民法901条 代襲相続人の相続分

第901条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
 
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。


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民法900条 法定相続分

第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
 
 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
 
 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
 
 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
 
 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。


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もう一歩先へ 4号ただし書き:
兄弟姉妹が亡くなり兄弟姉妹の間で相続をする場合、半血兄弟姉妹の相続分は全血兄弟姉妹の半分となります。

平成30年法務省令第29号 民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令

民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百九条の二の規定に基づき、同条に規定する法務省令で定める額を定める省令を次のように定める。

民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額は、百五十万円とする。


e-Gov 平成三十年法務省令第二十九号

民法909条の2 遺産の分割前における預貯金債権の行使

909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。


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本条により権利行使できる預貯金債権の割合及び額については、個々の預貯金債権ごと、つまり複数の口座がある場合、各別に計算します。

  1. 相続開始時の預貯金債権の額 ☓ 1/3 に
  2. 払い戻しを受ける相続人の法定相続分を乗じる

払戻しを受けることができる金額の限度額は、金融機関ごとに150万円です。

限度額の範囲内で、どの口座からいくら払戻しを受けるかは、請求をする相続人に任されます。

施行日 2019(令和元)年7月1日
 
cf. 改正相続法附則1条 施行期日

cf. 改正相続法附則5条 遺産の分割前における預貯金債権の行使に関する経過措置

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本条の預貯金の払戻し制度については限度額が定められてるため、これをこえる金額については、家事事件手続法200条3項の預貯金債権の仮分割の仮処分が利用することができます。

cf. 家事事件手続法200条 遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分
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預貯金債権が遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)の対象となっている場合には、所定の債務者対抗要件(遺贈については、cf.民法467条 債権の譲渡の対抗要件、特定財産承継遺言については、cf.民法899条の2第2項 共同相続における権利の承継の対抗要件)が具備された後は、本条に基づき、預貯金の払い戻しを請求することができません。

遺贈又は特定財産承継遺言の対象となっている預貯金債権について、債務者対抗要件が具備されるまでは、本条に基づいて、預貯金の払い戻しを請求することができます。

cf. 遺産分割前の相続預金の払戻し制度@全国銀行協会

民法906の2 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

第906条の2 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
 
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。


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施行日 2019(令和元)年7月1日

cf. 改正相続法附則1条 施行期日

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本条は、相続開始後に処分された場合一般の規定であるのに対し、民法909条の2は遺産に関する預貯金債権の権利行使がされた場合の特則です。

cf. 民法909条の2 遺産の分割前における預貯金債権の行使

民法909条の2では金融機関が、相続人の請求が妥当か判断することが予定されているため、被相続人名義のキャッシュカードによりATMから払い戻した場合等、金融機関がその妥当性を判断できない場合は、本条が適用されます。

所得税法124条 確定申告書を提出すべき者等が死亡した場合の確定申告

第124条 第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書を提出すべき居住者がその年の翌年一月一日から当該申告書の提出期限までの間に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その相続人は、次項の規定による申告書を提出する場合を除き、政令で定めるところにより、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日(同日前に当該相続人が出国をする場合には、その出国の時。以下この条において同じ。)までに、税務署長に対し、当該申告書を提出しなければならない。
 
2 前条第一項の規定による申告書を提出することができる居住者がその年の翌年一月一日から当該申告書の提出期限までの間に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その相続人は、政令で定めるところにより、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日までに、税務署長に対し、当該申告書を提出することができる。


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民法889条 直系尊属及び兄弟姉妹の相続権

第889条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
 一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
 二 被相続人の兄弟姉妹
 
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。


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もう一歩先へ 2項:
兄弟姉妹の場合、再代襲相続の規定は準用されていません。

cf. 民法887条3項 子及びその代襲者等の相続権

民法887条 子及びその代襲者等の相続権

第887条 被相続人の子は、相続人となる。
 
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
 
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。


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もう一歩先へ 2項:
代襲相続の原因は、相続開始以前の死亡、相続欠格、廃除の3つに限定されているため、相続放棄した者の子は代襲相続しません。
もう一歩先へ 2項ただし書き:
被相続人の子が養子で、その養子に縁組前に出生した子がある場合には、その子は養親との間に法定血族関係がなく、直系卑属に当たらないので、代襲相続権が認められません。

cf. 民法727条 縁組による親族関係の発生
もう一歩先へ 3項:
再代襲相続の規定です。相続人の子も相続開始よりも先に亡くなっているようなときは孫が、孫も亡くなっていればひ孫がという様に、どこまでも被相続人の直系卑属が代襲して相続します。

兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっている場合には、再代襲相続の規定は準用されません。

cf. 民法889条2項 直系尊属及び兄弟姉妹の相続権

民法903条 特別受益者の相続分

第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
 
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
 
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
 
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。


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改正前民法903条 特別受益者の相続分

もう一歩先へ
施行日 2019(令和元)年7月1日

施行日前に、夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与がされた場合には、本条4項の規定は適用しないこととされています。

cf. 改正相続法附則4条 夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与に関する経過措置
もう一歩先へ
  • 相続法改正前は、特別受益に該当する贈与は、原則として、何年前に行われた贈与であっても、遺留分の算定の基礎となる財産に算入されました。
  • 相続法改正で遺留分侵害の算定における特別受益は10年以内の生前贈与しか原則として特別受益として認められなくなりました。
     
    cf. 民法1044条1項、3項 遺留分を算定するための財産の価額(贈与に関して)
  • 特別受益に含まれる生前贈与に「10年以内」の制限が設けられているのは、遺留分計算の場面のみ。

    これに対して、相続分の計算については「10年以内」の期間制限が設けられていません。期間無制限で過去にさかのぼって、生前贈与が特別受益の対象となります。

もう一歩先へ 4項:
持戻し免除の意思表示があったと法律上推定される遺贈又は贈与の対象の財産は、居住用不動産に限定されます。

cf. 民法1028条3項 配偶者居住権

被相続人が、居住用不動産を特別受益として取り扱うことについて、別段の意思表示をしたときは、その意思に従うことになります。意思表示の形式については法律上、特段の定めはありません。

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合、贈与税の特例の制度があります。

cf. 相続税法21条の6 贈与税の配偶者控除

参考 相続に関するルールが大きく変わります@法務省