第211条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
行為者の行為によって結果惹起の決定的原因が作り出されることはなく、被害者又は第三者の行為によって結果の直接的・決定的原因が作り出された場合には、そうした介入行為がもたらされる蓋然性が必要となる(間接実現型)。
cf. 最決昭42・10・24(昭和42(あ)710 道路交通法違反、業務上過失致死) 全文判示事項
他人の行為の介入があつた場合に刑法上の因果関係が否定された事例
裁判要旨
自動車を運転していた甲が、自転車で通行中の乙と衝突し、これを自車の屋根の上にはね上げたまま走行中、これに気づいた同乗者丙が、乙の身体をさかさまに引きずり降ろし、舗装道路上に転落させた場合において、乙が右自動車との衝突および右道路免への転落によつて頭部等に傷害を負い、右頭部の打撲に基づく脳くも膜下出血等によつて死亡したときは、甲の前記過失行為と被害者の死との間に、刑法上の因果関係があるとはいえない。
判示事項
高速道路上に自車及び他人が運転する自動車を停止させた過失行為と自車が走り去った後に上記自動車に後続車が追突した交通事故により生じた死傷との間に因果関係があるとされた事例
裁判要旨
甲が,乙の運転態度に文句を言い謝罪させるため,夜明け前の暗い高速道路の第3通行帯上に自車及び乙が運転する自動車を停止させた過失行為は,自車が走り去ってから7,8分後まで乙がその場に乙車を停止させ続けたことなどの乙ら他人の行動等が介在して,乙車に後続車が追突する交通事故が発生した場合であっても,上記行動等が甲の上記過失行為及びこれと密接に関連してされた一連の暴行等に誘発されたものであったなど判示の事情の下においては,上記交通事故により生じた死傷との間に因果関係がある。
判示事項
夜間潜水の講習指導中受講生ができ死した事故につき指導補助者及び受講生の不適切な行動が介在した場合でも指導者の行為と受講生の死亡との間に因果関係があるとされた事例
裁判要旨
海中における夜間潜水の講習指導中、指導者が不用意に受講生らのそばから離れて同人らを見失い、受講生が圧縮空気タンク内の空気を使い果たしてでき死するに至った事故について、右受講生は潜水経験に乏しく技術が未熟であり、指導補助者もその経験が極めて浅かったことなどの本件の事実関係(判文参照)の下においては、指導補助者及び受講生の不適切な行動が介在したとしても、指導者の右行為と受講生と死亡との間には因果関係がある。