壱弐
初瀬 に詣 づる毎に宿りける人の家に、久しく宿らで、程へて後にいたれりければ、かの家の主人 かく定かになむ宿りはあるといひ出だして侍りければ、そこに立てるける梅の花を折りてよめる
つらゆき
人はいさ心も知らず故里は
花ぞ昔の香ににほひける
<<古今和歌集 巻第一 春歌上 0042>>
人の方は、如何であろうか、心が知られない。しかし故里の方は変らないもので、第一に花が、このように昔通りに香ににおっている事であるよ。
<<窪田空穂. 古今和歌集(やまとうたeブックス)>>