民法189条 善意の占有者による果実の取得等

第189条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
 
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。


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本条は、物に関する特則なので、物の占有が回復される場合に適用されます。物を返還できる場合は本条を適用し、物が滅失して返還できないような場合は民法703条で現存利益の範囲で返還義務を負います。

cf. 民法703条 不当利得の返還義務
 
もう一歩先へ 1項:
善意の占有者は自分の物だと思っているので、果実を費消するのが通常だからです。

悪意の占有者の場合は、すべての果実の返還義務があり、費消した果実がある場合は、その代価を償還しなければなりません。

cf. 民法190条 悪意の占有者による果実の返還等

民法703条 不当利得の返還義務

第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。


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cf. 民法189条 善意の占有者による果実の取得等

cf. 民法32条2項 失踪の宣告の取消し

民法550条 書面によらない贈与の解除

第550条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。


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改正前民法550条 書面によらない贈与の撤回

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「撤回」を「解除」に改めたことに伴い、解除権に関する総則的な規定(民法540条、民法544条~民法548条)が書面によらない贈与について適用になるかが問題となります。

この点については、贈与の無償性などにかんがみ、書面によらない贈与の解除について適用されるのは、民法540条及び民法544条に限られるものと解されます。

cf. 民法540条 解除権の行使

cf. 民法544条 解除権の不可分性
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cf. 最判昭40・3・26(昭和39(オ)370  所有権移転登記抹消請求) 全文

判示事項
 不動産の贈与契約に基づく所有権移転登記と贈与の履行の終了。

裁判要旨
 不動産の贈与契約にもとづいて該不動産の所有権移転登記がなされたときは、その引渡の有無をとわず、民法第五五〇条にいう履行が終つたものと解すべきである。

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受贈者に対する書面でなく、贈与者と第三者との間で作成された調停調書であっても「書面」として認めています

cf. 最判昭53・11・30(昭和53(オ)831 土地所有権移転登記手続) 全文

判示事項
 民法五五〇条所定の書面にあたるとされた事例

裁判要旨
 甲が乙を相手方として申し立てた財産処分禁止請求調停事件に丙が利害関係人として参加して調停が成立し、調停調書に「乙は、その所有地のうち約四五坪(別紙図面記載の丙所有部分)を除いた部分を処分しようとするときには、甲と約一〇日前に相談のうえでする」旨の条項が記載されたが、右調停調書において丙所有部分として約四五坪の土地が除外されたのは、右調停に際し、乙から丙に対し右土地を贈与する合意が成立したためであるときは、右調停調書は、乙、丙間の贈与について作成された民法五五〇条所定の書面にあたる。

民法549条 贈与

第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。


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改正前民法549条 贈与

 
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他人の物を贈与の目的とすることも可能であり、贈与契約は有効に成立します。贈与契約は諾成契約なので、この場合、贈与者がその物の権利を取得した時からその効力を生ずるわけではなく、贈与契約の時点で効力が生じます

cf. 最判昭44・1・31(昭和43(オ)821 山林所有権移転登記抹消及び山林現地確認請求) 全文

判示事項
 一、自作農創設特別措置法に基づき国が買収した土地を目的として締結された売買契約と他人の権利の売買

 二、他人の財産権を目的とする贈与の効力

裁判要旨
 一、自作農創設特別措置法に基づいて国が買収し、所有権を取得した土地を目的とし、右土地の被買収者が第三者との間で売買契約を締結することは、民法五六〇条にいう「他人ノ権利ヲ以テ売買ノ目的ト為シタルトキ」にあたる。

 二、他人の財産権をもつて贈与の目的としたときは、贈与義務者はみずからその財産権を取得して受贈者に移転する義務を負うもので、贈与契約として有効に成立する。

民法593条の2 借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除

第593条の2 貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。


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新設 

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消費貸借と異なり、電磁的記録によってされたときに書面によってされたものとみなす旨の規定はありません。

cf. 民法587条の2第4項 書面でする消費貸借等