民法952条 相続財産の清算人の選任

第952条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
 
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない


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民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)

成立 2021(令和3)年4月21日
公布 2021(令和3)年4月28日
施行日 2023(令和5)年4月1日
参考 相続財産清算人の選任の申立書@裁判所

もう一歩先へ 1項:
相続財産上の担保権者は、「利害関係人」に該当しますが、利害関係を有することと、他の相続債権者等に担保権を対抗できるかどうかは別次元の問題です。
 
例えば、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡時に登記がなければ他の相続債権者等に対して対抗できないことから、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を求めることはできません。

cf. 最判平11・1・21(根抵当権設定仮登記本登記手続) 全文

判示事項
 被相続人から抵当権の設定を受けた相続債権者が相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することの可否

裁判要旨
 相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができない。

もう一歩先へ 1項: 特別縁故者に対する相続財産分与事件に関する意見陳述
家庭裁判所は、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てについての審判をするにあたって相続財産の清算人の意見を聴取しなければなりません。

cf. 家事事件手続法205条 意見の聴取
もう一歩先へ 1項:
選任の審判は、相続財産清算人に告知することによって、効力を生じます。 この審判に対して、即時抗告をすることはできません。

cf. 家事事件手続法74条2項 審判の告知及び効力の発生等
cf. 家事事件手続法206条 即時抗告


cf. 所有者不明土地に関する特別措置法42条 所有者不明土地の管理に関する民法の特例

民法953条 不在者の財産の管理人に関する規定の準用

第953条 第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の清算人(以下この章において単に「相続財産の清算人」という。)について準用する。


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改正前民法953条 不在者の財産の管理人に関する規定の準用

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民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)

成立 2021(令和3)年4月21日
公布 2021(令和3)年4月28日
施行日 2023(令和5)年4月1日
 
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共同相続人中の1人が死亡し、その者の相続人が不存在(存否不明)の場合、その者の相続財産は法人となり、その相続財産清算人が共同相続人間で遺産分割協議を行うことになりますが、遺産分割協議をするためには、家庭裁判所の許可が必要です。

cf. 民法951条 相続財産法人の成立

cf. 民法952条1項 相続財産の清算人の選任

cf. 民法953条⇒民法28条 管理人の権限

民法954条 相続財産の清算人の報告

第954条 相続財産の清算人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。


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改正前民法954条 相続財産の管理人の報告

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民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)

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公布 2021(令和3)年4月28日
施行日 2023(令和5)年4月1日

民法955条 相続財産法人の不成立

第955条 相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の清算人がその権限内でした行為の効力を妨げない。


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改正前民法955条 相続財産法人の不成立

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民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)

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公布 2021(令和3)年4月28日
施行日 2023(令和5)年4月1日

民法956条 相続財産の清算人の代理権の消滅

第956条 相続財産の清算人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
 
2 前項の場合には、相続財産の清算人は、遅滞なく相続人に対して清算に係る計算をしなければならない。


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改正前民法956条 相続財産の管理人の代理権の消滅

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公布 2021(令和3)年4月28日
施行日 2023(令和5)年4月1日

民法957条 相続債権者及び受遺者に対する弁済

第957条 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない
 
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。


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改正前民法957条 相続債権者及び受遺者に対する弁済

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公布 2021(令和3)年4月28日
施行日 2023(令和5)年4月1日
 
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本条の相続債権者及び受遺者への請求申出の公告・催告は、家庭裁判所が行うものでないことから、その記載内容について、相続清算人の選任及び相続人の権利主張催告の公告のような定めがありません。

cf. 家事事件手続規則109条 相続財産の清算人の選任等の公告・法第二百三条等

相続清算人としては、上記の公告を参考に必要事項や法律上定められている事項を記載することとなります。

もう一歩先へ 2項:
知れている相続債権者及び受遺者に対する個別の催告(民法927条3項)は、時効の更新事由としての承認の効力を有します。権利の存在及び額を認めている者に対して行うからです。

善管注意義務を負っている相続財産清算人としては、消滅時効に関する時効期間の経過の有無を確認したうえで、個別の催告をする必要があります。

cf. 民法927条3項 相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告
cf. 家事事件手続法208
cf. 家事事件手続法125条6項 管理者の改任等
cf. 民法644条 受任者の注意義務

民法958条 権利を主張する者がない場合

第958条 第九百五十二条第二項の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の清算人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。


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改正前民法958条の2 権利を主張する者がない場合

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公布 2021(令和3)年4月28日
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cf. 民法958条の2 特別縁故者に対する相続財産の分与

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cf. 最判昭56・10・30(相続権確認等) 全文

判示事項
 一 相続権確認訴訟の係属と右訴訟の当事者以外の者による相続申出についての民法九五八条の規定による公告期間の延長の有無
 二 民法九五八条の規定による公告期間を徒過した相続人と特別縁故者に対する相続財産分与後の残余財産についての相続権の有無

裁判要旨
 一 民法九五八条の規定による公告期間内に相続申出をした者につき相続権確認訴訟が係属していても、右訴訟の当事者以外の者による相続申出について該訴訟の確定まで右公告期間が延長されるものではない。
 二 民法九五八条の規定による公告期間を徒過した相続人は、特別縁故者に対する相続財産分与後の残余財産についても相続権を有しない。

民法958条の2 特別縁故者に対する相続財産の分与

第958条の2 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
 
2 前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。


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改正前民法958条の3 特別縁故者に対する相続財産の分与

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公布 2021(令和3)年4月28日
施行日 2023(令和5)年4月1日
 
もう一歩先へ 1項:
特別縁故者の範囲として、「被相続人と生計を同じくする者」が挙げられていますが、事実婚のパートナー(内縁の配偶者)はそれに含まれます。
しかしながら、特別縁故による相続財産分与を受けるには、家庭裁判所による分与を認める審判が必要です。また、相続税が課せられます。

cf. 労働基準法施行規則42条 遺族補償を受けるべき者
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cf. 最判平6・10・13(平成3(オ)424 遺言無効確認等) 全文

判示事項
 相続財産分与の審判前に特別縁故者に当たると主張する者が提起した遺言無効確認の訴えと訴えの利益の有無

裁判要旨
 民法九五八条の三第一項の規定による相続財産の分与の審判前に特別縁故者に当たると主張する者が提起した遺言無効確認の訴えは、訴えの利益を欠く。

民法258条 裁判による共有物の分割

第258条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
 
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
 一 共有物の現物を分割する方法
 二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

 
3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
 
4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。


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改正前民法258条 裁判による共有物の分割

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民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)

成立 2021(令和3)年4月21日
公布 2021(令和3)年4月28日
施行日 2023(令和5)年4月1日
 
cf. 民法907条 遺産の分割の協議又は審判

民法258条の2 裁判による共有物の分割

第258条の2 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
 
2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。
 
3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければならない。


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民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)

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もう一歩先へ 1項:
相続財産が数人の相続人及び相続人以外の者の共有に属する場合において、遺産共有の解消は、遺産分割の手続によるのが原則です。
もう一歩先へ 2項本文:
相続開始の時から10年を経過したときは、例外的に相続財産に属する共有物の持分(遺産共有持分)については、その解消を共有物分割の手続によることができます。