刑法252条 横領

第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
 
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。


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cf. 改正前刑法252条 横領

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cf. 最判昭26・5・25(昭和25(れ)1661 横領) 全文

判示事項
 一 使途を定められて寄託された金銭と横領罪
 二 旧刑訴法第四〇四条と憲法第三七条第一項

裁判要旨
 一 使途を定められて寄託された金銭については特別の事情のないかぎり受託者は刑法第二五二条にいわゆる「他人ノ物」を占有するものと解すべきであつて、受託者がその金銭について擅に委託の本旨に違つた処分をしたときは横領罪を構成する。
 二 旧刑訴法第四〇四条は、憲法第三七条第一項に違反しない。

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cf. 最判昭30・12・26(昭和30(あ)2713 横領) 全文

判示事項
 不動産の二重売買と横領罪

裁判要旨
 不動産の所有権が売買によつて買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従つていわゆる二重売買においては横領罪が成立する。

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cf. 最判昭31・6・26(昭和29(あ)1447 横領、たばこ専売法違反) 全文

判示事項
 一 他に所有権移転後未だその旨の登記を経ざる不動産を、悪意にて代物弁済として所有権を取得する行為と横領罪共犯の成否
 二 いわゆる事後処分として横領罪を構成しない一事例

裁判要旨
 一 甲がその所有にかかる不動産を第三者に売却し所有権を移転したるも未だその旨の登記を了しない場合において、乙がその情を知りながら甲に対する債権の代物弁済として右不動産の所有権を取得しその旨の登記をしたとしても、乙は適法に所有権を取得したものであるから、甲の不動産横領罪の共犯とはならない。
 二 甲がその所有にかかる不動産を第三者に売却し所有権を移転したるも未だその旨の登記を了しないことを奇貨とし、乙に対し右不動産につき抵当権を設定しその旨の登記をするときは横領罪が成立する。従つて、甲がその後更に乙に対し右不動産の所有権を移転してその旨の登記をした場合には前記抵当権設定登記をした時に横領罪が成立し右所有権移転契約後登記の直前に抵当権設定登記を抹消したとしても、更に横領罪を構成するものではない。

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cf. 最判昭34・3・13(昭和31(あ)2521 横領、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律違反) 全文

判示事項
 一 売買農地の所有権移転の効力発生時期
 二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条所定の「金銭の貸借の媒介を行う者」の意義
 三 不動産の登記簿上の所有名義と刑法上の占有
 四 上告受理申立の理由書記載事項を援用した上告趣意書の適否

裁判要旨
 一 売買農地の所有権移転は知事の許可と同時に其の効力を発生するものと解すべきである。
 二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条所定の「金銭の貸借の媒介を行う者」とは単に金銭の貸借の媒介を行う者と解すべきであつて、業として行うと否とを問わない。
 三 不動産の所有権が売買により買主に移転しかつ該不動産が買主に引渡されたとしても、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主は刑法上その不動産を占有するものと解すべきである。
 四 上告趣意書自体にその趣意内容を示さないで、単に上告受理申立の理由書記載事項につき裁判を求めると記載したものは、適法な上告趣意書といえない。

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cf. 最決昭55・7・15(昭和55(あ)119 横領) 全文

判示事項
 自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた自動車を金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した所為が横領罪に該当するとされた事例

裁判要旨
 なし

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cf. 最判昭36・10・10(昭和33(あ)319 賍物牙保、横領) 全文

判示事項
 賍物の牙保者がその売却代金を着服した場合と横領罪の成否。

裁判要旨
 窃盗犯人から賍物の牙保を依頼されてその交付を受けた牙保者が、その売却代金をほしいままに着服した場合は、横領罪が成立する。

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cf. 最決昭21・3・26(平成20(あ)2253 電磁的公正証書原本不実記録,同供用,横領被告事件) 全文

判示事項
 他人所有の建物を同人のために預かり保管していた者が,金銭的利益を得ようとして,同建物の電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したことにつき,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立するとされた事例

裁判要旨
 甲会社から乙及び丙に順次譲渡されたものの,所有権移転登記が未了のため甲会社が登記簿上の所有名義人であった建物を,甲会社の実質的代表者として丙のために預かり保管していた被告人が,甲会社が名義人であることを奇貨とし,乙及び丙から原状回復にしゃ口して解決金を得ようと企て,上記建物に係る電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了した場合には,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立する。

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cf. 最判昭23・6・5(昭和23(れ)89 横領) 全文

判示事項
 一 贈賄のためその資金を預かつた者の領得行爲と横領罪
 二 特殊の情状ある場合と刑の執行猶豫の要否

裁判要旨
 一 不法原因の爲め給付をした者はその給付したものの返還を請求することができないことは、民法第七〇八條の規定するところであるが刑法第二五二條第一項の横領罪の目的物は單に犯人の占有する他人の物であることを要件としているのであつて必ずしも物の給付者において民法上その返還を請求し得べきものであることを要件としていないのである。
 二 執行猶豫を言渡すや否やは事實審たる原審の自由裁量に屬することであつて論旨記載の如き情状(智識階級に屬し性質温厚、家計の困難、改悛の情顯著)のある場合には執行猶豫の言渡を爲すことを要するものであると解することはできない。

刑法253条 業務上横領

第253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。


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cf. 改正前刑法253条 業務上横領

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cf. 最判昭24・3・8(昭和23(れ)1412 業務上横領) 全文

判示事項
 一 横領罪の成立に必要な不法領得の意思の意義
 二 農業會が寄託を受けた供出米の保管の任務と農業會長の不法處分

裁判要旨
 一 横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき權限がないのに所有者でなければできないような處分をする意思をいうのであつて必ずしも占有者が自己の利益取得を意圖することを必要とするものではなく、又占有者において不法に處分したものを後日に補顛する意思が行爲當時にあつたからとて横領罪の成立を妨げるものではない
 二 農業會は各農家から寄託を受けた供出米については政府への賣渡手續を終つた後政府の指圖によつて出庫するまでの間は、これを保管する任務を有するのであるから農業會長がほしいままに他に之を處分するが如きは固より法の許さないところである。

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cf. 最大判昭15・4・23(平成13(あ)746 業務上横領被告事件) 全文

判示事項
 1 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了していた場合においてその後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了する行為と横領罪の成否
 2 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときの審理方法

裁判要旨
 1 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後,これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは,後行の所有権移転行為について横領罪の成立を肯定することができ,先行の抵当権設定行為が存在することは同罪の成立自体を妨げる事情にはならない。
 2 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後,これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において,後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときは,裁判所は,所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり,犯罪の成否を決するに当たり,所有権移転行為に先立って横領罪を構成する抵当権設定行為があったかどうかといった訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきではない。

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商法その他の法令に違反するとの一事から、直ちに行為者の不法領得の意思を認めることはできない

cf. 最決平13・11・5(平成8(あ)267 所得税法違反,業務上横領被告事件) 全文

判示事項
 業務上横領罪における不法領得の意思が肯定された事例

裁判要旨
 株式会社の取締役経理部長が会社の株式の買占めに対抗するための工作費用として会社の資金を第三者に交付した場合において,会社の不利益を回避する意図を有していたとしても,交付金額が高額であるなど交付行為が会社にとって重大な経済的負担を伴い,違法行為を目的とするものとされるおそれもあったのに,交付の相手方や工作の具体的内容等につき調査をしたり,その結果の報告を求めたりした形跡がうかがわれず,また自己の弱みを隠す意図等をも有していたなどの事情(判文参照)の下においては,交付の意図は専ら会社のためにするところにはなく,業務上横領罪における不法領得の意思があったと認められる。

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cf. 最決平13・11・5(平成8(あ)267 所得税法違反,業務上横領被告事件) 全文

判示事項
 業務上横領罪における不法領得の意思が肯定された事例

裁判要旨
 株式会社の取締役経理部長が会社の株式の買占めに対抗するための工作費用として会社の資金を第三者に交付した場合において,会社の不利益を回避する意図を有していたとしても,交付金額が高額であるなど交付行為が会社にとって重大な経済的負担を伴い,違法行為を目的とするものとされるおそれもあったのに,交付の相手方や工作の具体的内容等につき調査をしたり,その結果の報告を求めたりした形跡がうかがわれず,また自己の弱みを隠す意図等をも有していたなどの事情(判文参照)の下においては,交付の意図は専ら会社のためにするところにはなく,業務上横領罪における不法領得の意思があったと認められる。

刑法254条 遺失物等横領

第254条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。


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cf. 改正前刑法254条 遺失物等横領

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cf. 最決昭56・2・20(昭和54(あ)2285 遺失物横領、賍物故買) 全文

判示事項
 網生けすから逃げ出した鯉について遺失物横領罪が成立するとされた事例

裁判要旨
 養殖業者の網生けすから広大な湖沼に逃げ出した鯉であつても、他人が飼養していたものであることを知りながらほしいままに領得すれば(判文参照)、遺失物横領罪が成立する。

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cf. 東京高判昭28・6・12(昭和28(う)750 詐欺被告事件) 全文

判示事項
 無尽会社の掛金集金人の集金使込みが詐欺罪でなく業務上横領罪を構成するとした一事例

裁判要旨
 無尽会社の外務員として無尽契約の募集および掛金の集金等の業務に従事していた者が、たとえ事前にこれを会社に入金するつもりでなく自己の用途に費消する意思であつても集金先に対し、これを秘して集金先からそれぞれ無尽掛金を受け取りこれを擅に自己の用途に費消しまたはその目的のために着服したときは、業務上横領罪が成立しその集金行為が詐欺罪を構成するものではない。

刑法257条 親族等の間の犯罪に関する特例

第257条 配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。
 
2 前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。


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cf. 改正前刑法257条 親族等の間の犯罪に関する特例

Un pas de plus ! もう一歩先へ 1項:
cf. 最決昭38・11・8(昭和38(あ)1310 賍物運搬) 全文

判示事項
 刑法第二五七条第一項の法意。

裁判要旨
 刑法第二五七条第一項は、本犯と賍物に関する犯人との間に同条項所定の関係がある場合に、賍物に関する犯人の刑を免除する旨を規定したものであり、賍物に関する犯人相互の間に右所定の関係があつてもその刑を免除すべき事由とはならない。

刑法256条 盗品譲受け等

第256条 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の拘禁刑に処する。
 
2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の拘禁刑及び五十万円以下の罰金に処する。


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cf. 改正前刑法256条 盗品譲受け等

刑法258条 公用文書等毀棄

第258条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。


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cf. 改正前刑法258条 公用文書等毀棄

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cf. 最決平16・11・30(平成16(あ)761 有印私文書偽造,同行使,詐欺,公正証書原本不実記載,同行使被告事件) 全文

判示事項
 1 郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人の氏名を冒書する行為と有印私文書偽造罪の成否
 2 他人あての送達書類を廃棄するだけの意図で他人を装って受領する行為について詐欺罪における不法領得の意思が認められないとされた事例

裁判要旨
 1 郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は,同人名義の受領書を偽造したものとして,有印私文書偽造罪を構成する。
 2 支払督促の債務者を装い郵便配達員を欺いて支払督促正本を受領することにより,送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生じさせ,債務者から督促異議申立ての機会を奪ったまま確定させて,その財産を差し押さえようとしたが,支払督促正本はそのまま廃棄するだけで外に何らかの用途に利用,処分する意思がなかったという判示の事実関係の下では,支払督促正本に対する詐欺罪における不法領得の意思を認めることはできない。

刑法259条 私用文書等毀棄

第259条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の拘禁刑に処する。


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cf. 改正前刑法259条 私用文書等毀棄

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cf. 最決昭44・5・1(昭和43(あ)429 私文書毀棄) 全文

判示事項
 一 刑法二五九条の「権利、義務ニ関スル他人ノ文書」には小切手も含まれるか
 二 同条の罪が成立するためには文書を有形的に毀損することを要するか

裁判要旨
 一 刑法二五九条の「権利、義務ニ関スル他人ノ文書」には、有価証券である小切手も含まれる。
 二 同条にいわゆる文書を毀棄したというためには、必ずしもこれを有形的に毀損することを要せず、隠匿その他の方法によつて、その文書を利用することができない状態におくことをもつて足りる。

刑法260条 建造物等損壊及び同致死傷

第260条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の拘禁刑に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。


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cf. 改正前刑法260条 建造物等損壊及び同致死傷

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cf. 最決平18・1・17(平成16(あ)2154 建造物損壊被告事件) 全文

判示事項
 公園内の公衆便所の外壁にラッカースプレーでペンキを吹き付け「反戦」等と大書した行為が刑法260条前段にいう建造物の「損壊」に当たるとされた事例

裁判要旨
 公園内の公衆便所の白色外壁に,ラッカースプレーで赤色及び黒色のペンキを吹き付け,「反戦」,「戦争反対」及び「スペクタクル社会」と大書し,その建物の外観ないし美観を著しく汚損し,原状回復に相当の困難を生じさせた行為は,刑法260条前段にいう建造物の「損壊」に当たる。