第95条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
判示事項
一 刑法九五条一項にいう職務の範囲
二 刑法九五条一項における職務の執行中であるか否かの判断に際しその性質上ある程度継続した一連の職務として把握するのが相当であるとされた事例
三 刑法九五条一項における職務の執行が終了したものではないとされた事例
四 公務執行妨害罪の主観的成立要件としての職務執行中であることの認識の程度
裁判要旨
一 刑法九五条一項にいう職務には、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれる。
二 刑法九五条一項における職務の執行中であるか否かの判断に際しては、日本電信電話公社の電報局長の、局の事務全般を掌理し部下職員を指揮監督する職務及び同電報局次長の、局長を助け局務を整理する職務は、その性質上、その内容及び執行の過程を個別的に分断して部分的にそれぞれの開始、終了を論ずるべきではなく、一体性ないし継続性を有するものとして把握すべきである。
三 本件電報局長の、電報料金の収納等に関する会計書類の点検、決裁の職務及び本件電報局次長の、電報配達業務等に関する上部機関への報告文書作成の職務の各執行が事実上一時的に中断したとしても、その状態が被告人の不法な目的をもつた行動によつて作出されたものである場合には、刑法九五条一項における職務の執行は終了したものではない。
四 公務執行妨害罪の主観的成立要件としての職務執行中であることの認識があるというためには、行為者において公務員が職務行為の執行に当つていることの認識があれば足り、具体的にいかなる内容の職務の執行中であるかまで認識することを要しない。
判示事項
一 県教職員組合役員の組合員に対する所為が正当行為といえない事例
二 刑法第九五条にいわゆる暴行の意義
裁判要旨
一 K小学校教諭でF県教職員組合の役員が、同組合の勤務成績評定の実施等に反対する斗争に関連し、同校教諭で右組合員である甲の組合活動に非協力的な態度に憤慨して、甲を難詰し、両者が押問答をしているうち、甲が教室に入り、児童に対し自習および清掃をするように指示していたところ、そのあとを追つて同教室に入り、甲に対し「まだ話は終つていない。」といつて迫り、「生徒が見ていますから、やめて下さい。」といつて制止する甲の右手首を右手でつかみ、無理に教室外に連れ出そうとして引つ張つたので、甲が椅子とともに倒れたのを、なおもその手首をつかんだまま廊下に連れ出し、さらにその手を引つ張つて同校資料室に連れ込むなどの暴行を加えた所為は、たとえ右組合の団結統制力の行使としてなされたものであつても、これを正当な行為であるとはいえない。
二 刑法第九五条にいわゆる暴行とは、公務員に対し、直接であると間接であるとを間わず不法な攻撃を加えることをいう。
