民事再生法26条 他の手続の中止命令等

第26条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第二号に掲げる手続又は第五号に掲げる処分については、その手続の申立人である再生債権者又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。
 一 再生債務者についての破産手続又は特別清算手続
 二 再生債権に基づく強制執行、仮差押え若しくは仮処分又は再生債権を被担保債権とする留置権(商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(次条、第二十九条及び第三十九条において「再生債権に基づく強制執行等」という。)の手続で、再生債務者の財産に対して既にされているもの
 三 再生債務者の財産関係の訴訟手続
 四 再生債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
 五 再生債権である共助対象外国租税(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和四十四年法律第四十六号。以下「租税条約等実施特例法」という。)第十一条第一項に規定する共助対象外国租税をいう。以下同じ。)の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(以下「再生債権に基づく外国租税滞納処分」という。)で、再生債務者の財産に対して既にされているもの
 
2 裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
 
3 裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第一項第二号の規定により中止した手続又は同項第五号の規定により中止した処分の取消しを命ずることができる。
 
4 第一項の規定による中止の命令、第二項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
 
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
 
6 第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。


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民事再生法27条 再生債権に基づく強制執行等の包括的禁止命令

第27条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、前条第一項の規定による中止の命令によっては再生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、全ての再生債権者に対し、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等及び再生債権に基づく外国租税滞納処分の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、再生債務者の主要な財産に関し第三十条第一項の規定による保全処分をした場合又は第五十四条第一項の規定若しくは第七十九条第一項の規定による処分をした場合に限る。
 
2 前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)が発せられた場合には、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続及び再生債権に基づく外国租税滞納処分は、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、中止する。
 
3 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。
 
4 裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第二項の規定により中止した再生債権に基づく強制執行等の手続又は再生債権に基づく外国租税滞納処分の取消しを命ずることができる。
 
5 包括的禁止命令、第三項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
 
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
 
7 包括的禁止命令が発せられたときは、再生債権については、当該命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。


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民事再生法28条 包括的禁止命令に関する公告及び送達等

第28条 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その旨を公告し、その裁判書を再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。次項において同じ。)及び申立人に送達し、かつ、その決定の主文を知れている再生債権者及び再生債務者(保全管理人が選任されている場合に限る。)に通知しなければならない。
 
2 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、再生債務者に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。
 
3 前条第四項の規定による取消しの命令及び同条第五項の即時抗告についての裁判(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。


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民事再生法29条 包括的禁止命令の解除

第29条 裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、再生債権に基づく強制執行等の申立人である再生債権者又は再生債権に基づく外国租税滞納処分を行う者(以下この項において「再生債権者等」という。)に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該再生債権者等の申立てにより、当該再生債権者等に対しては包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができる。この場合において、当該再生債権者等は、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等又は再生債権に基づく外国租税滞納処分をすることができ、包括的禁止命令が発せられる前に当該再生債権者等がした再生債権に基づく強制執行等の手続又は再生債権に基づく外国租税滞納処分は、続行する。
 
2 前項の規定による解除の決定を受けた者に対する第二十七条第七項の規定の適用については、同項中「当該命令が効力を失った日」とあるのは、「第二十九条第一項の規定による解除の決定があった日」とする。
 
3 第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
 
4 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
 
5 第一項の申立てについての裁判及び第三項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。


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民事再生法30条 仮差押え、仮処分その他の保全処分

第30条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生債務者の業務及び財産に関し、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
 
2 裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
 
3 第一項の規定による保全処分及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
 
4 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
 
5 第三項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
 
6 裁判所が第一項の規定により再生債務者が再生債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、再生債権者は、再生手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。ただし、再生債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限る。


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民事再生法31条 担保権の実行手続の中止命令

第31条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、第五十三条第一項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行手続の中止を命ずることができる。ただし、その担保権によって担保される債権が共益債権又は一般優先債権であるときは、この限りでない。
 
2 裁判所は、前項の規定による中止の命令を発する場合には、競売申立人の意見を聴かなければならない。
 
3 裁判所は、第一項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
 
4 第一項の規定による中止の命令及び前項の規定による変更の決定に対しては、競売申立人に限り、即時抗告をすることができる。
 
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
 
6 第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。


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民事再生法79条 保全管理命令

第79条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債務者(法人である場合に限る。以下この節において同じ。)の財産の管理又は処分が失当であるとき、その他再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生債務者の業務及び財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。この場合においては、第六十四条第三項の規定を準用する。
 
2 裁判所は、前項の処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならない。
 
3 前二項の規定は、再生手続開始の申立てを棄却する決定に対して第三十六条第一項の即時抗告があった場合について準用する。
 
4 裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
 
5 保全管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
 
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。


民事再生法85条 再生債権の弁済の禁止

第85条 再生債権については、再生手続開始後は、この法律に特別の定めがある場合を除き、再生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。
 
2 再生債務者を主要な取引先とする中小企業者が、その有する再生債権の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができる。
 
3 裁判所は、前項の規定による許可をする場合には、再生債務者と同項の中小企業者との取引の状況、再生債務者の資産状態、利害関係人の利害その他一切の事情を考慮しなければならない。
 
4 再生債務者等は、再生債権者から第二項の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならない。この場合において、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければならない。
 
5 少額の再生債権を早期に弁済することにより再生手続を円滑に進行することができるとき、又は少額の再生債権を早期に弁済しなければ再生債務者の事業の継続に著しい支障を来すときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。
 
6 第二項から前項までの規定は、約定劣後再生債権である再生債権については、適用しない。


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民事再生法53条 別除権

第53条 再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権をいう。第三項において同じ。)を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。
 
2 別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。
 
3 担保権の目的である財産が再生債務者等による任意売却その他の事由により再生債務者財産に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。


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もう一歩先へ
cf. 最判平22・6・4(自動車引渡請求事件) 全文

判示事項
 自動車の売買代金の立替払をした者が,販売会社に留保されていた自動車の所有権の移転を受けたが,購入者に係る再生手続が開始した時点で上記自動車につき所有者としての登録を受けていないときに,留保した所有権を別除権として行使することの可否

裁判要旨
 自動車の購入者から委託されて販売会社に売買代金の立替払をした者が,購入者及び販売会社との間で,販売会社に留保されている自動車の所有権につき,これが,上記立替払により自己に移転し,購入者が立替金及び手数料の支払債務を完済するまで留保される旨の合意をしていた場合に,購入者に係る再生手続が開始した時点で上記自動車につき上記立替払をした者を所有者とする登録がされていない限り,販売会社を所有者とする登録がされていても,上記立替払をした者が上記の合意に基づき留保した所有権を別除権として行使することは許されない。

cf. 破産法65条 別除権