第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
cf.
改正前刑法252条 横領
判示事項
一 使途を定められて寄託された金銭と横領罪
二 旧刑訴法第四〇四条と憲法第三七条第一項
裁判要旨
一 使途を定められて寄託された金銭については特別の事情のないかぎり受託者は刑法第二五二条にいわゆる「他人ノ物」を占有するものと解すべきであつて、受託者がその金銭について擅に委託の本旨に違つた処分をしたときは横領罪を構成する。
二 旧刑訴法第四〇四条は、憲法第三七条第一項に違反しない。
判示事項
不動産の二重売買と横領罪
裁判要旨
不動産の所有権が売買によつて買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従つていわゆる二重売買においては横領罪が成立する。
判示事項
一 他に所有権移転後未だその旨の登記を経ざる不動産を、悪意にて代物弁済として所有権を取得する行為と横領罪共犯の成否
二 いわゆる事後処分として横領罪を構成しない一事例
裁判要旨
一 甲がその所有にかかる不動産を第三者に売却し所有権を移転したるも未だその旨の登記を了しない場合において、乙がその情を知りながら甲に対する債権の代物弁済として右不動産の所有権を取得しその旨の登記をしたとしても、乙は適法に所有権を取得したものであるから、甲の不動産横領罪の共犯とはならない。
二 甲がその所有にかかる不動産を第三者に売却し所有権を移転したるも未だその旨の登記を了しないことを奇貨とし、乙に対し右不動産につき抵当権を設定しその旨の登記をするときは横領罪が成立する。従つて、甲がその後更に乙に対し右不動産の所有権を移転してその旨の登記をした場合には前記抵当権設定登記をした時に横領罪が成立し右所有権移転契約後登記の直前に抵当権設定登記を抹消したとしても、更に横領罪を構成するものではない。
判示事項
一 売買農地の所有権移転の効力発生時期
二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条所定の「金銭の貸借の媒介を行う者」の意義
三 不動産の登記簿上の所有名義と刑法上の占有
四 上告受理申立の理由書記載事項を援用した上告趣意書の適否
裁判要旨
一 売買農地の所有権移転は知事の許可と同時に其の効力を発生するものと解すべきである。
二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条所定の「金銭の貸借の媒介を行う者」とは単に金銭の貸借の媒介を行う者と解すべきであつて、業として行うと否とを問わない。
三 不動産の所有権が売買により買主に移転しかつ該不動産が買主に引渡されたとしても、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主は刑法上その不動産を占有するものと解すべきである。
四 上告趣意書自体にその趣意内容を示さないで、単に上告受理申立の理由書記載事項につき裁判を求めると記載したものは、適法な上告趣意書といえない。
判示事項
自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた自動車を金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した所為が横領罪に該当するとされた事例
裁判要旨
なし
判示事項
賍物の牙保者がその売却代金を着服した場合と横領罪の成否。
裁判要旨
窃盗犯人から賍物の牙保を依頼されてその交付を受けた牙保者が、その売却代金をほしいままに着服した場合は、横領罪が成立する。
判示事項
他人所有の建物を同人のために預かり保管していた者が,金銭的利益を得ようとして,同建物の電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したことにつき,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立するとされた事例
裁判要旨
甲会社から乙及び丙に順次譲渡されたものの,所有権移転登記が未了のため甲会社が登記簿上の所有名義人であった建物を,甲会社の実質的代表者として丙のために預かり保管していた被告人が,甲会社が名義人であることを奇貨とし,乙及び丙から原状回復にしゃ口して解決金を得ようと企て,上記建物に係る電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了した場合には,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立する。
判示事項
一 贈賄のためその資金を預かつた者の領得行爲と横領罪
二 特殊の情状ある場合と刑の執行猶豫の要否
裁判要旨
一 不法原因の爲め給付をした者はその給付したものの返還を請求することができないことは、民法第七〇八條の規定するところであるが刑法第二五二條第一項の横領罪の目的物は單に犯人の占有する他人の物であることを要件としているのであつて必ずしも物の給付者において民法上その返還を請求し得べきものであることを要件としていないのである。
二 執行猶豫を言渡すや否やは事實審たる原審の自由裁量に屬することであつて論旨記載の如き情状(智識階級に屬し性質温厚、家計の困難、改悛の情顯著)のある場合には執行猶豫の言渡を爲すことを要するものであると解することはできない。
