改正前民法419 金銭債務の特則

第419条  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
 
2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
 
3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

 
cf. 民法419条 金銭債務の特則

民法419条 金銭債務の特則

第419条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
 
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
 
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。


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改正前民法419 金銭債務の特則

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債務者が遅滞の責任を負った最初の時点 について

  • 不法に基づく損害賠償請求権は、一般に、不法行為時に債務者は直ちに履行遅滞に陥るため、不法行為時が「債務者が遅滞の責任をを負った最初の時点」となるものと解されます。
  • 安全配慮義務違反による債務不履行に基づく損害賠償請求権は、期限の定めのない債務として、債権者が履行の請求をした時から遅滞に陥るため(民法412条3項)、遅延損害金の算定に用いる法定利率は請求時のものとなると解されます。
     
    cf. 民法412条3項 履行期と履行遅滞
  • 契約解除の場合に付すべき利息については、金銭の受領時からの利息を付すため(民法545条2項)、法定利率は受領時のものとなると解されます。
     
    cf. 民法545条2項 解除の効果
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cf. 最判昭48・10・11(手形金等請求) 全文
金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、たとえ約定又は法定の利率以上の損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求することはできない。

判示事項
 金銭債務の不履行による損害賠償と弁護士費用

裁判要旨
 債権者は、金銭を目的とする債務の不履行による損害賠償として、債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を請求できない。

改正前民法420条 賠償額の予定

第420条  当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
 
2  賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
 
3  違約金は、賠償額の予定と推定する。

 
cf. 民法420条 賠償額の予定

民法420条 賠償額の予定

第420条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
 
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
 
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。


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改正前民法420条 賠償額の予定

もう一歩先へ 1項:
裁判所が損害賠償の予定額を増減できないとする改正前民法下での規定は廃止され、増減できるものとされました。これは、公序良俗違反(90条)により、裁判所が損害賠償の額を増減できることとの均衡を図ったものです。

cf. 民法90条 公序良俗

民法422条の2 代償請求権

第422条の2 債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。


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本条文は当該判例法理を明文化したものです

cf. 最判昭41・12・23(貸金敷金返還請求) 全文

判示事項
 民法上いわゆる代償請求権が認められるか

裁判要旨
 履行不能が生じたのと同一の原因によつて、債務者が履行の目的物の代償と考えられる利益を取得した場合には、債権者は、右履行不能により受けた損害を限度として、債務者に対し、右利益の償還を求める権利があると解するのが相当である。

 
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不法行為の事案ですが、この判例法理は、損害賠償額の算定方法が共通する債務不履行の事案でも妥当すると思われます

cf. 最判昭39・9・25(損害賠償請求) 全文

判示事項
 不法行為による死亡に基づく損害賠償額から生命保険金を控除することの適否。

裁判要旨
 生命保険金は、不法行為による死亡に基づく損害賠償額から控除すべきでない。

cf. 民法709条 不法行為による損害賠償

改正前民法536 債務者の危険負担等

前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
 
2  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

 
cf. 民法536条 債務者の危険負担等

改正前民法534条 債権者の危険負担

改正前民法535条 停止条件付双務契約における危険負担

民法536条 債務者の危険負担等

第536条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
 
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。


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改正前民法536 債務者の危険負担等