民法191条 占有者による損害賠償

第191条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。


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もう一歩先へ
  • 悪意の占有者は全部の賠償
  • 善意の占有者は、自分の物と思っているから、ぞんざいに使用するのも仕方がないので、現に利益を受けている限度において賠償
  • しかし、所有の意思のない善意の占有者は、自分の物でないと知っているので全部の賠償

民法200条 占有回収の訴え

第200条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
 
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。


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cf. 民法201条 占有の訴えの提起期間

もう一歩先へ 1項:
占有を奪われたときだけなので、窃盗や強盗などのときは使えますが、詐欺、恐喝、横領、遺失等のときは使えません。
もう一歩先へ 2項ただし書き:

悪意には、善意・有過失を含むか

悪意者の占有は不穏な占有といえるため平穏な占有に戻すために占有回収の訴えを提起できますが、善意・有過失の者の占有は平穏な占有といえるため提起できません。条文通りです。

改正前民法424条 詐害行為取消権

第424条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
 
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

 
cf. 民法424条 詐害行為取消請求
 

民法424条 詐害行為取消請求

第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない
 
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
 
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
 
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。


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改正前民法424条 詐害行為取消権

 
cf. 民法123条 取消し及び追認の方法

Un pas de plus ! もう一歩先へ 1項:
cf. 最判昭39・6・12(約束手形金請求) 全文

判示事項
 詐害行為取消権の行使の方法。

裁判要旨
 詐害行為取消権の行使は、訴の方法によるべきであつて、抗弁の方法によることは許されない。

cf. 破産法173条1項 否認権の行使
Un pas de plus ! もう一歩先へ

cf.最判昭46・11・19(売掛代金請求)
 全文

判示事項
 金銭の支払を求める詐害行為取消訴訟手続において被告は自己の債権額に対応する按分額の支払を拒むことができるか

裁判要旨
 債権者が、受益者を被告として、債務者の受益者に対する弁済行為を取り消し、かつ、右取消にかかる弁済額の支払を求める詐害行為取消訴訟手続において、被告は、右弁済額を原告の債権額と自己の債権額とで按分し、後者に対応する按分額につき、支払を拒むことはできない。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:

詐害行為となるのは財産的行為に限られ、相続放棄のような身分行為は詐害行為取消権の対象とはなりません。

cf. 最判昭49.9.20(詐害行為取消、株金等支払請求) 全文

判示事項
 相続の放棄と詐害行為取消権

裁判要旨
 相続の放棄は、民法四二四条の詐害行為取消権行使の対象とならない。

民法424条の2 相当の対価を得てした財産の処分行為の特則

第424条の2 債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
 
 一 その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
 
 二 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
 
 三 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。


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