民法330条 動産の先取特権の順位

第330条 同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。
 一 不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権
 二 動産の保存の先取特権
 三 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権
 
2 前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない。第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。
 
3 果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。


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動産の担保権の順位は次のようになります。

  1. 共益費用
  2. 第1順位の特別先取特権・質権
  3. その他の特別先取特権
  4. 一般の先取特権
cf. 民法329条 一般の先取特権の順位

cf. 民法334条 先取特権と動産質権との競合

cf. 不動産の担保権の順位

民法242条 不動産の付合

第242条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。


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もう一歩先へ 但し書き:
e.g. 何の権原もない者が撒いた種から育った作物は、土地の所有者に属しますが、賃借権や永小作権等の権原を有する者が種を撒いて生えてきた作物は、土地所有者のものではなくて、権原を有する者に属するということです。共有になるということでもありません。

土地を借りて育てた野菜が全て土地所有者に持っていかれたり、土地の所有者と共有となったのでは意味がありません。

畑を借りて家庭菜園をしていた場合、野菜を寄付するつもりで家庭菜園をしてるわけではないので、育った野菜は借主のものと考えるのが当然です。

ただし、ただし書は一物一権主義に反しない範囲で認められるので、強い符合の場合には適用されません。

民法196条 占有者による費用の償還請求

第196条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
 
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる


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本条は、何の契約関係もない占有者と回復者との間の利益調整(費用償還請求)の規定です。
占有者が費用を自ら支出した場合に、回復者である所有者に対して所有権があるんだから、あなたが費用を負担するのが当然だろうと請求するもの。

他人のために費用を払ったという場合、占有者が本来の権利者(本者)である回復を請求する者に対して、費用償還請求をするものです。

善意者・悪意者を問わず、費用の償還を請求できます。

他人の物の占有ということで、使用貸借、賃貸借、留置権、質権、買戻し等で費用償還請求の話がでてきます。

 
もう一歩先へ 1項ただし書き:
占有者が果実を取得したときは、必要費くらいは負担しろよということになります。

cf. 民法189条1項 善意の占有者による果実の取得等

民法533条 同時履行の抗弁

第533条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。


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改正前民法533条 同時履行の抗弁

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cf. 最判昭34・5・14(昭和32(オ)391 引受債務金請求) 全文

判示事項
 履行の提供と同時履行の抗弁権の消滅。

裁判要旨
 双務契約の当事者の一方は、相手方の履行の提供があつても、その提供が継続されないかぎり、同時履行の抗弁権を失うものではない。

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cf. 最判昭29・7・22(昭和27(オ)1069 家屋明渡等請求) 全文

判示事項
 造作買取請求権行使の場合における造作代金支払義務と家屋明渡義務との関係――留置権または同時履行抗弁権の成否

裁判要旨
 借家法第五条により造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。

cf. 借地借家法33条 造作買取請求権
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cf. 最判平9・2・14(平成5(オ)1924 工事代金) 全文

判示事項
 請負契約の注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬全額の支払との同時履行を主張することの可否

裁判要旨
 請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。

民法192条 即時取得

第192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。


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cf. 民法186条 占有の態様等に関する推定

cf. 民法188条 占有物について行使する権利の適法の推定
 
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  • 相手が制限行為能力者や無権代理人であるときは、本条は適用されません。
     
    即時取得は、無権利者との取引を有効にするもので、無権代理の場合は表見代理の制度、制限行為能力者は催告等の制度があり、場面を異にします。

民法193条 盗品又は遺失物の回復

第193条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。


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本条の対象となるのはあくまでも「盗品又は遺失物」なので,占有物が横領した物である場合は、本条は適用されません。

cf. 民法192条 即時取得