民法505条 相殺の要件等

第505条 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
 
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。


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改正前民法505条 相殺の要件等

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cf. 最判昭40・4・2(請求異議) 全文

債務名義たる判決の基礎となる口頭弁論の終結前に相殺適状にあつたとしても、右弁論終結後になされた相殺の意思表示により債務が消滅した場合には、右債務の消滅は、請求異議の原因となりうる。


また、自働債権を犠牲にするものである以上、これをいつ行使するかは相殺権者の自由である。したがって、判決確定後において相殺の意思表示をしたとしても、判決の既判力に抵触しない。

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cf. 最判平10・4・30(貸金) 全文

 訴訟上の相殺の抗弁に対し訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは、許されない。

cf. 民事訴訟法114条2項 既判力の範囲
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cf. 最判平18・4・14(損害賠償等請求本訴,請負代金等請求反訴事件) 全文

本訴及び反訴が係属中に,反訴原告が,反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは,異なる意思表示をしない限り,反訴を,反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分を反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更するものとして,許される。


e.g. Yが本件訴えの反訴として乙債権に基づく金銭の支払を求める訴えを提起した場合において、Yが、Xの請求に対し、乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは、許される。

cf. 民事訴訟法142条 重複する訴えの提起の禁止
cf. 民事訴訟法146条 反訴
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cf. 最判平3・12・17(契約金等) 全文

別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として、相殺の抗弁を主張することは、許されない。


e.g. XのYに対する甲債権に基づく訴えとYのXに対する乙債権に基づく金銭の支払を求める訴えに係る訴訟とがそれぞれ係属している場合に、Yが、本件訴訟において乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許されない。

cf. 民事訴訟法142条 重複する訴えの提起の禁止