刑法60条 共同正犯

第60条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。


e-Gov 刑法

 

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cf. 最決昭56・12・21(昭和56(あ)1004 殺人、兇器準備結集、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反) 全文

判示事項
 現実の殺害行為を一定の事態の発生にかからせていた場合と殺人の故意の成立

裁判要旨
 謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であつたときは、殺人の故意の成立に欠けるところはない。

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cf. 最決昭54・4・13(昭和52(あ)2113 傷害致死、公務執行妨害、恐喝、暴力行為等処罰に関する法律違反、監禁、傷害、風俗営業等取締法違反) 全文

判示事項
 暴行・傷害を共謀した共犯者のうちの一人が殺人罪を犯した場合における他の共犯者の罪責

裁判要旨
 暴行・傷害を共謀した共犯者のうちの一人が殺人罪を犯した場合、殺意のなかつた他の共犯者については、傷害致死罪の共同正犯が成立する。


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結果的加重犯の共同正犯を認めている

cf. 最判昭22・11・5(昭和22(れ)3  強盗傷人) 全文
 
判示事項
 一 事實認定と刑訴應急措置法第一三條第二項
 二 共犯者の一人の加えた傷害と共犯者全員に對する強盜傷人罪の成立

裁判要旨
 一 所論は畢竟原判決の事實の認定を非難する趣意に歸するからこのような所論は刑訴應急措置法第一三條第二項の規定により、適法な上告の理由ということができない。
 二 およそ強盜の共犯者中の一人の施用した財物奪取の手段としての暴行の結果、被害者に傷害を生ぜしめたときは、その共犯者の全員につき強盜傷人罪は成立するのであつて、このことは強盜傷人罪が所謂結果犯たるの故に外ならない。


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cf. 最決平21・6・30(平成19(あ)1580 住居侵入,強盗致傷被告事件) 全文

判示事項
 共犯者が住居に侵入した後強盗に着手する前に現場から離脱した場合において共謀関係の解消が否定された事例

裁判要旨
 共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀した被告人が,共犯者の一部が住居に侵入した後強盗に着手する前に,見張り役の共犯者において住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく,待機していた現場から上記見張り役らと共に離脱したなどの本件事実関係の下では,当初の共謀関係が解消したとはいえない。


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cf. 最決平13・10・25(平成12(あ)1859 強盗被告事件) 全文

判示事項
 刑事未成年者に指示命令して強盗を実行させた者につき強盗の共同正犯が成立するとされた事例

裁判要旨
 A子が生活費欲しさから強盗を計画し,12歳10か月の長男Bに指示命令して強盗を実行させた場合においても,当時Bには是非弁別の能力があり,A子の指示命令はBの意思を抑圧するに足る程度のものではなく,Bは自らの意思によりその実行を決意した上,臨機応変に対処して強盗を完遂し,Bが奪ってきた金品をすべてA子が領得したなど判示の事実関係の下では,A子につき強盗の間接正犯又は教唆犯ではなく共同正犯が成立する。


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結果的加重犯の共同正犯とは、2人以上の者が共同実行の意思の下に基本となる犯罪の実行行為を共同したところ、その一部の者の行為によって重い結果が発生した場合に、共同行為者全員が重い結果について共同正犯の責任を負うことをいう。

cf. 最判昭26・3・27(昭和24(れ)2681 強盗殺人、強盗、窃盗、住居侵入) 全文

判示事項
 強盗の共犯のうちの一人が強盗の機会において為した殺人の行為につき他の者も責任を負う場合の一例

裁判要旨
 強盗共犯の一人が強盗に着手した後家人に騒がれて逃走し追跡されているうち、巡査に発見され追い付かれて逮捕されようとした際逮捕を免れるため同巡査に切りつけ死に至らしめたときは、その強盗殺人の行為につき他の共犯も責任を負うべきである。


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cf. 最判昭23・12・14(昭和23(れ)754 公務執行妨害) 全文

判示事項
 一 犯行犯の意義
 二 共同正犯と事前の打合せ

裁判要旨
 一 現行犯とは現に罪を行い又は現に罪を行い終つた際發覺したものをいうのであり、そして現に罪を行いというのは犯罪行爲實行中のことであり、現に罪を行い終つた際とは、犯罪行爲の實行行爲の終つた瞬間はもとより、その後多少の時間のへだたりがあつても、犯罪行爲の行はれた痕跡がまだ明瞭な状態にある場合を指すのであつて、必ずしも犯人が其場所に在ることを要しないものである。
 二 共同正犯たるには、行爲者双方の間に意思の聯絡のあることは必要であるが行爲者間において事前に打合せ等のあることは必ずしも必要ではない。

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共謀共同正犯が成立するためには、実行行為を行わない者が実行行為者に対して指揮命令をすることは必要ではない

cf. 最大判昭33・5・28(昭和29(あ)1056 傷害致死、暴行、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、窃盜)全文 添付文書

判示事項
 一 いわゆる共謀共同正犯の成立要件
 二 実行行為に関与しない共謀者の刑責と憲法第三一条
 三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」であるか
 四 共謀の判示方法
 五 憲法第三八条第二項の法意
 六 憲法第三八条第三項の法意
 七 被告人本人との関係における共犯者の犯罪事実に関する供述と、憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」
 八 数人間の順次の共謀と共謀共同正犯の成立

裁判要旨
 一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない
 二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うもので、かく解することは憲法第三一条に違反しない
 三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならず、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない
 四 共謀の判示は、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についてまで、いちいち具体的に判示することを要しない
 五 憲法第三八条第二項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白の証拠能力を否定したものである
 六 憲法第三八条第三項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定または制限したものではなく、かかる自白の証明力(証拠価値)に対する自由心証を制限し、被告人本人を処罰するには、さらにその自由の証明力を補充しまたは強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要することを規定したものである
 七 共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法三八条二項とごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白と同一視し、またはこれに準ずるものではない
 八 同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない

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cf. 最決平15・5・1(平成14(あ)164 銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件) 全文

判示事項
 暴力団組長である被告人が自己のボディガードらのけん銃等の所持につき直接指示を下さなくても共謀共同正犯の罪責を負うとされた事例

裁判要旨
 暴力団組長である被告人が,自己のボディガードらのけん銃等の所持につき,直接指示を下さなくても,これを確定的に認識しながら認容し,ボディガードらと行動を共にしていたことなど判示の事情の下においては,被告人は前記所持の共謀共同正犯の罪責を負う。
(補足意見がある。)