民法711条 近親者に対する損害の賠償

第711条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。


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「死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛」を受けた場合には、711条としては否定されるものの、709条、710条を根拠に近親者固有の慰謝料請求を認めています。

cf. 最判昭33・8・5(昭和31(オ)215 慰藉料、損害賠償請求) 全文

判示事項
 不法行為により身体を害された被害者の母の慰藉料請求が認容された事例。

裁判要旨
 不法行為により身体を害された者の母は、そのために被害者が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けた場合、自己の権利として慰藉料を請求しうるものと解するのが相当である。

cf. 民法709条 不法行為による損害賠償
cf. 民法710条 財産以外の損害の賠償
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cf. 最判昭49・12・17(昭和49(オ)212 損害賠償等請求) 全文

判示事項
 一、民法七一一条の類推適用により被害者の夫の妹に慰藉料請求権が認められた事例
 二、不法行為による生命侵害があつた場合と民法七一一条所定以外の者の固有の慰藉料請求権

裁判要旨
 一、不法行為により死亡した被害者の夫の妹であつても、この者が、跛行顕著な身体障害者であるため、長年にわたり被害者と同居してその庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続を期待しており、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた等判示の事実関係があるときには、民法七一一条の類推適用により加害者に対し慰藉料を請求しうる。
 二、不法行為による生命侵害があつた場合、民法七一一条所定以外の者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうる。

民法722条 損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺

第722条 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
 
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。


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改正前民法722条 損害賠償の方法及び過失相殺

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原状回復には多額の費用がかかることもあり、また、金銭賠償は公平な分担を求めることが容易であることから、不法行為の損害賠償は金銭賠償が原則となっています。
 
cf. 民法417条 損害賠償の方法
 
名誉毀損の場合は例外的に、謝罪広告などの適当な処分を命ずることができます。
 
cf. 民法723条 名誉毀損における原状回復
cf. 民法418条 過失相殺

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最大判昭39・6・24(昭和36(オ)412  損害賠償等請求) 全文

判示事項
 民法第七二二条第二項により被害者の過失を斟酌するについて必要な被害者の弁識能力の程度。

裁判要旨
 民法第七二二条第二項により被害者の過失を斟酌するには、被害者たる未成年者が、事理を弁識するに足る知能を具えていれば足り、行為の責任を弁識するに足る知能を具えていることを要しないものと解すべきである。

 
Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:

「被害者に過失があったとき」には、被害者本人に過失があった場合だけでなく、被害者側の過失が認められる場合も含まれます。

cf. 最判昭34・11・26(昭和33(オ)866  損害賠償請求) 全文

判示事項
 一 刑事判決における過失の有無の判断と民事判決
 二 慰藉料を請求する父母の一方に過失のある場合と民法第七二二条第二項

裁判要旨
 一 自動車運転者が業務上過失致死被告事件の判決で過失を否定された場合でも、不法行為に関する民事判決ではその過失を否定しなければならぬものではない。
 二 幼児の生命を害された慰藉料を請求する父母の一方に、その事故の発生につき監督上の過失があるときは、父母の双方に民法第七二二条第二項の適用があるものと解すべきである。

 
Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:

被害者側の過失とは、被害者と身分上ないしは社会生活上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいう。

cf. 最判昭42・6・27(昭和40(オ)1056  慰藉料請求) 全文

判示事項
 一 被害者本人が幼児である場合と民法第七二二条第二項にいう被害者の範囲
 二 同条項にいう被害者の過失にあたらないとされた事例

裁判要旨
 一 被害者本人が幼児である場合における民法第七二二条第二項にいう被害者の過失には、被害者側の過失をも包含するが、右にいわゆる被害者側の過失とは、被害者本人である幼児と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失をいうものと解するのが相当である。
 二 保育園の保母が当該保育園の被用者として被害者たる幼児を監護していたにすぎないときは、右保育園と被害者たる幼児の保護者との間に、幼児の監護について保育園側においてその責任を負う旨の取極めがされていたとしても、右保母の監護上の過失は、民法第七二二条第二項にいう被害者の過失にあたらない。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最判昭51・3・25(昭和47(オ)457  損害賠償請求) 全文

判示事項
 夫の運転する自動車に同乗する妻が右自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被つた場合において夫にも過失があるときと民法七二二条二項

裁判要旨
 夫の運転する自動車に同乗する妻が右自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被つた場合において、右衝突につき夫にも過失があるときは、特段の事情のない限り、右第三者の負担すべき損害賠償額を定めるにつき、夫の過失を民法七二二条二項にいう被害者の過失として掛酌することができる

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最判昭63・4・21(昭和59(オ)33 損害賠償請求事件) 全文

判示事項
 身体に対する加害行為によつて生じた損害について被害者の心因的要因が寄与しているときと民法七二二条二項の類推適用

裁判要旨
 身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害が加害行為のみによつて通常発生する程度、範囲を超えるものであつて、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害賠償額を定めるにつき、民法七二二条二項を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができる。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:
cf. 最判平19・4・24(平成18(受)688  損害賠償請求事件) 全文

判示事項
 内縁の夫の運転する自動車に同乗中に第三者の運転する自動車との衝突事故により傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合にその賠償額を定めるに当たり内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することの可否

裁判要旨
 内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し,それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において,その損害賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。

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cf. 最判平4・6・25(昭和63(オ)1094 損害賠償) 全文

判示事項
 損害賠償額の算定に当たって加害行為前から存在した被害者の疾患をしんしゃくすることの可否

裁判要旨
 被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法七二二条二項の規定を類推適用して、被害者の疾患をしんしゃくすることができる。

民法719条 共同不法行為者の責任

第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
 
2 行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。


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cf. 最判平13・3・13(平成10(受)168 損害賠償請求事件) 全文

判示事項
 1 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において各不法行為者が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害額の一部に限定することの可否
 2 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合の各不法行為者と被害者との間の過失相殺の方法

裁判要旨
 1 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり,結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し,責任を負うべき損害額を限定することはできない。
 2 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,過失相殺は,各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり,他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしんしゃくしてすることは許されない。

 
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cf. 最判平15.7.11(平成14(オ)1689  損害賠償等請求事件) 全文

判示事項
 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故においていわゆる絶対的過失割合を認定することができる場合における過失相殺の方法と加害者らの賠償責任

裁判要旨
 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。

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719条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であるとしています

cf. 最判昭57・3・4(昭和56(オ)173  不当利益返還) 全文

判示事項
 一 共謀による共同不法行為と民法四三四条の適用の有無
 二 継続性のない事務処理を目的とする委任契約の債務不履行による解除と民法六五二条の適用

裁判要旨
 一 共同不法行為が行為者の共謀による場合であつても、民法四三四条の規定は適用されない。
 二 民法六五二条の規定は、継続性のない事務処理を目的とする委任契約を委任者の債務不履行を理由にして解除する場合にも適用される。

cf. 改正前民法434条 連帯債務者の一人に対する履行の請求
cf. 民法652条 委任の解除の効力
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改正前民法下での判例は、共同不法行為に基づく不真正連帯債務においては、自己の負担部分を超える出捐をして初めて他の連帯債務者に対して求償することができるとしています。

cf. 最判昭63・7・1(昭和60(オ)1145  損害賠償請求本訴、同反訴事件) 全文

判示事項
 被用者と第三者との共同不法行為による損害を賠償した第三者からの使用者に対する求償権の成否

裁判要旨
 被用者と第三者との共同不法行為により他人に損害を加えた場合において、第三者が自己と被用者との過失割合に従つて定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、第三者は、被用者の負担部分について使用者に対し求償することができる。

cf. 民法442条 連帯債務者間の求償権
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cf. 最判平3・10・25(昭和63(オ)1383  求償金) 全文

判示事項
 一 共同不法行為の加害者の各使用者間における求償権の成立する範囲
 二 加害者の複数の使用者間における各使用者の負担部分
 三 加害者の複数の使用者間における求償権の成立する範囲

裁判要旨
 一 共同不法行為の加害者の各使用者が使用者責任を負う場合において、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、他方の加害者の使用者に対し、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分の限度で、求償することができる。
 二 加害者の複数の使用者が使用者責任を負う場合において、各使用者の負担部分は、加害者の加害行為の態様及びこれと各使用者の事業の執行との関連性の程度各使用者の指揮監督の強弱などを考慮して定められる責任の割合に従って定めるべきである。
 三 加害者の複数の使用者が使用者責任を負う場合において、使用者の一方は、自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、使用者の他方に対し、その負担部分の限度で、求償することができる。

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cf. 最判平15・7・11(平成14(オ)1689 損害賠償等請求事件) 全文

判示事項
 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故においていわゆる絶対的過失割合を認定することができる場合における過失相殺の方法と加害者らの賠償責任

裁判要旨
 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。

民法717条 土地の工作物等の占有者及び所有者の責任

第717条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
 
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
 
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。


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民法611条 賃借物の一部滅失等による賃料の減額等

第611条 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
 
2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。


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改正前民法611条 賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等

もう一歩先へ 1項:
改正前民法では、賃借人が請求しなければ賃料は減額されませんでしたが、新法では当然に減額されるものとしています。

改正前民法611条1項 賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等

もう一歩先へ 2項:
改正前民法では、賃借物が賃借人の過失によって、一部滅失した場合は、契約の目的が達することができない場合でも解除はできませんでした(反対解釈)。

改正前民法611条2項 賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等

新法では、賃借人の責めに帰すべき事由による場合であっても、賃貸借契約の目的を達することができないときには、賃貸人は契約の解除をすることができるとしています。

この場合、賃貸人は賃借人に損害賠償請求をすることができます。

cf. 民法415条 債務不履行による損害賠償
もう一歩先へ
賃借物の全部が滅失した場合は、賃貸借は終了します。

cf. 民法616条の2 賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了

民法715条 使用者等の責任

第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
 
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
 
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。


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本条1項の「事業の執行について」と一般法人法78条の「職務を行うについて」とはほぼ同じ意味で、客観的に行為の外形を標準として判断されます(外形標準説)。
 
Un pas de plus ! もう一歩先へ 3項:

公平等の観点から使用者等から被用者に対する求償権を、信義則上相当な限度に制限している

cf. 最判昭51・7・8(昭和49(オ)1073  損害賠償請求) 全文

判示事項
 使用者がその事業の執行につき被用者の惹起した自動車事故により損害を被つた場合において信義則上被用者に対し右損害の一部についてのみ賠償及び求償の請求が許されるにすぎないとされた事例

裁判要旨
 石油等の輸送及び販売を業とする使用者が、業務上タンクローリーを運転中の被用者の惹起した自動車事故により、直接損害を被り、かつ、第三者に対する損害賠償義務を履行したことに基づき損害を被つた場合において、使用者が業務上車両を多数保有しながら対物賠償責任保険及び車両保険に加入せず、また、右事故は被用者が特命により臨時的に乗務中生じたものであり、被用者の勤務成績は普通以上である等判示の事実関係のもとでは、使用者は、信義則上、右損害のうち四分の一を限度として、被用者に対し、賠償及び求償を請求しうるにすぎない。

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cf. 最判昭42・6・30(昭和42(オ)281 損害賠償請求) 全文

判示事項
 「失火ノ責任ニ関スル法律」と民法第七一五条

裁判要旨
 被用者が重大な過失によつて火を失したときは、使用者は、被用者の選任または監督について重大な過失がなくても、民法第七一五条第一項によつて賠償責任を負う。

cf. 失火責任法
Un pas de plus ! もう一歩先へ 2項:

使用者が法人である場合、その代表者が、単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有するにとどまらず、現実に被用者の選任及び監督を担当しているときは、当該代表者は本条2項の代理監督者に該当するとしています。

cf. 最判昭42・5・30(昭和39(オ)368 損害賠償等請求) 全文

判示事項
 夫の負傷によつて妻の被つた精神的苦痛を理由とする妻の慰籍料請求が認められなかつた事例

裁判要旨
 夫が交通事故によつて負傷し後遺症があつても、それが原審認定の程度にとどまり、そのために不具者となつて妻の一生の負担となるほどのものではなく、その他原判決判示のような諸般の事情(原判決理由参照)にあるときは、妻が夫の右負傷によつて被つた自己の精神的苦痛を理由として慰籍料を請求することはできない。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 1項:

「事業の執行について」に関して相手が信頼保護の見地から外形理論を採る

cf. 最判昭40・11・30(昭和39(オ)1113 約束手形金請求) 全文
 
判示事項
 被用者の手形偽造行為が民法第七一五条にいう「事業ノ執行ニ付キ」なした行為にあたるとされた事例。

裁判要旨
 会社の会計係中の手形係として判示のような手形作成準備事務を担当していた係員が、手形係を免じられた後に会社名義の約束手形を偽造した場合であつても、右係員が、なお会計係に所属して割引手形を銀行に使送する等の職務を担当し、かつ、会社の施設機構および事業運営の実情から、右係員が権限なしに手形を作成することが客観的に容易である状態に置かれている等判示のような事情があるときは、右手形偽造行為は、民法第七一五条にいう「事業ノ執行ニ付キ」なした行為と解するのが相当である。

Un pas de plus ! もう一歩先へ 1項:

「事業の執行について」に関して外形理論を採りつつ、相手方が悪意重過失の場合には、相手方の信頼を保護する必要がないので、当該要件をみたさないものとした

cf. 最判昭42・11・2(昭和39(オ)1103  損害賠償請求) 全文

判示事項
 被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでない行為についての被害者の悪意・重過失と民法第七一五条

裁判要旨
 被用者の取引行為がその外形からみて使用者の事業の範囲内に属すると認められる場合であつても、それが被用者の職務権限内において適法に行なわれたものではなく、かつその相手方が右の事情を知り、または少なくとも重大な過失によつてこれを知らないものであるときは、その相手方である被害者は、民法第七一五条により使用者に対してその取引行為に基づく損害の賠償を請求することができない。

民法714条 責任無能力者の監督義務者等の責任

第714条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
 
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。


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cf. 最判昭49・3・22(昭和47(オ)1067  慰藉料請求) 全文

判示事項
 責任能力のある未成年者の不法行為と監督義務者の不法行為責任

裁判要旨
 未成年者が責任能力を有する場合であつても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立する。

cf. 民法709条 不法行為による損害賠償
 
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cf. 最判平7・1・24(平成3(オ)1989 損害賠償) 全文

判示事項
 責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合における監督義務者の損害賠償責任と失火の責任に関する法律

裁判要旨
 責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合において、失火の責任に関する法律にいう重大な過失の有無は、未成年者の監督義務者の監督について考慮され、右監督義務者は、その監督について重大な過失がなかったときは、右火災により生じた損害を賠償する責任を免れると解すべきである。

cf. 失火責任法

民法710条 財産以外の損害の賠償

第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。


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cf. 最大判昭42・11・1(昭和38(オ)1408 慰藉料請求) 全文

判示事項
 不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となるか

裁判要旨
 不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。

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もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときは、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(このことは、刑法230条の2の規定の趣旨から十分窺うことができる。)。

cf. 最判昭41・6・23(昭和37(オ)815 名誉および信用毀損による損害賠償および慰藉料請求) 全文

判示事項
 公共の利害に関する事実の摘示と名誉毀損の成否

裁判要旨
 名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は、違法性を欠いて、不法行為にならないものというべきである。

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cf. 最判平14・9・24(平成13(オ)851 損害賠償等請求事件) 全文

判示事項
 名誉,プライバシー等の侵害に基づく小説の出版の差止めを認めた原審の判断に違法がないとされた事例

裁判要旨
 甲をモデルとし,経歴,身体的特徴,家族関係等によって甲と同定可能な乙が全編にわたって登場する小説において,乙が顔面にしゅようを有すること,これについて通常人が嫌う生物や原形を残さない水死体の顔などに例えて表現されていること,乙の父親が逮捕された経歴を有していることなどの記述がされていることなど判示の事実関係の下では,公共の利益にかかわらない甲のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む同小説の出版により公的立場にない甲の名誉,プライバシー及び名誉感情が侵害され,甲に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるとして,同小説の出版の差止めを認めた原審の判断には,違法がない。