刑法230条の2 公共の利害に関する場合の特例

第230条の2 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
 
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
 
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。


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cf. 最大判昭44・6・25(昭和41(あ)2472 名誉毀損) 全文

判示事項
 事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がある場合と名誉毀損罪の成否

裁判要旨
 刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。

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cf. 最判昭43・1・18(昭和42(あ)361 名誉毀損、私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使) 全文

判示事項
 人の噂であるという表現を用いて名誉を毀損した場合と刑法第二三〇条ノ二にいわゆる事実の証明の対象

裁判要旨
 「人の噂であるから真偽は別として」という表現を用いて公務員の名誉を毀損する事実を摘示した場合において、刑法第二三〇条ノ二所定の事実の証明の対象となるのは、風評そのものの存在ではなく、その風評の内容たる事実が真実であることと解すべきである。

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cf. 最判昭56・4・16(昭和55(あ)273 名誉毀損) 全文

判示事項
 一 私人の私生活上の行状と刑法二三〇条の二項一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」
 二 刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるとされた事例
 三 刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断方法

裁判要旨
 一 私人の私生活上の行状であつても、そのたずさわる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによつては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる場合がある。
 二 多数の信徒を擁するわが国有数の宗教団体の教義ないしあり方を批判しその誤りを指摘するにあたり、その例証として摘示した「右宗教団体の会長(当時)の女性関係が乱脈をきわめており、同会長と関係のあつた女性二名が同会長によつて国会に送り込まれていること」などの事実は、同会長が、右宗教団体において、その教義を身をもつて実践すべき信仰上のほぼ絶対的な指導者であつて、公私を問わずその言動が信徒の精神生活等に重大な影響を与える立場にあつたなど判示の事実関係のもとにおいては、刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる。
 三 刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、同条にいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであつて、摘示された事実が「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断を左右するものではない。

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cf. 最決平22・3・15(平成21(あ)360 名誉毀損被告事件) 全文

判示事項
 1 インターネットの個人利用者による名誉毀損と摘示事実を真実と誤信したことについての相当の理由
 2 インターネットの個人利用者による名誉毀損行為につき,摘示事実を真実と誤信したことについて相当の理由がないとされた事例

裁判要旨
 1 インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の表現手段を利用した場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきではない。
 2 インターネットの個人利用者が,摘示した事実を真実であると誤信してした名誉毀損行為について,その根拠とした資料の中には一方的立場から作成されたにすぎないものもあることなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,上記誤信について,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があるとはいえない。

改正前刑法231条 侮辱

第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。


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cf. 刑法231条 侮辱

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cf. 最決昭58・11・1(昭和58(あ)960  侮辱、軽犯罪法違反) 全文

判示事項
 法人を被害者とする侮辱罪の成否

裁判要旨
 侮辱罪は、法人を被害者とする場合においても成立する。

刑法232条 親告罪

第232条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
 
2 告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。


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刑法234条 威力業務妨害

第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。


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cf. 最判昭28・1・30(昭和25(れ)1864 住居侵入、業務妨害) 全文

判示事項
 一 刑法第二三四条にいう「業務ヲ妨害シタル」ことの意義
 二 同条にいう「威力」の意義

裁判要旨
 一 刑法第二三四条の業務妨害罪にいう「業務ヲ妨害シタル」こととは、具体的な個々の現実に執行している業務の執行を妨害する行為のみならず、被害者の当該業務における地位にかんがみ、その遂行すべき業務の経営を阻害するにたる一切の行為を指称する。
 二 同条にいう「威力」とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて被害者の自由意思を制圧するにたる勢力を指称する。

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cf. 最判平4・11・27(平成4(あ)267 威力業務妨害) 全文

判示事項
 猫の死がいを被害者の事務机引き出し内に入れておき同人に発見させるなどした行為が刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」た場合に当たるとされた事例

裁判要旨
 被害者の事務机引き出し内に赤く染めた猫の死がいを入れておくなどして、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為(判文参照)は、刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」た場合に当たる。

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cf. 最決昭62・3・12(昭和59(あ)627 建造物侵入、威力業務妨害) 全文

判示事項
 県議会委員会の条例案採決等の事務と威力業務妨害罪にいう[業務]

裁判要旨
 県議会委員会の条例案採決等の事務は、威力業務妨害罪にいう[業務]に当たる。

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cf. 最判昭32・2・21(昭和31(あ)1864 威力業務妨害) 全文

判示事項
 刑法第二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」の意義

裁判要旨
 刑法第二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」とは、一定の行為の必然的結果として、人の意思を制圧するような勢力を用いれば足り、必ずしもそれが直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要しない。

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cf. 最判昭28・1・30(昭和25(れ)1864 住居侵入、業務妨害) 全文

判示事項
 一 刑法第二三四条にいう「業務ヲ妨害シタル」ことの意義
 二 同条にいう「威力」の意義

裁判要旨
 一 刑法第二三四条の業務妨害罪にいう「業務ヲ妨害シタル」こととは、具体的な個々の現実に執行している業務の執行を妨害する行為のみならず、被害者の当該業務における地位にかんがみ、その遂行すべき業務の経営を阻害するにたる一切の行為を指称する。
 二 同条にいう「威力」とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて被害者の自由意思を制圧するにたる勢力を指称する。

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cf. 最決昭59・3・23(昭和57(あ)987 威力業務妨害) 全文

判示事項
 弁護士の業務用鞄の奪取隠匿行為が刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」た場合にあたるとされた事例

裁判要旨
 弁護士からその業務にとつて重要な書類が在中する鞄を奪取して隠匿する行為は、刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」た場合にあたる。

改正前刑法234条の2 電子計算機損壊等業務妨害

第234条の2 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
 
2 前項の罪の未遂は、罰する。


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cf. 刑法234条の2 電子計算機損壊等業務妨害

改正前刑法235条 窃盗

第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。


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cf. 刑法235条 窃盗

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cf. 最判昭40・3・9(昭和39(あ)2131 窃盗、準強盗、強盗等) 全文

判示事項
 窃盗の着手があつたものと認められた事例。

裁判要旨
 犯人が被害者方店舗内において所携の懐中電燈により真暗な店内を照らし、電気器具類の積んであることが判つたが、なるべく金を盗りたいので店内煙草売場の方に行きかけた、との事実があれば、窃盗の着手行為があつたものと認めるのが相当である。

 
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cf. 最決昭29・5・6(昭和28(あ)5267 窃盗、同未遂) 全文

判示事項
 窃盗の実行に着手したと認められる一事例

裁判要旨
 ズボンの尻ポケツトから現金をすり取ろうとして手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものである。

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cf. 最決昭31・10・2(昭和31(あ)2101 窃盗、窃盗未遂) 全文

判示事項
 窃盗の実行に着手したと認められる事例。

裁判要旨
 電柱に架設中の電話線を切断しようとした以上、窃盗の実行に着手したものである。

 
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cf. 最判昭23・10・23(昭和23(れ)675 窃盗) 全文

判示事項
 窃盜既遂の時期

裁判要旨
 凡そ不法に領得する意思を以つて、事實上他の支配内に存する物體を自己の支配内に移したときは、茲に窃盜罪は既遂の域に達するものであつて、必らずしも犯人が之を自由に處分し得べき安全なる位置にまで置くことを必要とするものではない。

 
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cf. 最決昭58・9・21(昭和58(あ)537 窃盗) 全文

判示事項
 是非弁別能力を有する刑事未成年者を利用して窃盗を行つた者につき窃盗の間接正犯が成立するとされた事例

裁判要旨
 自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている一二歳の養女を利用して窃盗を行つたと認められる判示の事実関係のもとにおいては、たとえ同女が是非善悪の判断能力を有する者であつたとしても、右利用者につき窃盗の間接正犯が成立する。

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間接正犯が成立するとしています

cf. 最決昭31・7・3(昭和29(あ)1774 窃盗) 全文

判示事項
 他人の所有管理にかかる物件を不法領得の意思をもつて、恰も自己の所有物の如く装い第三者に売却搬出せしめた所為と窃盗罪の成否

裁判要旨
 他人の所有管理にかかる物件につき、管理処分権なき者が、不法領得の意思をもつて恰も自己の所有物の如く装いこれを善意の第三者に売却搬出せしめた所為は、窃盗罪を構成する。

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cf. 最判昭41・4・8(昭和40(あ)1573 強姦致傷、強姦、殺人、死体遺棄、窃盗) 全文

判示事項
 人を殺害した後被害者が身につけていた財物を奪取した行為が窃盗罪にあたるとされた事例

裁判要旨
 野外において人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後その現場で、被害者が身につけていた腕時計を奪取する行為は、窃盗罪を構成する。

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窃取にかかるキャッシュカードを使用し、現金自動預払機等から現金を窃取するために預貯金の残高照会をした行為につき、窃盗罪及び窃盗未遂罪が成立し、これらを併合罪とする。

cf. 名古屋高裁平13・9・17(平成13(う)164 窃盗未遂,窃盗被告) 全文

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最判昭24・7・23(昭和24(れ)297 窃盗) 全文

判示事項
 二時間餘の短時間内に同一場所で同一機會を利用して爲した窃盜に對し併合罪を問擬した判決の擬律錯誤の違法

裁判要旨
 原審の確定した事實によると被告人は長男Aと共謀の上昭和二二年一二月一四日午後一〇時頃から翌一五日午前零時頃までの間三回にわたつて栃木懸鹽谷郡a村大字b字c所在B農業會b(第d號)倉庫で同農業會倉庫係C保管の水粳玄米四斗入三俵づつ合計九俵を窃取したものであるというのであつて原審は右事實を併合罪として處斷しているのである。ところが右三回にわたる窃盜行爲は僅か二時間餘の短時間のうちに同一場所で爲されたもので同一機會を利用したものであることは舉示の證據からも窺はれるのであり、且ついずれも米俵の窃取という全く同種の動作であるから單一の犯意の發現たる一連の動作であると認めるのが、相當であつて、原判決舉示の證據によるもそれが別個獨立の犯意に出でたものであると認むべき別段の事由を發見することはできないのである。然らば右のような事實關係においてはこれを一罪と認定するのが相當であつて獨立した三個の犯罪と認定すべきではない。それ故原審が證據上別段の事由の認められないに拘わらず右三回の窃取行爲を獨立した三個の犯罪行爲と認定したことは實驗則に反して事實を認定した違法があると云わなければならない。

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cf. 最決平1・7・7(昭和59(あ)1168 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律違反、窃盗) 全文

判示事項
 自動車金融により所有権を取得した貸主による自動車の引揚行為と窃盗罪の成否

裁判要旨
 買戻約款付自動車売買契約により自動車金融をしていた貸主が、借主の買戻権喪失により自動車の所有権を取得した後、借主の事実上の支配内にある自動車を承諾なしに引き揚げた行為は、刑法二四二条にいう他人の占有に属する物を窃取したものとして窃盗罪を構成する。

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木材の流失を防ぐために電線を勝手に切断し、これを用いて木材を繋ぎ止めた事案において不法領得の意思を認めており、利用・処分意思は必ずしも経済的用法や、本来の用法に従うものである必要はないことを明らかにした。

cf. 最決昭35・9・9(昭和32(あ)1135 窃盗) 全文

判示事項
 窃盗罪の成立する事例

裁判要旨
 河川の流れに入り、大水で漂流中の木材一本(トガの木、直径三尺、長さ二間)を拾得して河岸に引揚げた上、その流失を防ぐため、附近の柱に巻きつけてあつた他人所有の電線三本長さ二一メートル(同所からの揚水用モーターに送電するためのもので、当時は大水に備え一時支柱から外し、本柱にまきつけてあつた。)中の約一二メートル(時価約金一、二〇〇円相当)を勝手に切断し、これを用いて前記木材を繋留した場合には、右電線を不法に領得する意思がなかつたものとはいえず、同電線窃盗の罪が成立するものと解するのが相当である。

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cf. 最判昭26・7・13(昭和26(れ)347 強盗傷人、窃盗) 全文

判示事項
 一 窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思
 二 窃盗犯人に不正領得の意思が認められる一事例
 三 強盗傷人と窃盗の二罪を構成する例

裁判要旨
 一 そもそも、刑法上窃盗罪の成立に必要な不法領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであつて、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としないのであるから、被告人等が対岸に該船を乗り捨てる意思で前記肥料船に対するAの所持を奪つた以上、一時的にも該船の権利を排除し終局的に自ら該船に対する完全な支配を取得して所有者と同様の実を挙げる意思即ち右にいわゆる不正領得の意思がなかつたという訳にはゆかない
 二 被告人等が本件強盗傷人の罪を犯す当時には未だ本件窃盗を犯す意思は全然なく、右強盗傷人が既遂となり逃走の途中偶然の機会において新たに本件窃盗の犯意を生じたものであることは原判決挙示の証拠上疑いのないところであるばかりでなく、それらの行為自体からみても、はた又被害法益の点からみても、本件強盗傷人と窃盗の二罪を構成し、所論のように単一の犯罪を構成するものと認めるべきでないことは多言を要しないところである。

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cf. 最判昭32・11・8(昭和32(あ)2125 窃盜、同未遂) 全文

判示事項
 一 刑法上の占有の意義
 二 占有離脱物と認められない一事例

裁判要旨
 一 刑法上の占有は人が物を実力的に支配する関係であつて、その支配の態様は物の形状その他の具体的事情によつて一様ではないが、必ずしも物の現実の所持または監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在するを以つて足りる。
 二 被害者がバスを待つ間に写真機を身辺約三〇糎の個所に置き、行列の移動に連れて改札口の方に進んだが、改札口の手前約三・六六米の所に来たとき、写真機を置き忘れたことに気づき直ちに引き返したところ、既にその場から持ち去られていたもので行列が動き始めてからその場所に引き返すまでの時間は約五分、写真機を置いた場所と引き返した点との距離は約一九・五八米に過ぎないような場合は、未だ被害者の占有を離れたものとはいえない。

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これは被告人自身が殺害した事案です

cf. 最判昭41・4・8(昭和40(あ)1573 強姦致傷、強姦、殺人、死体遺棄、窃盗) 全文

判示事項
 人を殺害した後被害者が身につけていた財物を奪取した行為が窃盗罪にあたるとされた事例

裁判要旨
 野外において人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後その現場で、被害者が身につけていた腕時計を奪取する行為は、窃盗罪を構成する。

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cf. 最判昭35・4・26(昭和31(あ)3981 窃盗) 全文

判示事項
 窃盗罪を構成する事例

裁判要旨
 譲渡担保にとつた貨物自動車の所有権が債権者に帰属したとしても、債務者側において引き続き占有保管している右自動車を無断で債権者が運び去る所為は、窃盗罪を構成する。