民法482条 代物弁済

第482条 弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。


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改正前民法482条 代物弁済

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cf. 最判昭39・11・26(昭和37(オ)1051 貸金請求) 全文

判示事項
 民法第四八二条にいう「他ノ給付」が不動産の所有権を移転することにある場合と代物弁済成立の要件。

裁判要旨
 民法第四八二条にいう「他ノ給付」が不動産の所有権を移転することにある場合には、当事者がその意思表示をするだけではたりず、登記その他引渡行為を終了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ、代物弁済は成立しないと解すべきである。

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cf. 最判昭57・6・4(昭和57(オ)111 所有権移転登記抹消登記手続) 全文

判示事項
 不動産を目的とする代物弁済と該不動産所有権移転の時期

裁判要旨
 不動産を目的とする代物弁済契約の意思表示がされたときは、これにより該不動産の所有権移転の効果が生ずる。

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既存債務の履行に「代えて」約束手形を振り出し、それにより既存債務を消滅させる合意は代物弁済になるのに対し、履行の「ために」振り出した場合には代物弁済とはならず、本来の債権は消滅しません。当事者の意思が明らかでない場合には後者と推定されます
 
cf. 最判昭23・10・14(昭和23(オ)12  貸金請求) 全文

判示事項
 一 手形の授受と既存債務の担保の推定。
 二 既存債務の担保の手形と請求順序。
 三 既存債務の担保の手形につき臨時財産調査令による財産申告を怠つた場合と既存債務の行使。

裁判要旨
 一 手形が既存債務の支払確保のため振り出された場合、当事者間に別段の意思表示がなく、且つ、債務者自身が手形上の唯一の義務者であるときは、右手形の授受は、既存債務の担保のためになされたものと推定するのが相当である。
 二 手形が既存債務の担保のため授受せられた場合には、債権者は、既存の債権と手形上の権利とのいずれをも任意に選択して行使することができる。
 三 手形が既存の貸金債務の担保のため授受せられた場合、その手形につき臨時財産調査令による財産申告を怠つたため、手形上の権利の行使ができなくなつても、既存の貸金債権を行使することは妨げない。

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代物弁済契約は、本来債務の発生原因となる契約が解除された場合には、代物弁済の合意は遡及消滅し、代物弁済契約による所有権移転の効果も遡って失われる

cf. 最判昭60・12・20(昭和58(オ)706  損害賠償本訴、契約金返還反訴) 全文

判示事項
 債務者が代物弁済に供した不動産をその登記未了の間に第三者に譲渡したがその後代物弁済契約が遡つて失効した場合と債権者に対する不法行為責任の有無

裁判要旨
  債務者が、債権者に対し賃借権譲受代金債務の支払に代えて不動産を譲渡した後その登記未了の間に、これを第三者に二重に譲渡し登記を経由した場合であつても、右賃借権譲渡契約が解除されて右債務が遡つて消滅し、代物弁済契約による所有権移転の効果も遡つて失われたときは、債務者は債権者に対し、右不動産の所有権侵害による不法行為責任を負わない。

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cf. 最判昭43・11・19(昭和43(オ)822  貸金請求) 全文

判示事項
 不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合に債務消滅に関する特約が有効とされた事例

裁判要旨
 債務者が不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合でも、債権者が右不動産の所有権移転登記手続に必要な一切の書類を債務者から受領しただけでただちに代物弁済による債務消滅の効力を生ぜしめる旨の特約が存するときには、債権者が債務者から右書類を受領した時に、代物弁済による債務消滅の効力が生ずる。

民法483条 特定物の現状による引渡し

第483条 債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。


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改正前民法483条 特定物の現状による引渡し

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