第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
もう一歩先へ
施行日
2019(令和元)年7月1日
施行日前に、夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与がされた場合には、本条4項の規定は適用しないこととされています。
cf. 改正相続法附則4条 夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与に関する経過措置 もう一歩先へ
- 相続法改正前は、特別受益に該当する贈与は、原則として、何年前に行われた贈与であっても、遺留分の算定の基礎となる財産に算入されました。
- 相続法改正で遺留分侵害の算定における特別受益は10年以内の生前贈与しか原則として特別受益として認められなくなりました。
cf. 民法1044条1項、3項 遺留分を算定するための財産の価額(贈与に関して) - 特別受益に含まれる生前贈与に「10年以内」の制限が設けられているのは、遺留分計算の場面のみ。
これに対して、相続分の計算については「10年以内」の期間制限が設けられていません。期間無制限で過去にさかのぼって、生前贈与が特別受益の対象となります。
もう一歩先へ 4項:
持戻し免除の意思表示があったと法律上推定される遺贈又は贈与の対象の財産は、居住用不動産に限定されます。
cf.
民法1028条3項 配偶者居住権
被相続人が、居住用不動産を特別受益として取り扱うことについて、別段の意思表示をしたときは、その意思に従うことになります。意思表示の形式については法律上、特段の定めはありません。
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合、贈与税の特例の制度があります。
cf. 相続税法21条の6 贈与税の配偶者控除 参考 相続に関するルールが大きく変わります@法務省