家事事件手続法200条 遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分

第200条 家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。次項及び第三項において同じ。)は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、財産の管理のため必要があるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てさせないで、遺産の分割の申立てについての審判が効力を生ずるまでの間、財産の管理者を選任し、又は事件の関係人に対し、財産の管理に関する事項を指示することができる。
 
2 家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者又は相手方の申立てにより、遺産の分割の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
 
3 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。
 
4 第百二十五条第一項から第六項までの規定及び民法第二十七条から第二十九条まで(同法第二十七条第二項を除く。)の規定は、第一項の財産の管理者について準用する。この場合において、第百二十五条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「遺産」と読み替えるものとする。


e-Gov 家事事件手続法

 

もう一歩先へ 3項:

預貯金債権の仮分割の仮処分のための要件

  1. 権利行使の必要性
  2. 他の共同相続人の利益を害しないこと
  3. 遺産分割の調停又は審判の本案が家庭裁判所に係属していること
     
    cf.遺産分割調停@裁判所
    cf. 遺産分割調停の申立書@裁判所

預貯金債権の仮分割の仮処分は、仮の地位を定める仮処分という法的性質を有するので、原則として、共同相続人全員に対して、陳述を聴取する等の手続きをすることになります。

cf. 家事事件手続法107条 陳述の聴取

2項の要件は、「急迫の危険を防止するため必要があるとき」を要件としていることから、相続開始後の資金需要に柔軟に対応することは困難であったため、3項では当該要件を必要としていません。

相続開始後の払戻し制度と対比すると、相続開始後の比較的大口の資金需要がある場合に活用されるものです。

cf. 民法909条の2 遺産の分割前における預貯金債権の行使