民法719条 共同不法行為者の責任

第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
 
2 行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。


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cf. 最判平13・3・13(平成10(受)168 損害賠償請求事件) 全文

判示事項
 1 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において各不法行為者が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害額の一部に限定することの可否
 2 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合の各不法行為者と被害者との間の過失相殺の方法

裁判要旨
 1 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり,結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し,責任を負うべき損害額を限定することはできない。
 2 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,過失相殺は,各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり,他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしんしゃくしてすることは許されない。

 
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cf. 最判平15.7.11(平成14(オ)1689  損害賠償等請求事件) 全文

判示事項
 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故においていわゆる絶対的過失割合を認定することができる場合における過失相殺の方法と加害者らの賠償責任

裁判要旨
 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。

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719条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であるとしています

cf. 最判昭57・3・4(昭和56(オ)173  不当利益返還) 全文

判示事項
 一 共謀による共同不法行為と民法四三四条の適用の有無
 二 継続性のない事務処理を目的とする委任契約の債務不履行による解除と民法六五二条の適用

裁判要旨
 一 共同不法行為が行為者の共謀による場合であつても、民法四三四条の規定は適用されない。
 二 民法六五二条の規定は、継続性のない事務処理を目的とする委任契約を委任者の債務不履行を理由にして解除する場合にも適用される。

cf. 改正前民法434条 連帯債務者の一人に対する履行の請求
cf. 民法652条 委任の解除の効力
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改正前民法下での判例は、共同不法行為に基づく不真正連帯債務においては、自己の負担部分を超える出捐をして初めて他の連帯債務者に対して求償することができるとしています。

cf. 最判昭63・7・1(昭和60(オ)1145  損害賠償請求本訴、同反訴事件) 全文

判示事項
 被用者と第三者との共同不法行為による損害を賠償した第三者からの使用者に対する求償権の成否

裁判要旨
 被用者と第三者との共同不法行為により他人に損害を加えた場合において、第三者が自己と被用者との過失割合に従つて定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、第三者は、被用者の負担部分について使用者に対し求償することができる。

cf. 民法442条 連帯債務者間の求償権
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cf. 最判平3・10・25(昭和63(オ)1383  求償金) 全文

判示事項
 一 共同不法行為の加害者の各使用者間における求償権の成立する範囲
 二 加害者の複数の使用者間における各使用者の負担部分
 三 加害者の複数の使用者間における求償権の成立する範囲

裁判要旨
 一 共同不法行為の加害者の各使用者が使用者責任を負う場合において、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、他方の加害者の使用者に対し、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分の限度で、求償することができる。
 二 加害者の複数の使用者が使用者責任を負う場合において、各使用者の負担部分は、加害者の加害行為の態様及びこれと各使用者の事業の執行との関連性の程度各使用者の指揮監督の強弱などを考慮して定められる責任の割合に従って定めるべきである。
 三 加害者の複数の使用者が使用者責任を負う場合において、使用者の一方は、自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、使用者の他方に対し、その負担部分の限度で、求償することができる。