民法194条 代価弁償

第194条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。


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もう一歩先へ
物の返還と占有者が支払った代価の弁償は同時履行の関係に立つので、代価の弁償を受けるまでは物の返還はしなくてもよいということになります。

cf. 民法533条 同時履行の抗弁
もう一歩先へ
本条では、被害者又は遺失者は、取引の安全を考慮し、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができませんが、古物商や質屋の場合には、相応の注意義務が課され、1年間は無償で返還に応じなければならないとする規定があります。

cf. 古物営業法20条 盗品及び遺失物の回復
cf. 質屋営業法22条 盗品及び遺失物の回復

民法179条 混同

第179条 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
 
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
 
3 前二項の規定は、占有権については、適用しない。


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cf. 民法520条 混同

もう一歩先へ 1項:
土地を賃借して建物を建てている者が、土地の所有権を取得した場合は、賃借権と所有権を併存させておく必要がないため、賃借権は混同により消滅します。しかしながら、賃借権に劣後する抵当権が設定されている場合には、賃借権は消滅しません。抵当権に優先する賃借権が存続していれば、抵当権の実行後も土地の賃借を継続することができます。

意味のないものは混同により消滅しますが、残しておく意味のあるものは消滅しません。

 
もう一歩先へ 1項:
cf. 最判昭46・10・14(昭和46(オ)582  建物収去土地明渡請求) 全文
 
判示事項
 一、競売期日の公告に記載されなかつた賃借権とその対抗力
 二、執行裁判所の取調に対して申出のなかつた賃借権とその効力
 三、土地の所有権と賃借権とが混同しても賃借権が消滅しない場合

裁判要旨
 一、建物保護に関する法律一条による対抗要件を具備した土地の賃借権は、競売期日の公告に記載されなかつたとしても、その対抗力が消滅するものではない。
 二、執行裁判所の取調に対して土地の賃借権者が賃借権の申出をしなかつたとしても、その賃借権の効力に影響を及ぼすものではない。
 三、特定の土地につき所有権と賃借権とが同一人に帰属するに至つた場合であつても、その賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、その対抗要件を具備したのちに右土地に抵当権が設定されていたときは、民法一七九条一項但書の準用により、賃借権は消滅しないものと解すべきであり、このことは、賃借権の対抗要件が建物保護に関する法律一条によるものであるときでも同様である。

民法403条 金銭債権(外国の通貨で債権額を指定したとき)

第403条 外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。


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契約に際して、外国の通貨で債権額を指定した場合には、特約がない限り、指定された外貨と日本の通貨のどちらかを選択して支払うことができます。

日本の通貨を選択したときは、現実に履行するときの為替相場によると解されています(外国の通貨で支払ったその場で日本円に替えるのと実質上同じ)。

民法210条 公道に至るための他の土地の通行権

第210条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
 
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。


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もう一歩先へ 1項:
いわゆる囲繞地通行権。囲繞地通行権は袋地(囲まれた土地)の所有権さえ取得すれば、所有権の登記がなくても囲繞地(囲んでいる土地)の所有者に権利を主張できます。民法177条の例外?です。

囲繞地通行権自体の登記はありません。
cf.不動産登記法3条 登記することができる権利等

民法211条 公道に至るための他の土地の通行権(通行の場所及び方法等)

第211条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
 
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。


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民法213条 公道に至るための他の土地の通行権(分割によって公道に通じない土地が生じたとき)

第213条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
 
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。


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民法162条 所有権の取得時効

第162条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
 
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。


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所有の意思を持った占有は、自主占有ともいいますが、自主占有、善意、平穏、公然の要件は、民法186条1項で推定されます。


前後2つの時点における占有が立証されれば、その間の占有の継続が推定されます(民法186条2項)。

cf. 民法186条 占有の態様等に関する推定
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取得時効完成の効果は原始取得になります。承継取得とは異なります。

承継取得は、前主の権利を前提とした権利取得で、いわば、前主のシミも後者は継承します。相続や売買等、一般的な権利の取得のほぼ全ては承継取得です。

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原始取得

前主の権利の内容を前提としないで所有権を取得する場合をいいます。

民法158条 未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予

第158条 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
 
2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。


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改正前民法民法158条 未成年者又は成年被後見人と時効の停止

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もう一歩先へ 1項:
e.g. 時効の完成間際1月前に法定代理人がいなくなり、法定代理人が3月後に就職した場合、法定代理人が就職してから6月後に時効が進行を開始し、1月後に時効が完成します。