民法839条 未成年後見人の指定

第839条 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
 
2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。


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遺言で未成年後見人を指定した者が死亡した場合、そのときに遺言の効力は生じます。遺言で指定された未成年後見人はその就職の日から10日以内に遺言書とともに市区町村長に届出しなければなりません。

cf. 戸籍法81条 遺言による未成年後見人の届出

民法840条 未成年後見人の選任

第840条 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
 
2 未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で、更に未成年後見人を選任することができる。
 
3 未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。


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民法841条 父母による未成年後見人の選任の請求

第841条 父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は父若しくは母について親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。


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民法1029条 審判による配偶者居住権の取得

第1029条 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
 
 一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
 
 二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)


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施行日 配偶者居住権の制度は2020(令和2)年4月1日以後に開始した相続について適用されます。

cf. 改正相続法附則10条 配偶者の居住の権利に関する経過措置

改正前民法1029条 遺留分の算定

民法1028条 配偶者居住権

第1028条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
 一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
 二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
 
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
 
3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。


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施行日 配偶者居住権の制度は2020(令和2)年4月1日以後に開始した相続について適用されます。

cf. 改正相続法附則10条 配偶者の居住の権利に関する経過措置
もう一歩先へ 1項:

配偶者居住権の成立要件は

  1. 配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していたこと。
  2. (遺産分割により配偶者居住権を取得するものとされたこと。) ∨ (配偶者居住権が遺贈又は死因贈与の目的とされたこと。)
  3. 配偶者には内縁の者は含まれません。
  4. 居住建物は被相続人の財産に属した建物でなければならないので、借家には配偶者居住権は成立しません。
  5. 被相続人が居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合は、配偶者居住権は成立しません。

 
「遺産の分割」には遺産分割の審判も含まれます。

cf. 民法1029条 審判による配偶者居住権の取得

特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)により、配偶者に配偶者居住権を取得させることはできません。遺贈によることを要します。
これを認めると、配偶者が配偶者居住権の取得を希望しない場合に、配偶者居住権の取得のみを拒絶することはできず、相続放棄をするしかないことになるからです。

本条1項には、死因贈与についての規定はありませんが、死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されるため、死因贈与によることも認められるとされます。
 
cf. 民法554条 死因贈与

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配偶者居住権の消滅原因

 
もう一歩先へ 3項:
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、配偶者居住権が遺贈された場合も、その特別受益について、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。

cf. 民法903条4項 特別受益者の相続分
cf. 刑法262条 自己の物の損壊等

民法554条 死因贈与

第554条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。


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cf. 最判昭57・4・30(遺言無効確認) 全文

判示事項
 負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合と民法一〇二二条、一〇二三条の規定の準用の有無

裁判要旨
 負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、右契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし右契約の全部又は一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、民法一〇二二条、一〇二三条の各規定は準用されない。

cf. 民法1022条 遺言の撤回
cf. 民法1023条 前の遺言と後の遺言との抵触等
 
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cf. 最判昭32・5・21(昭和30(オ)392  所有権移転登記手続請求) 全文

判示事項
 死因贈与の方式と遺贈に関する規定準用の有無

裁判要旨
 死因贈与の方式については、遺贈に関する規定の準用はない。

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cf. 最判昭47.5.25(昭和46(オ)1166 贈与契約不存在確認請求) 全文

判示事項
 死因贈与の取消と民法一〇二二条

裁判要旨
 死因贈与の取消については、民法一〇二二条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきである。

cf. 民法1022条 遺言の撤回

民法1049条 遺留分の放棄

第1049条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
 
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。


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もう一歩先へ 1項:
相続の放棄は、その旨を家庭裁判所に申述すれば足りますが、遺留分の放棄をする場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。

cf. 民法938条 相続の放棄の方式
もう一歩先へ 2項:
相続分の放棄をした場合は、他の相続人の相続分は増加しますが、遺留分の放棄をした場合は、他の相続人の遺留分は増加しません。
もう一歩先へ
遺留分の放棄があった場合、代襲相続人の遺留分もなくなります。

民法1047条 受遺者又は受贈者の負担額

第1047条 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
 一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
 二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
 三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
 
2 第九百四条第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
 
3 前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
 
4 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
 
5 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。


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施行日 2019(令和元)年7月1日

cf. 改正相続法附則1条 施行期日
cf. 改正相続法の施行期日

2019(令和元)年7月1日以降に開始した相続に適用されます。

もう一歩先へ 1項:

減殺の順序(負担割合)

  1. 遺贈 -> 贈与の順序
  2. 同時の場合はその価額の割合
  3. 後の贈与から(死亡に近いほうから)順にする
cf. 改正前民法1033条 贈与と遺贈の減殺の順序
cf. 改正前民法1034条 遺贈の減殺の割合
cf. 改正前民法1035条 贈与の減殺の順序
もう一歩先へ 5項:
遺留分侵害額請求権は、具体的な金額を示して請求をした場合に、発生した金銭債務については、期限の定めのない債務となり、履行を請求した時点から履行遅滞に陥ることになります。

cf. 民法1046条 遺留分侵害額の請求
cf. 民法412条3項 履行期と履行遅滞

しかしながら、裁判所が期限を許与したときには、遡及的にその弁済期が変更されたことになります。

よって、裁判所が2021年7月23日までと期限を許与したときには、遅延損害金はその翌日の7月24日午前零時から発生します。