民法412条の2 履行不能

第412条の2 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
 
2 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。


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もう一歩先へ 2項:
債務の履行が不能であるにもかかわらず、契約が締結されていることから、動機の錯誤(民法95条2項)を理由に契約が取り消される可能性もあります。

cf. 民法95条2項 錯誤

契約が取り消された場合には、債務が存在しないことになり、債務不履行に基づく損害賠償請求をすることはできません。

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cf. 最判平9・2・25(建物賃料等請求本訴、保証金返還請求反訴) 全文

本条文は当該判例法理を明文化したものです

判示事項
 賃借人の債務不履行による賃貸借の解除と賃貸人の承諾のある転貸借の帰すう

裁判要旨
 賃貸借が賃借人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する。

民法413条の2 履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由

第413条の2 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
 
2 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。


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改正前民法414条 履行の強制

第414条  債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
 
2  債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
 
3  不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。
 
4  前三項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

 
cf. 民法414条 履行の強制
 

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本条2項及び3項は削除され、その内容は、民事執行法171条1項各号に規定しています。

cf.民事執行法171条 代替執行

施行日 令和2(2020)年4月1日

cf. 改正債権法附則1条 施行期日

参考 民法(債権関係)改正法の施行期日について@法務省

民法414条 履行の強制

第414条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
 
2 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。


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改正前民法414条 履行の強制

cf. 民事執行法171条1項 代替執行

民法415条 債務不履行による損害賠償

第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
 
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
 一 債務の履行が不能であるとき。
 二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。


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改正前民法415条 債務不履行による損害賠償

もう一歩先へ 1項ただし書き
帰責事由については、債務者がその不存在について主張立証責任を負います。
Un pas de plus ! もう一歩先へ
cf. 最判昭30・3・25(昭和29(オ)790 損害賠償請求) 全文

判示事項
 債務不履行による損害賠償と「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用の有無

裁判要旨
 債務不履行による損害賠償については「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用はない。

cf. 失火責任法

改正前民法416条 損害賠償の範囲

第416条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
 
2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

 
cf. 民法416条 損害賠償の範囲

民法417条の2 中間利息の控除

第417条の2 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
 
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。


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もう一歩先へ 1項:
「損害賠償の請求権が生じた時点」とは、例えば、事故の時点などです。
cf. 民法722条1項 損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺