第216条 前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
刑法217条 遺棄
第217条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。
刑法218条 保護責任者遺棄等
第218条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
刑法218条にいう遺棄には単なる置去りをも包含する。
cf. 最判昭34・7・24(昭和31(あ)4547 業務上過失傷害、道路交通取締法違反、要保護者遺棄) 全文判示事項
自動車操縦者の被害者救護義務違反と要保護者遺棄罪の成否。
裁判要旨
自動車の操縦中過失に因り通行人に約三ケ月の入院加療を要する歩行不能の重傷を負わしめながら道路交通取締法、同法施行令に定める被害者の救護措置を講ずることなく、被害者を自動車に乗せて事故現場を離れ、折柄降雪中の薄暗い車道上まで運び、医者を呼んで来てやる旨申し欺いて被害者を自動車から下ろし、同人を同所に放置したまま自動車を操縦して同所を立ち去つたときは、道路交通取締法違反(被害者救護義務違反)罪のほか要保護者遺棄罪(刑法第二一八条)が成立する。
刑法219条 遺棄等致死傷
第219条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
結果発生を意欲していない場合であっても故意を認めています。また、合理的な疑いを超える程度に結果の発生が確実と評価し得なければ、因果関係は認められないとしています。
cf. 最決平1・12・15(平成1(あ)551 覚せい剤取締法違反、保護者遺棄致死) 全文判示事項
救急医療を要請しなかつた不作為と被害者の死の結果との間に因果関係が認められた事例
裁判要旨
被告人らによつて注射された覚せい剤により被害者の女性が錯乱状態に陥つた時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女の救命が合理的な疑いを超える程度に確実であつたと認められる本件事案の下では、このような措置をとらなかつた被告人の不作為と同女の死亡との間には因果関係がある。
判示事項
堕胎により出生させた未熟児を放置した医師につき保護者遺棄致死罪が成立するとされた事例
裁判要旨
妊婦の依頼を受け、妊娠第二六週に入つた胎児の堕胎を行つた産婦人科医師が、右堕胎により出生した未熟児に適切な医療を受けさせれば生育する可能性のあることを認識し、かつ、そのための措置をとることが迅速容易にできたにもかかわらず、同児を自己の医院内に放置して約五四時間後に死亡するに至らせたときは、業務上堕胎罪に併せて保護者遺棄致死罪が成立する。
刑法220条 逮捕及び監禁
第220条 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
逮捕罪と監禁罪の罪数関係については、逮捕に引き続き監禁が行われた事案において、包括一罪としている。
cf. 最判昭28・6・17(昭和24(れ)1622 監禁) 全文判示事項
一 人を逮捕し、引き続き監禁した場合の擬律
二 監禁罪が成立するために要する脅迫の程度
三 監禁の動機目的と監禁罪の成否
四 同時に同一場所に数人を監禁した行為と罪数
五 憲法ならびに労働組合法施行前の労働組合の団体交渉と刑法第三五条
六 権利を実行する行為が違法とならない要件
七 逮捕監禁の所為が単純一罪として起訴されているとき、監禁の事実のみを有罪とする場合の判示方 ―逮捕の点についても説示することを要するか―
八 いわゆる人民裁判による判決の履行のために監禁することは適法か
裁判要旨
一 人を不法に逮捕し引き続き監禁した場合には、刑法第二二〇条第一項の一罪が成立する。
二 脅迫による監禁罪が成立するためには、その脅迫は被害者をして一定の場所から立ち去ることを得しめない程度のものでなければならない。
三 監禁罪は、暴行によると脅迫によるとを問わず、他人を一定の場所の外に出ることができなくした場合に成立し、目的の如何を問わない。
四 同時に同一場所において別個の人を監禁したときは、一個の行為で被害者の数に応じた数個の監禁の罪名に触れる。
五 出勤手当坑内五円、坑外三円の支給を受けることが労働組合側から見れば一種の債権であり、かつ、憲法ならびに労働組合法(昭和二〇年法律第五一号)施行前において右組合がこれを要求のため団体交渉をすること自体が正当であるとしても、その手段として為された所為が社会通念上許容される限度を超えたものであるときは、その行為は刑法第三五条の正当の行為とはいえない。
六 他人に対し権利を有するものが、その権利を実行する行為は、それが権利の範囲内であつて、かつその方法が社会通念上一般に許容されるものと認められる程度を超えない限り違法とはならない。
七 逮捕監禁の所為ありとして起訴され若しくは公判に付された場合に、裁判所が単に監禁の事実だけを認め、逮捕の事実は認められないとしたときは、逮捕の点は単純一罪の一部に過ぎないから、認められた監禁の事実だけを判決に判示し、これについて処断すれば足り、逮捕の点は判決主文において無罪を言渡すべきではなく、その理由中においても、必ずしも罪として認めない理由を判示する必要はない。
八 日本国民は、法律に定めた裁判官以外の裁判を受けることのないことは、憲法に保障されている国民の権利である。本件、労働組合員等大衆を裁判官とする人民裁判において、B、Cが敗訴の判決を受けたのに、これに服しなかつたため退去を許されず、又その判決の履行を、迫られたもので、被告人等に不法監禁罪は成立しないという所論は、法治国の精神に反し、憲法を無視する所論であつて採るを得ない。
監禁罪と殺人罪の罪数関係について、併合罪としている。
cf. 最判昭63・1・29(昭和59(あ)1551 殺人、犯人蔵匿、逮捕監禁) 全文判示事項
一 審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たらないとされた事例
二 被告人らの自白のとおりに有罪とした原判決の事実認定に不合理な点があるとして破棄された事例
裁判要旨
一 甲、乙に対する起訴状の罪名及び罰条は殺人のみであつても、逮捕監禁の事実が殺人の実行行為の一部を組成するものとして公訴事実中に記載されていると認められるときは(判文参照)、たとえ右逮捕監禁の事実が殺人とは併合罪関係に立つものと解すべきであつたとしても、裁判所が甲につき殺人の実行行為の一部として右逮捕監禁の事実を認定し、乙につき逮捕監禁罪のみの成立を認めたことが、刑訴法三七八条三号にいう審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たるとはいえない。
二 被告人らの自白にはその重要部分に信用し難い点があるのに(判文参照)、右自白のとおりに被告人らを有罪と認めた原判決は、刑訴法四一一条三号により破棄を免れない。
監禁の方法には、偽計によって被害者の錯誤を利用する場合をも含む。
cf. 最判昭33・3・19(昭和32(あ)2587 職業安定法違反、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令違反) 全文判示事項
偽計による監禁罪の成立
裁判要旨
刑法第二三〇条第一項にいう「監禁」は、暴行または脅迫によつてなされる場合だけではなく、偽計によつて被害者の錯誤を利用してなされる場合をも含むものと解すべきである。
判示事項
不法監禁罪が成立する事例。
裁判要旨
婦女を強いて姦淫しようと企て、自己の運転する第二種原動機付自転車荷台に乗車せしめ、一〇〇〇メートル余り疾走した場合は、不法監禁罪が成立する。
刑法221条 逮捕等致死傷
第221条 前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
いわゆる危険の現実化説です。その理由としては、トランク内という逃げ場のない場所に監禁し路上に停車させる行為には追突死の危険が含まれており、その危険が現実化したにすぎないからであるというものです。
cf. 最決平18・3・27(平成17(あ)2091 暴行,逮捕監禁致死被告事件) 全文判示事項
道路上で停車中の普通乗用自動車後部のトランク内に被害者を監禁した行為と同車に後方から走行してきた自動車が追突して生じた被害者の死亡との間に因果関係があるとされた事例
裁判要旨
道路上で停車中の普通乗用自動車後部のトランク内に被害者を監禁した行為と,同車に後方から走行してきた自動車が追突して生じた被害者の死亡との間には,同人の死亡原因が直接的には追突事故を起こした第三者の甚だしい過失行為にあるとしても,因果関係がある。
判示事項
不法監禁罪において途中からこれに加担した者は、加担前の監禁をも含めてその一全部について資任を有するか
裁判要旨
他人が不法監禁されているとき、途中からその加害者の犯行を認識しながらこれと犯意を共通して右監禁状態を利用しみずからもその監禁を続けた場合は、いわゆる承継的共同正犯として、加担前の監禁をも含めて全部について責任がある。
刑法224条 未成年者略取及び誘拐
第224条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
親権者は、未成年者誘拐罪の主体となる。
cf. 最決平17・12・6(平成16(あ)2199 未成年者略取被告事件) 全文判示事項
母の監護下にある2歳の子を別居中の共同親権者である父が有形力を用いて連れ去った略取行為につき違法性が阻却されないとされた事例
裁判要旨
母の監護下にある2歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は, 別居中の共同親権者である父が行ったとしても,監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず,行為態様が粗暴で強引なものであるなど判示の事情の下では,違法性が阻却されるものではない。(補足意見及び反対意見がある。)
改正前刑法225条 営利目的等略取及び誘拐
第225条 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
改正前刑法225条の2 身の代金目的略取等
第225条の2 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。
判示事項
みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が被拐取者を監禁しみのしろ金を要求した場合の罪数関係
裁判要旨
みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が、更に被拐取者を監禁し、その間にみのしろ金を要求した場合には、みのしろ金目的拐取罪とみのしろ金要求罪とは牽連犯の関係に、以上の各罪と監禁罪とは併合罪の関係にある。
判示事項
営利略取罪とみのしろ金要求罪の罪数関係
裁判要旨
営利の目的で人を略取した者がみのしろ金要求罪を犯した場合には、右両罪は、併合罪の関係にある。
判示事項
一 刑法第二二五条の二にいう「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」の意義
二 刑法第二二五条の二にいう「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」に当たるとされた事例
裁判要旨
一 刑法二二五条の二にいう「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」には、単なる同情から被拐取者の安否を気づかうにすぎないとみられる第三者は含まれないが、近親のほか、被拐取者の安否を親身になつて憂慮するのが社会通念上当然とみられる特別な関係にある者も含まれる。
二 A銀行の代表取締役社長が拐取された場合における同銀行幹部らは、刑法二二五条の二にいう「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」に当たる。
改正前刑法226条 所在国外移送目的略取及び誘拐
第226条 所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。
