民法1029条 審判による配偶者居住権の取得

第1029条 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
 
 一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
 
 二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)


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施行日 配偶者居住権の制度は2020(令和2)年4月1日以後に開始した相続について適用されます。

cf. 改正相続法附則10条 配偶者の居住の権利に関する経過措置

民法1028条 配偶者居住権

第1028条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
 一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
 二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
 
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
 
3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。


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施行日 配偶者居住権の制度は2020(令和2)年4月1日以後に開始した相続について適用されます。

cf. 改正相続法附則10条 配偶者の居住の権利に関する経過措置
もう一歩先へ 1項:

配偶者居住権の成立要件は

  1. 配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していたこと。
  2. (遺産分割により配偶者居住権を取得するものとされたこと。) ∨ (配偶者居住権が遺贈又は死因贈与の目的とされたこと。)
  3. 配偶者には内縁の者は含まれません。
  4. 居住建物は被相続人の財産に属した建物でなければならないので、借家には配偶者居住権は成立しません。
  5. 被相続人が居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合は、配偶者居住権は成立しません。

 
「遺産の分割」には遺産分割の審判も含まれます。

cf. 民法1029条 審判による配偶者居住権の取得

特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)により、配偶者に配偶者居住権を取得させることはできません。遺贈によることを要します。
これを認めると、配偶者が配偶者居住権の取得を希望しない場合に、配偶者居住権の取得のみを拒絶することはできず、相続放棄をするしかないことになるからです。

本条1項には、死因贈与についての規定はありませんが、死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されるため、死因贈与によることも認められるとされます。
 
cf. 民法554条 死因贈与

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配偶者居住権の消滅原因

 
もう一歩先へ 3項:
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、配偶者居住権が遺贈された場合も、その特別受益について、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。

cf. 民法903条4項 特別受益者の相続分
cf. 刑法262条 自己の物の損壊等

遺言書保管法4条 遺言書の保管の申請

第4条 遺言者は、遺言書保管官に対し、遺言書の保管の申請をすることができる。
 
2 前項の遺言書は、法務省令で定める様式に従って作成した無封のものでなければならない。
 
3 第一項の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合にあっては、当該他の遺言書が保管されている遺言書保管所)の遺言書保管官に対してしなければならない。
 
4 第一項の申請をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、遺言書に添えて、次に掲げる事項を記載した申請書を遺言書保管官に提出しなければならない。
 一 遺言書に記載されている作成の年月日
 二 遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
 三 遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
   イ 受遺者
   ロ 民法第千六条第一項の規定により指定された遺言執行者
 四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
 
5 前項の申請書には、同項第二号に掲げる事項を証明する書類その他法務省令で定める書類を添付しなければならない。
 
6 遺言者が第一項の申請をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。


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もう一歩先へ 1項:
遺言書の保管の申請の際に、遺言者の死亡時に当該遺言者が指定する者に対し遺言書を保管している旨を通知することの申出をすることができます。

cf. 遺言書保管手続準則19条 指定する者への通知に関する申出等

遺言書の保管申請をした場合、遺言者又は遺言者が死亡している場合に、特別の事由があるときは、その申請書又はその添付書類の閲覧を請求することが可能です。

cf. 遺言書保管政令10条1項、3項 申請書等の閲覧
もう一歩先へ 4項2号
外国人も保管申請ができます。
もう一歩先へ 6項:
遺言書の保管の申請は、代理人が行うことができず、必ず、遺言書を作成した本人が出頭してしなければなりません。

申請書の作成については、司法書士法第3条第1項第2号により、司法書士が代理して作成することができます。

遺言書保管法1条 趣旨

第1条 この法律は、法務局(法務局の支局及び出張所、法務局の支局の出張所並びに地方法務局及びその支局並びにこれらの出張所を含む。次条第一項において同じ。)における遺言書(民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百六十八条自筆証書によってした遺言に係る遺言書をいう。以下同じ。)の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるとともに、その遺言書の取扱いに関し特別の定めをするものとする。


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民法1049条 遺留分の放棄

第1049条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
 
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。


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もう一歩先へ 1項:
相続の放棄は、その旨を家庭裁判所に申述すれば足りますが、遺留分の放棄をする場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。

cf. 民法938条 相続の放棄の方式
もう一歩先へ 2項:
相続分の放棄をした場合は、他の相続人の相続分は増加しますが、遺留分の放棄をした場合は、他の相続人の遺留分は増加しません。
もう一歩先へ
遺留分の放棄があった場合、代襲相続人の遺留分もなくなります。

民法1047条 受遺者又は受贈者の負担額

第1047条 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
 一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
 二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
 三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
 
2 第九百四条第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
 
3 前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
 
4 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
 
5 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。


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施行日 2019(令和元)年7月1日

cf. 改正相続法附則1条 施行期日
cf. 改正相続法の施行期日

2019(令和元)年7月1日以降に開始した相続に適用されます。

もう一歩先へ 1項:

減殺の順序(負担割合)

  1. 遺贈 -> 贈与の順序
  2. 同時の場合はその価額の割合
  3. 後の贈与から(死亡に近いほうから)順にする
cf. 改正前民法1033条 贈与と遺贈の減殺の順序
cf. 改正前民法1034条 遺贈の減殺の割合
cf. 改正前民法1035条 贈与の減殺の順序
もう一歩先へ 5項:
遺留分侵害額請求権は、具体的な金額を示して請求をした場合に、発生した金銭債務については、期限の定めのない債務となり、履行を請求した時点から履行遅滞に陥ることになります。

cf. 民法1046条 遺留分侵害額の請求
cf. 民法412条3項 履行期と履行遅滞

しかしながら、裁判所が期限を許与したときには、遡及的にその弁済期が変更されたことになります。

よって、裁判所が2021年7月23日までと期限を許与したときには、遅延損害金はその翌日の7月24日午前零時から発生します。

民法1044条 遺留分を算定するための財産の価額(贈与に関して)

第1044条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
 
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
 
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。


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改正前民法1030条 遺留分の算定

改正前民法1044条 代襲相続及び相続分の規定の準用

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施行日 2019(令和元)年7月1日

cf. 改正相続法附則1条 施行期日
cf. 改正相続法の施行期日

2019(令和元)年7月1日以降に開始した相続に適用されます。

cf. 改正相続法附則2条 民法の一部改正に伴う経過措置の原則

cf. 改正前民法1030条 遺留分の算定に関する贈与
もう一歩先へ 1項:
「相続開始前の一年間にしたものに限り」とは、相続人以外の第三者に対して贈与された場合に適用されます。
cf. 民法903条 特別受益者の相続分

民法1045条 遺留分を算定するための財産の価額(負担付贈与に関して)

第1045条 負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
 
2 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。


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施行日 2019(令和元)年7月1日

cf. 改正相続法附則1条 施行期日
cf. 改正相続法の施行期日

2019(令和元)年7月1日以降に開始した相続に適用されます。

cf. 改正相続法附則2条 民法の一部改正に伴う経過措置の原則