民法1032条 配偶者による使用及び収益

第1032条 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
 
2 配偶者居住権は、譲渡することができない。
 
3 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
 
4 配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。


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もう一歩先へ
施行日 配偶者居住権の制度は2020(令和2)年4月1日以後に開始した相続について適用されます。

cf. 改正相続法附則10条 配偶者の居住の権利に関する経過措置
もう一歩先へ 1項ただし書き:
居住の用に供していた部分を営業の用に供するなどの、逆の用法変更は認められず、この場合は用法遵守違反となります。
もう一歩先へ 2項:
配偶者居住権は帰属上の一身専属権なので、その帰属主体は配偶者に限定され、これを譲渡することはできません。
 
配偶者が死亡した場合は、配偶者居住権は消滅(民法1036条 -> 民法597条3項)して、相続の対象にはなりません。

cf. 民法1036条 使用貸借及び賃貸借の規定の準用
cf. 民法597条3項 期間満了等による使用貸借の終了
 
もう一歩先へ 3項:
配偶者の家族や家事使用人は占有補助者にすぎす独立の占有を有しないと考えられているため、これら者を同居させても第三者に居住建物を使用収益させたことにはなりません。
もう一歩先へ 4項:
配偶者居住権の譲渡禁止(本条2項)に違反しただけでは消滅請求はできません。第三者に使用収益させて初めて配偶者居住権の消滅請求ができます。

cf. 民法612条 賃借権の譲渡及び転貸の制限

配偶者短期居住権の消滅請求(民法1038条3項)とは異なり、配偶者に対する是正の催告を必要としています。

cf. 民法1038条3項 配偶者による使用