民法770条 裁判上の離婚

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
 一 配偶者に不貞な行為があったとき。
 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。


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被後見人に対する裁判上の離婚

成年被後見人が離婚について理解も意思表示もできない場合には、成年後見人を相手に離婚訴訟を提起することになります(人事訴訟法第14条第1項)。成年後見人は身分行為の代理をすることはできませんが、訴訟なら代理できます。

もし成年後見人が当該訴えに係る訴訟の相手方となるときは、成年後見人を監督する「成年後見監督人」を相手に訴訟を提起します(人事訴訟法第14条第2項)。

cf. 人事訴訟法14条 人事訴訟における訴訟能力等
 
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cf. 最大判昭62・9・2(昭和61(オ)260  離婚) 全文

判示事項
 一 長期間の別居と有責配偶者からの離婚請求

 二 有責配偶者からの離婚請求が長期間の別居等を理由として認容すべきであるとされた事例

裁判要旨
 一 有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできない。

 二 有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦が三六年間別居し、その間に未成熟子がいないときには、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。

(一につき補足意見、一、二につき意見がある。)

 
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cf. 最判平2・11・8(平成1(オ)1039 離婚等) 全文

判示事項
 有責配偶者からの離婚請求において別居期間が相当の長期間に及んだものとされた事例

裁判要旨
 有責配偶者である夫からされた離婚請求において、夫が別居後の妻子の生活費を負担し、離婚請求について誠意があると認められる財産関係の清算の提案をしているなど判示の事情のあるときは、約八年の別居期間であっても、他に格別の事情のない限り、両当事者の年齢及び同居期間との対比において別居期間が相当の長期間に及んだと解すべきである。

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cf. 最判平6・2・8(平成5(オ)950 離婚) 全文

判示事項
 未成熟子がいる有責配偶者からの離婚請求が認容された事例

裁判要旨
 有責配偶者である夫からされた離婚請求であっても、別居が一三年余に及び、夫婦間の未成熟の子は三歳の時から一貫して妻の監護の下で育てられて間もなく高校を卒業する年齢に達していること、夫が別居後も妻に送金をして子の養育に無関心ではなかったこと、夫の妻に対する離婚に伴う経済的給付も実現が期待できることなど判示の事実関係の下においては、右離婚請求は、認容されるべきである。