民法708条 不法原因給付

第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。


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cf. 民法90条 公序良俗

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cf. 最判昭46・10・28(昭和45(オ)10  建物所有権移転登記手続等請求) 全文

判示事項
 民法七〇八条にいう給付と既登記建物の贈与に基づく引渡

裁判要旨
 不法の原因により既登記建物を贈与した場合、その引渡をしただけでは、民法七〇八条にいう給付があつたとはいえない。

 
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cf. 最判昭28・1・22(昭和24(オ)179 約束手形金請求) 全文

判示事項
 一 不法原因給付の返還の特約の効力
 二 不法原因給付の返還の特約に基く返還義務の履行のため振り出された手形の請求と民法第七〇八条

裁判要旨
 一 不法原因給付の返還の特約は、有効である
 二 不法原因給付の返還の特約に基く返還義務の履行のため振り出された手形の請求には、民法七〇八条は適用がない。

 
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cf. 最大判昭45・10・21(昭和41(オ)436  建物明渡等請求) 全文

判示事項
 一、不法の原因により未登記建物を贈与した贈与した場合その引渡は民法七〇八条にいう給付にあたるか
 二、所有権に基づく返還請求と民法七〇八条
 三、建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合における右建物の所有権の帰すう
 四、建物の贈与が不法原因給付であつてその所有権が受贈者に帰属した場合における受贈者に対する登記手続請求の許否

裁判要旨
 一、不法の原因により未登記建物を贈与した場合、その引渡は、民法七〇八条にいう給付にあたる。
 二、建物の贈与に基づく引渡が不法原因給付にあたる場合に、贈与者は、目的物の所有権が自己にあることを理由として、右建物の返還を請求することはできない。
 三、建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合には、贈与者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として、右建物の所有権は、受贈者に帰属するに至ると解するのが相当である。
 四、未登記建物の贈与が不法原因給付であつてその所有権が受贈者に帰属した場合において、贈与者が右建物につき所有権保存登記を経由したときは、受贈者が贈与者に対し建物の所有権に基づいて右所有権保存登記の抹消登記手続を請求することは、不動産物権に関する法制の建前からいつて許されるものと解すべきである。

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民法七〇八条にいう不法の原因のための給付とは、その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるのみならず、更にそれが、その社会において要求せられる倫理、道徳を無視した醜悪なものであることを必要とするとしています。
 
cf. 最判昭37・3・8(昭和32(オ)651  売掛代金請求) 全文

判示事項
 石油製品配給規則違反の給付と不法原因給付の成否

裁判要旨
 石油製品配給規則第一条、第一一条、第一二条に違反し配給割当公文書と引換でなしにされた揮発油の譲渡といえども、必ずしも民法第七〇八条にいわゆる不法原因給付に当るとはいえない。

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cf. 最判昭29・8・31(昭和27(オ)13 貸金請求) 全文

判示事項
 消費貸借成立のいきさつに不法の点があつた場合における貸金返還請求と民法第九〇条および第七〇八条の適用の有無

裁判要旨
 消費貸借成立のいきさつにおいて、貸主の側に多少の不法があつたとしても、借主の側にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものに過ぎない場合には、民法第九〇条および第七〇八条は適用がなく、貸主は貸金の返還を請求することができるものと解するのを相当とする。

民法189条 善意の占有者による果実の取得等

第189条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
 
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。


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本条は、物に関する特則なので、物の占有が回復される場合に適用されます。物を返還できる場合は本条を適用し、物が滅失して返還できないような場合は民法703条で現存利益の範囲で返還義務を負います。

cf. 民法703条 不当利得の返還義務
 
もう一歩先へ 1項:
善意の占有者は自分の物だと思っているので、果実を費消するのが通常だからです。

悪意の占有者の場合は、すべての果実の返還義務があり、費消した果実がある場合は、その代価を償還しなければなりません。

cf. 民法190条 悪意の占有者による果実の返還等

民法704条 悪意の受益者の返還義務等

第704条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う


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cf. 民法190条 悪意の占有者による果実の返還等
 

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cf. 最判平21・11・9(平成21(受)247 不当利得金返還請求事件) 全文

判示事項
 民法704条後段の規定の趣旨

裁判要旨
 民法704条後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない。

会社法381条 監査役の権限

第381条 監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。
 
2 監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
 
3 監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
 
4 前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。


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一定の会社では監査役の権限を定款により会計監査に限定することができます。このような会社は監査役設置会社とはいいません。

cf. 会社法2条9号 定義

cf. 会社法389条 定款の定めによる監査範囲の限定

会社法施行規則105条 監査報告の作成

第105条 法第三百八十一条第一項の規定により法務省令で定める事項については、この条の定めるところによる。

2 監査役は、その職務を適切に遂行するため、次に掲げる者との意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努めなければならない。この場合において、取締役又は取締役会は、監査役の職務の執行のための必要な体制の整備に留意しなければならない。
一 当該株式会社の取締役、会計参与及び使用人
二 当該株式会社の子会社の取締役、会計参与、執行役、業務を執行する社員、法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者及び使用人
三 その他監査役が適切に職務を遂行するに当たり意思疎通を図るべき者
 
3 前項の規定は、監査役が公正不偏の態度及び独立の立場を保持することができなくなるおそれのある関係の創設及び維持を認めるものと解してはならない。 
 
4 監査役は、その職務の遂行に当たり、必要に応じ、当該株式会社の他の監査役、当該株式会社の親会社及び子会社の監査役その他これらに相当する者との意思疎通及び情報の交換を図るよう努めなければならない。


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民法703条 不当利得の返還義務

第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。


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cf. 民法189条 善意の占有者による果実の取得等

cf. 民法32条2項 失踪の宣告の取消し

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cf. 最判昭59・12・21(昭和58(オ)934  不当利得金返還) 全文

判示事項
 不当利得返還債務の弁済として給付をした者が民法七〇三条に基づいてその返還を請求する場合と「法律上ノ原因ナクシテ」についての主張・立証責任

裁判要旨
 不当利得返還債務の弁済として給付をした者が、民法七〇三条に基づいてその返還を請求する場合には、同条所定の「法律上ノ原因ナクシテ」についての主張・立証責任を負う。

 
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cf. 最判平3・11・19(昭和62(オ)888 不当利得返還) 全文

判示事項
 一 金銭の不当利得の利益が存しないことの主張・立証責任
 二 不当利得者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅と返還義務の範囲

裁判要旨
 一 金銭の交付によって生じた不当利得の利益が存しないことについては、不当利得返還請求権の消滅を主張する者が主張・立証すべきである。
 二 不当利得をした者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は、返還義務の範囲を減少させない。

 
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cf. 最判平7.9.19(平成4(オ)524  不当利得金) 全文

判示事項
 建物賃借人から請け負って修繕工事をした者が賃借人の無資力を理由に建物所有者に対し不当利得の返還を請求することができる場合

裁判要旨
 甲が建物賃借人乙との間の請負契約に基づき建物の修繕工事をしたところ、その後乙が無資力になったため、甲の乙に対する請負代金債権の全部又は一部が無価値である場合において、右建物の所有者丙が法律上の原因なくして右修繕工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、丙と乙との間の賃貸借契約を全体としてみて、丙が対価関係なしに右利益を受けたときに限られる。

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cf. 最判平12・4・7(平成9(オ)1876  建物収去土地明渡等本訴請求、土地所有権確認等反訴請求、土地持分移転登記手続等反訴請求控訴、同附帯控訴事件) 全文

判示事項
 一 不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否
 二 請求の一部についての予備的な請求原因となるべき相続取得の主張を原告がしていなくても裁判所は被相続人の死亡等の事実をしんしゃくすべきであるとされた事例

裁判要旨
 一 不動産の共有者は、当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができる。
 二 原告が、夫の父が土地を夫に贈与し夫から右土地を相続取得したと主張して、右土地を占有する被告らに対し地代相当損害金等を請求する訴訟において、裁判所は、当事者の主張に基づいて右父の死亡、夫がその相続人の一人であること等の事実を確定した以上、右死亡により夫が右土地の持分を相続取得したことを原告が主張しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらの事実をしんしゃくし、夫の相続による持分の取得及び原告の相続による当該持分の取得を理由に原告の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきである。

cf. 民法249条 共有物の使用
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cf. 最判昭63・7・1(昭和62(オ)1057  不当利得金返還請求事件) 全文

判示事項
 第三者所有の不動産に設定された抵当権が不存在であるにもかかわらず右抵当権の実行により債権者に対してされた弁済金の交付と不当利得の成否

裁判要旨
 債権者が第三者所有の不動産の上に設定を受けた抵当権が不存在である.にもかかわらず、右抵当権の実行により第三者が不動産の所有権を喪失したときは、第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた右債権者に対し不当利得返還請求権を有する。

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cf. 最判昭49・9・26(昭和45(オ)540  金員返還請求) 全文

判示事項
 一、金銭を騙取又は横領された者の損失と騙取又は横領した者より債務の弁済を受けた者の利得との間に不当利得における因果関係がある場合
 二、騙取又は横領した金銭により債務の弁済を受けた者の悪意又は重過失と不当利得における法律上の原因

裁判要旨
 一、甲が、乙から騙取又は横領した金銭を、自己の金銭と混同させ、両替し、銀行に預け入れ、又はその一部を他の目的のため費消したのちその費消した分を別途工面した金銭によつて補填する等してから、これをもつて自己の丙に対する債務の弁済にあてた場合でも、社会通念上乙の金銭で丙の利益をはかつたと認めるに足りる連結があるときは、乙の損失と丙の利得との間には、不当利得の成立に必要な因果関係があると解すべきである。
 二、甲が乙から騙取又は横領した金銭により自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合において、右弁済の受領につき丙に悪意又は重大な過失があるときは、丙の右金銭の取得は、乙に対する関係においては法律上の原因を欠き、不当利得となる。

 
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cf. 最判平3・3・22(平成2(オ)1820  不当利得) 全文

判示事項
 債権又は優先権を有しないのに配当を受けた債権者に対する抵当権者からの不当利得返還請求の可否

裁判要旨
 抵当権者は、債権又は優先権を有しないのに配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員の返還を請求することができる。

民法550条 書面によらない贈与の解除

第550条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。


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改正前民法550条 書面によらない贈与の撤回

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「撤回」を「解除」に改めたことに伴い、解除権に関する総則的な規定(民法540条、民法544条~民法548条)が書面によらない贈与について適用になるかが問題となります。

この点については、贈与の無償性などにかんがみ、書面によらない贈与の解除について適用されるのは、民法540条及び民法544条に限られるものと解されます。

cf. 民法540条 解除権の行使

cf. 民法544条 解除権の不可分性
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cf. 最判昭40・3・26(昭和39(オ)370  所有権移転登記抹消請求) 全文

判示事項
 不動産の贈与契約に基づく所有権移転登記と贈与の履行の終了。

裁判要旨
 不動産の贈与契約にもとづいて該不動産の所有権移転登記がなされたときは、その引渡の有無をとわず、民法第五五〇条にいう履行が終つたものと解すべきである。

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受贈者に対する書面でなく、贈与者と第三者との間で作成された調停調書であっても「書面」として認めています

cf. 最判昭53・11・30(昭和53(オ)831 土地所有権移転登記手続) 全文

判示事項
 民法五五〇条所定の書面にあたるとされた事例

裁判要旨
 甲が乙を相手方として申し立てた財産処分禁止請求調停事件に丙が利害関係人として参加して調停が成立し、調停調書に「乙は、その所有地のうち約四五坪(別紙図面記載の丙所有部分)を除いた部分を処分しようとするときには、甲と約一〇日前に相談のうえでする」旨の条項が記載されたが、右調停調書において丙所有部分として約四五坪の土地が除外されたのは、右調停に際し、乙から丙に対し右土地を贈与する合意が成立したためであるときは、右調停調書は、乙、丙間の贈与について作成された民法五五〇条所定の書面にあたる。