民法185条 占有の性質の変更

第185条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。


e-Gov 民法

 

もう一歩先へ

他主占有⇒自主占有に転換する要件

  • 所有の意思があることの表示
  • 新権原による占有の開始

例えば、図書館から借りている本について占有の性質を変えるためには、これからは自分のものとすると図書館に電話したり、その本を買ったりする必要があります。

図書館から借りている本は自主占有ではないので、いつまでも保有していても時効取得することはありません。

cf. 民法162条 所有権の取得時効
もう一歩先へ
相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始して、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも、相続人は新権原により所有の意思をもって占有を始めたものといえます。

破産法170条 転得者に対する否認権

第170条 次の各号に掲げる場合において、否認しようとする行為の相手方に対して否認の原因があるときは、否認権は、当該各号に規定する転得者に対しても、行使することができる。ただし、当該転得者が他の転得者から転得した者である場合においては、当該転得者の前に転得した全ての転得者に対しても否認の原因があるときに限る。
 一 転得者が転得の当時、破産者がした行為が破産債権者を害することを知っていたとき。
 二 転得者が第百六十一条第二項各号に掲げる者のいずれかであるとき。ただし、転得の当時、破産者がした行為が破産債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
 三 転得者が無償行為又はこれと同視すべき有償行為によって転得した者であるとき。
 
2 第百六十七条第二項の規定は、前項第三号の規定により否認権の行使があった場合について準用する。


e-Gov 破産法

 

もう一歩先へ
詐害行為取消請求においても、受益者が善意である場合には、転得者に対しても詐害行為取消請求をすることができないとしています。

cf. 民法424条の5柱書き 転得者に対する詐害行為取消請求
cf. 民事再生法134条 転得者に対する否認権

民法187条 占有の承継

第187条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
 
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。


e-Gov 民法

 

もう一歩先へ 2項:
「その瑕疵をも承継する」とは、占有と瑕疵を承継するという意味ではなく、瑕疵のないことも瑕疵も承継するということと解されています。

このことは、例えば、Aが4年間善意占有、Bが7年間悪意占有していた場合、占有と瑕疵を承継するということにすぎないという意味であれば、Bに時効取得の可能性はありません。

cf. 民法162条 所有権の取得時効

民法191条 占有者による損害賠償

第191条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。


e-Gov 民法

 

もう一歩先へ
  • 悪意の占有者は全部の賠償
  • 善意の占有者は、自分の物と思っているから、ぞんざいに使用するのも仕方がないので、現に利益を受けている限度において賠償
  • しかし、所有の意思のない善意の占有者は、自分の物でないと知っているので全部の賠償

民法200条 占有回収の訴え

第200条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
 
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。


e-Gov 民法

 
cf. 民法201条 占有の訴えの提起期間

もう一歩先へ 1項:
占有を奪われたときだけなので、窃盗や強盗などのときは使えますが、詐欺、恐喝、横領、遺失等のときは使えません。
もう一歩先へ 2項ただし書き:

悪意には、善意・有過失を含むか

悪意者の占有は不穏な占有といえるため平穏な占有に戻すために占有回収の訴えを提起できますが、善意・有過失の者の占有は平穏な占有といえるため提起できません。条文通りです。