第505条 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
債務名義たる判決の基礎となる口頭弁論の終結前に相殺適状にあつたとしても、右弁論終結後になされた相殺の意思表示により債務が消滅した場合には、右債務の消滅は、請求異議の原因となりうる。
また、自働債権を犠牲にするものである以上、これをいつ行使するかは相殺権者の自由である。したがって、判決確定後において相殺の意思表示をしたとしても、判決の既判力に抵触しない。
本訴及び反訴が係属中に,反訴原告が,反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは,異なる意思表示をしない限り,反訴を,反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分を反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更するものとして,許される。
e.g. Yが本件訴えの反訴として乙債権に基づく金銭の支払を求める訴えを提起した場合において、Yが、Xの請求に対し、乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは、許される。 cf. 民事訴訟法142条 重複する訴えの提起の禁止
cf. 民事訴訟法146条 反訴
別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として、相殺の抗弁を主張することは、許されない。
e.g. XのYに対する甲債権に基づく訴えとYのXに対する乙債権に基づく金銭の支払を求める訴えに係る訴訟とがそれぞれ係属している場合に、Yが、本件訴訟において乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許されない。 cf. 民事訴訟法142条 重複する訴えの提起の禁止
判示事項
1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというための要件
2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするために消滅時効が援用された自働債権がその消滅時効期間経過以前に受働債権と相殺適状にあったことの要否
裁判要旨
1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する。
2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには,消滅時効が援用された自働債権は,その消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要する。
判示事項
金融機関が記名式定期預金の預金者と誤認した者に対する貸付債権をもつてした預金債権との相殺につき民法四七八条が類推適用されるために必要な注意義務を尽くしたか否かの判断の基準時
裁判要旨
金融機関が、記名式定期預金につき真実の預金者甲と異なる乙を預金者と認定して乙に貸付をしたのち、貸付債権を自働債権とし預金債権を受働債権としてした相殺が民法四七八条の類推適用により甲に対して効力を生ずるためには、当該貸付時において、乙を預金者本人と認定するにつき金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしたと認められれば足りる。
判示事項
一 金銭債権の一部請求と相殺
二 金銭債権の一部を請求する訴訟において相殺のため主張された自働債権の存否の判断の既判力
裁判要旨
一 特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において相殺の抗弁が理由がある場合には、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、請求額が残存額の範囲内であるときは請求の全額を、残存額を超えるときは残存額の限度でこれを認容すべきである。
二 特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において相殺のため主張された自働債権の存否の判断は、右金銭債権の総額から一部請求の額を控除した残額部分に対応する範囲については既報力を生じない。
外側説
- 弁済の主張を債権全体に対する消滅原因と解し、済はまず非請求部分から充てられるとする見解
- 一部請求をした原告の通常の意思としては、被告から弁済の主張がされた場合でも、これを債権全体についての弁済に充て(結果的にはまず非請求部分から充てられることになる。)、その残部について請求するものであると解され、また、実際にも一部請求に相応する債権がいまだ存在する限り、請求を認めるのが相当であるから、外側説が妥当である。
- 外側説のほか、内側説(弁済の主張を請求部分に対する抗弁とする見解)、案分説(弁済の主張は請求部分と非請求部分とにそれぞれ金額の割合に応じて充てられるとする見解)がある。
