捉えているかのような判断をしている。

cf. 最判昭35・2・4(昭和34(あ)949 爆発物取締罰則違反、往来妨害) 全文

判示事項
 過剰避難と認められない事例

裁判要旨
 吊橋が腐朽甚しく、いつ落下するかも知れないような危険な状態にあつたとしても、ダイナマイトを使用してこれを爆破する行為については、緊急避難を認める余地なく、従つてまた過剰避難も成立しえない。

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「やむを得ずにした行為」とは、当該避難行為をする以外には方法がなく、かかる行動に出たことが条理上肯定し得る場合を意味するとしています。

cf. 最大判昭24・5・18(昭和22(れ)319  脅迫) 全文

判示事項
 一 憲法第二八條にいわゆる團結權の意義と大衆運動の合法性の限界
 二 刑法第三七條の緊急避難の意義
 三 自救行爲の意義
 四 食糧その他の生活必需物資が缺乏している状況下において國民の各自又は任意の集團が、隱退藏物資の交付を保管者に對し要求し得べき權利の有無
 五 昭和二〇年法律第五一号労働組合法第一条第二項の法意

裁判要旨
 一 憲法第二八条はこの趣旨において、企業者對勤労者すなわち使用者對被用者というような關係に立つものの間において、經濟上の弱者である勤労者のために團結權乃至團体行動權を保障したものに外ならないそれ故、この團結權に關する憲法の保障を勤労者以外の團体又は個人の單なる集合に過ぎないものに對してまで擴張せんとする論旨の見解にはにわかに賛同することはできないのである、もとり一般民衆が法規その他公序良俗に反しない限度において、所謂大衆運動なるものを行い得べきことは、何人も異論のないところであらうけれど、その大衆運動なるの一事から苟くもその運動に關する行爲である限り常にこれを正當行爲なりとして刑法第三五條に從い刑罰法令の適用を排除すべきであると結論することはできない。
 二 緊急避難とは「自己又ハ他人ノ生命身体自由若クハ財産ニ對スル現在ノ危難ヲ避クル爲メ己ムコトヲ得ザルニ出デタル行爲」というのであり、右所謂「現在ノ危難」とは現に危難の切迫していることを意味し又「己ムコトヲ得ザルニ出デタル」というのは當該避難行爲をする以外には他に方法がなく、かゝる行動に出たことが條理上肯定し得る場合を意味するのである。
 三 自救行爲とは一定の權利を有するものが、これを保全するため官憲の手を待つに遑なく自ら直ちに必要の限度において適當なる行爲をすること例えば盜犯の現場において被害者が賍物を取還すが如きをいうのである。
 四 所論は本件被告事件の發生當時わが國内における食糧事情が、その他の生活必需物資を含め缺乏を告げ國民生活の上に危機迫らんとする虞ある状況にあつた旨、並びにかかる状況下において、不當に隱退藏せられている生活必需物資が存在するならば須らくこれを摘發して國民一般の需要に充つべきである旨主張するものであるが、假りに所論の通りであるとしても、他に法律上の事由の存在しない限り、これがために直ちに國民の各自又は任意の集團がそれぞれ自己のために直接該物資の保管者に對しこれが交付を要求し得べき權利ありとすることはできない。
 五 昭和二〇年法律第五一号労働組合法第一条第二項の規定は、同条第一項の目的達成のためにした正当な行為についてのみ、刑法第三五条の適用を認めたに過ぎず、勤労者の団体交渉においても、刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる行為が行われた場合にまで、その適用があることを定めたものではない。

刑法38条 故意

第38条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
 
2 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
 
3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。


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Un pas de plus ! もう一歩先へ 1項:

法定的符合説に立ちつつ、数故意犯説を採用。学説は法定的符合説について、構成要件の範囲内で故意を抽象化する以上、故意に個数を観念できないと考えるのが自然であるとして、一罪の故意犯の意思をもってした場合に、複数の故意犯の成立を認める数故意犯説に親和的であるとする。

cf. 最判昭53・7・28(昭和52(あ)623 強盗殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反) 全文

判示事項
 強盗殺人未遂罪といわゆる打撃の錯誤

裁判要旨
 犯人が強盗の手段として人を殺害する意思のもとに銃弾を発射して殺害行為に出た結果、犯人の意図した者に対して右側胸部貫通銃創を負わせたほか、犯人の予期しなかつた者に対しても腹部貫通銃創を負わせたときは、後者に対する関係でも強盗未遂罪が成立する。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:

事実の錯誤において故意を認めるために、構成要件の重なり合いを前提に、「両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い」犯罪の「故意が成立し同罪が成立する」とする考え方(法定的符合説)

cf. 最決昭61・6・9(昭和61(あ)172  大麻取締法違反、麻薬取締法違反) 全文

判示事項
 一 覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末を麻薬であるコカインと誤認して所持した場合の罪責
 二 覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末を麻薬であるコカインと誤認して所持した場合における没収の適条

裁判要旨
 一 覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末を麻薬であるコカインと誤認して所持した場合には、麻薬取締法六六条一項、二八条一項の麻薬所持罪が成立する。
 二 覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩粉末を麻薬であるコカインと誤認して所持した場合における覚せい剤の没収は、覚せい剤取締法四一条の六によるべきである。

 
Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最判昭23.5.1( 昭和23(れ)105 窃盗、賍物故買) 全文

判示事項
 窃盗の意思で強盗の見張をした者の責任

裁判要旨
 被告人以外の共犯者は最初から強盗の意思で強盗の結果を實現したのであるがただ被告人だけは輕い窃盗の意思で他の共犯者の勸誘に應じて屋外で見張をしたと云うのであるから、被告人は輕い窃盗の犯意で重い強盗の結果を發生させたものであるが、共犯者の強盗所爲は、被告人の豫期しないところであるからこの共犯者の強盗行爲について、被告人に強盗の責任を問うことはできない譯である。然らば、原判決が被告人に對し刑法第三八條第二項により窃盗罪として處斷したのは正當である。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最判昭25・4・11(昭和24(れ)2893 強盗) 全文

判示事項
 共謀と刑法第三八條第二項

裁判要旨
 被告人がA等と恐喝の共謀をして現場に臨んだところ、Aが共謀の範圍を超えて強盜の既遂をした事實を認定するに十分である。してみると被告人は刑法第三八條第二項によつて恐喝既遂の責任を負うべきは當然である。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最判昭25・10・10(昭和25(れ)400  傷害致死幇助、銃砲等所持禁止令違反) 全文

判示事項
 正犯が人に傷害を加えるべきことを認識して幇助したところ正犯が殺害した場合における幇助者の罪責

裁判要旨
 原判決は、被告人が正犯たるAにおいて判示被害者両名に傷害を加えるに至るかも知れないと認識しながら判示匕首を貸与したところ、右Aが殺人の意思を以つて該匕首により被害者両名を刺殺した場合には、被告人は傷害致死幇助として刑法第二〇五条、同第六二条第一項をもつてこれを処断すべきである。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 1項:
荷物が覚醒剤であるとの認識がなくとも、覚醒剤を含む違法な薬物であるとの認識があれば、覚醒剤取締法の輸入罪の故意が認められる。
 
cf. 最決平2・2・9(平成1(あ)1038  覚せい剤取締法違反、関税法違反) 全文

判示事項
 覚せい剤輸入罪及び所持罪における覚せい剤であることの認識の程度

裁判要旨
 

Un pas de plus ! もう一歩先へ
cf. 最決昭54・3・27(昭和52(あ)836  麻薬取締法違反、関税法違反) 全文

判示事項
 一 営利の目的で麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類粉末を覚せい剤と誤認して輸入した場合とその罪責
 二 税関長の許可を受けないで麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した場合とその罪責

裁判要旨
 一 営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類粉末を覚せい剤と誤認して輸入した場合には、麻薬取締法六四条二項、一項、一二条一項の麻薬輸入罪が成立する。
 二 税関長の許可を受けないで、麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した場合には、関税法一一一条一項の無許可輸入罪が成立する。

Un pas de plus ! もう一歩先へ ただし書き:

行政刑罰法規に関して、過失行為を処罰する旨の明文の規定がない場合であっても、「その取締る事柄の本質にかんがみ」過失行為を処罰しうるとしています。
これは、当該特別法の目的から、罰則を定めた法条に過失行為を処罰する趣旨が包含されていると認められるときには、同法条が刑法38条1項ただし書きに規定される特別の規定に含まれるとしたものと解されています。

cf. 最判昭37・5・4(昭和35(あ)2945 賍物故買、古物営業法違反) 全文

判示事項
 一 古物営業法第一七条にいう「その都度」の意義
 二 同法第二九条、第一七条の法意
 三 同法第二九条、第一七条の合憲性

裁判要旨
 一 古物営業法第一七条にいう「その都度」とは、「そのたびごとに」の意に解すべきである。
 二 同法第二九条で処罰する「同法第一七条の規定に違反した者」とは故意に所定の記帳をしなかつた者ばかりでなく、過失により記帳しなかつた者をも包含する法意であると解すべきである。
 三 同法第二九条、第一七条の規定は、憲法第三八条第一項に違反しない。

家事事件手続法125条 管理者の改任等

第125条 家庭裁判所は、いつでも、第三者が成年被後見人に与えた財産の管理に関する処分の審判事件において選任した管理者を改任することができる。
 
2 家庭裁判所は、第三者が成年被後見人に与えた財産の管理に関する処分の審判事件において選任した管理者(前項の規定により改任された管理者を含む。以下この条において「財産の管理者」という。)に対し、財産の状況の報告及び管理の計算を命ずることができる。
 
3 前項の報告及び計算に要する費用は、成年被後見人の財産の中から支弁する。
 
4 家庭裁判所は、財産の管理者に対し、その提供した担保の増減、変更又は免除を命ずることができる。
 
5 財産の管理者の不動産又は船舶の上に抵当権の設定を命ずる審判が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その設定の登記を嘱託しなければならない。設定した抵当権の変更又は消滅の登記についても、同様とする。
 
6 民法第六百四十四条第六百四十六条第六百四十七条及び第六百五十条の規定は、財産の管理者について準用する。
 
7 家庭裁判所は、成年被後見人が財産を管理することができるようになったとき、管理すべき財産がなくなったときその他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、成年被後見人、財産の管理者若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、財産の管理者の選任その他の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。


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家事事件手続法190条の2 相続財産の保存に関する処分の審判事件

第190条の2 相続財産の保存に関する処分の審判事件は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
 
2 第百二十五条第一項から第六項まで、第百四十六条の二及び第百四十七条の規定は、相続財産の保存に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、第百二十五条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。


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刑法39条 心神喪失及び心神耗弱

第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
 
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

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cf. 最決昭58・9・13(昭和58(あ)753  窃盗) 全文

判示事項
 一 心神喪失又は心神耗弱の判断の性質
 二 責任能力判断の前提となる生物学的要素及び心理学的要素についての判断権

裁判要旨
 一 刑法三九条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であつて、専ら裁判所に委ねられるべき問題である。
 二 刑法三九条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかの法律判断の前提となる生物学的、心理学的要素についての評価は、右法律判断との関係で究極的には裁判所に委ねられるべき問題である。

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cf. 最決昭59・7・3(昭和58(あ)1761  殺人、殺人未遂) 全文

判示事項
 精神分裂病者と責任能力

裁判要旨
 被告人が犯行当時精神分裂病に罹患していたからといつて、そのことだけで直ちに被告人が心神喪失の状態にあつたとされるものではなく、その責任能力の有無・程度は、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判定すべきである。

 
Un pas de plus ! もう一歩先へ
cf. 最判平21・12・8(平成20(あ)1718 殺人,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件) 全文

判示事項
 1 精神鑑定の意見の一部を採用した場合と責任能力の有無・程度の判断
 2 責任能力の有無・程度について原判決の判断手法に誤りがないとされた事例

裁判要旨
 1 裁判所は,特定の精神鑑定の意見の一部を採用した場合においても,責任能力の有無・程度について,当該意見の他の部分に拘束されることなく,被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して判定することができる。
 2 精神医学者の精神鑑定における意見のうち被告人が心神喪失の状態にあったとする部分を前提資料や推論過程に疑問があるとして採用せず,責任能力の有無・程度について,被告人の犯行当時の病状,犯行前後の言動や犯行の動機,従前の生活状態から推認される人格傾向等を総合考慮して,統合失調症による病的体験と犯行との関係,被告人の本来の人格傾向と犯行との関連性の程度等を検討し,被告人が心神耗弱の状態にあったと認定した原判決の判断手法に誤りはない。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:

いわゆる原因において自由な行為(原自行)を認めたものと解される

cf. 最決昭43・2・27(昭和42(あ)1814 恐喝、道路交通法違反) 全文

判示事項
 酒酔い運転につき刑法第三九条第二項の適用がないとされた事例

裁判要旨
 酒酔い運転の行為当時に飲酒酩酊により心神耗弱の状態にあつたとしても、飲酒の際酒酔い運転の意思が認められる場合には、刑法第三九条第二項を適用して刑の減軽をすべきではない。

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cf. 大阪高判昭56・9・30(昭和56(う)517  覚せい剤取締法違反被告事件) 全文

判示事項
 覚せい剤の使用及び所持につき刑法三九条の適用がないとされた事例

裁判要旨
 覚せい剤の使用及び所持について、犯行当時覚せい剤中毒等により少なくとも心神耗弱の状態にあつても、責任能力がある当時における覚せい剤の反復使用、継続所持の意思が実現されたものと認められる場合には、刑法三九条を適用すべきではない。

 
Un pas de plus ! もう一歩先へ
cf. 最大判昭26・1・17(昭和25(れ)548 殺人、賍物故買) 全文

判示事項
 一 酩酊すると暴行する習癖のある注意義務
 二 殺人の公訴事実中には過失致死の事実も含まれるか

裁判要旨
 一 本件被告人の如く、多量に飲酒するときは病的酩酊に陥り、因つて心神喪失状態において他人に犯罪の害悪を及ぼす危険ある素質を有する者は、居常右心神喪失の原因となる飲酒を抑止又は制限する等前示危険の発生を未然に防止するよう注意する義務あるものといわねばならない。しからば、たとえ原判決認定のように、本件殺人の所為は被告人の心身喪失時の所為であつたとしても、(イ)被告人にして既に前示のような己れの素質を自覚していたものであり且つ(ロ)本件事前の飲酒につき前示注意義務を怠つたがためであるとするならば、被告人は過失致死の罪責を免れ得ないものといわねばならない。
 二 殺人の公訴事実中には過失致死の事実をも包含するものと解するを至当とすべきである。