民法703条 不当利得の返還義務

第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。


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cf. 民法189条 善意の占有者による果実の取得等

cf. 民法32条2項 失踪の宣告の取消し

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cf. 最判昭59・12・21(昭和58(オ)934  不当利得金返還) 全文

判示事項
 不当利得返還債務の弁済として給付をした者が民法七〇三条に基づいてその返還を請求する場合と「法律上ノ原因ナクシテ」についての主張・立証責任

裁判要旨
 不当利得返還債務の弁済として給付をした者が、民法七〇三条に基づいてその返還を請求する場合には、同条所定の「法律上ノ原因ナクシテ」についての主張・立証責任を負う。

 
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cf. 最判平3・11・19(昭和62(オ)888 不当利得返還) 全文

判示事項
 一 金銭の不当利得の利益が存しないことの主張・立証責任
 二 不当利得者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅と返還義務の範囲

裁判要旨
 一 金銭の交付によって生じた不当利得の利益が存しないことについては、不当利得返還請求権の消滅を主張する者が主張・立証すべきである。
 二 不当利得をした者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は、返還義務の範囲を減少させない。

 
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cf. 最判平7.9.19(平成4(オ)524  不当利得金) 全文

判示事項
 建物賃借人から請け負って修繕工事をした者が賃借人の無資力を理由に建物所有者に対し不当利得の返還を請求することができる場合

裁判要旨
 甲が建物賃借人乙との間の請負契約に基づき建物の修繕工事をしたところ、その後乙が無資力になったため、甲の乙に対する請負代金債権の全部又は一部が無価値である場合において、右建物の所有者丙が法律上の原因なくして右修繕工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、丙と乙との間の賃貸借契約を全体としてみて、丙が対価関係なしに右利益を受けたときに限られる。

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cf. 最判平12・4・7(平成9(オ)1876  建物収去土地明渡等本訴請求、土地所有権確認等反訴請求、土地持分移転登記手続等反訴請求控訴、同附帯控訴事件) 全文

判示事項
 一 不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否
 二 請求の一部についての予備的な請求原因となるべき相続取得の主張を原告がしていなくても裁判所は被相続人の死亡等の事実をしんしゃくすべきであるとされた事例

裁判要旨
 一 不動産の共有者は、当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができる。
 二 原告が、夫の父が土地を夫に贈与し夫から右土地を相続取得したと主張して、右土地を占有する被告らに対し地代相当損害金等を請求する訴訟において、裁判所は、当事者の主張に基づいて右父の死亡、夫がその相続人の一人であること等の事実を確定した以上、右死亡により夫が右土地の持分を相続取得したことを原告が主張しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらの事実をしんしゃくし、夫の相続による持分の取得及び原告の相続による当該持分の取得を理由に原告の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきである。

cf. 民法249条 共有物の使用
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cf. 最判昭63・7・1(昭和62(オ)1057  不当利得金返還請求事件) 全文

判示事項
 第三者所有の不動産に設定された抵当権が不存在であるにもかかわらず右抵当権の実行により債権者に対してされた弁済金の交付と不当利得の成否

裁判要旨
 債権者が第三者所有の不動産の上に設定を受けた抵当権が不存在である.にもかかわらず、右抵当権の実行により第三者が不動産の所有権を喪失したときは、第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた右債権者に対し不当利得返還請求権を有する。

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cf. 最判昭49・9・26(昭和45(オ)540  金員返還請求) 全文

判示事項
 一、金銭を騙取又は横領された者の損失と騙取又は横領した者より債務の弁済を受けた者の利得との間に不当利得における因果関係がある場合
 二、騙取又は横領した金銭により債務の弁済を受けた者の悪意又は重過失と不当利得における法律上の原因

裁判要旨
 一、甲が、乙から騙取又は横領した金銭を、自己の金銭と混同させ、両替し、銀行に預け入れ、又はその一部を他の目的のため費消したのちその費消した分を別途工面した金銭によつて補填する等してから、これをもつて自己の丙に対する債務の弁済にあてた場合でも、社会通念上乙の金銭で丙の利益をはかつたと認めるに足りる連結があるときは、乙の損失と丙の利得との間には、不当利得の成立に必要な因果関係があると解すべきである。
 二、甲が乙から騙取又は横領した金銭により自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合において、右弁済の受領につき丙に悪意又は重大な過失があるときは、丙の右金銭の取得は、乙に対する関係においては法律上の原因を欠き、不当利得となる。

 
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cf. 最判平3・3・22(平成2(オ)1820  不当利得) 全文

判示事項
 債権又は優先権を有しないのに配当を受けた債権者に対する抵当権者からの不当利得返還請求の可否

裁判要旨
 抵当権者は、債権又は優先権を有しないのに配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員の返還を請求することができる。

民法550条 書面によらない贈与の解除

第550条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。


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改正前民法550条 書面によらない贈与の撤回

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「撤回」を「解除」に改めたことに伴い、解除権に関する総則的な規定(民法540条、民法544条~民法548条)が書面によらない贈与について適用になるかが問題となります。

この点については、贈与の無償性などにかんがみ、書面によらない贈与の解除について適用されるのは、民法540条及び民法544条に限られるものと解されます。

cf. 民法540条 解除権の行使

cf. 民法544条 解除権の不可分性
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cf. 最判昭40・3・26(昭和39(オ)370  所有権移転登記抹消請求) 全文

判示事項
 不動産の贈与契約に基づく所有権移転登記と贈与の履行の終了。

裁判要旨
 不動産の贈与契約にもとづいて該不動産の所有権移転登記がなされたときは、その引渡の有無をとわず、民法第五五〇条にいう履行が終つたものと解すべきである。

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受贈者に対する書面でなく、贈与者と第三者との間で作成された調停調書であっても「書面」として認めています

cf. 最判昭53・11・30(昭和53(オ)831 土地所有権移転登記手続) 全文

判示事項
 民法五五〇条所定の書面にあたるとされた事例

裁判要旨
 甲が乙を相手方として申し立てた財産処分禁止請求調停事件に丙が利害関係人として参加して調停が成立し、調停調書に「乙は、その所有地のうち約四五坪(別紙図面記載の丙所有部分)を除いた部分を処分しようとするときには、甲と約一〇日前に相談のうえでする」旨の条項が記載されたが、右調停調書において丙所有部分として約四五坪の土地が除外されたのは、右調停に際し、乙から丙に対し右土地を贈与する合意が成立したためであるときは、右調停調書は、乙、丙間の贈与について作成された民法五五〇条所定の書面にあたる。

民法549条 贈与

第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。


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改正前民法549条 贈与

 
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他人の物を贈与の目的とすることも可能であり、贈与契約は有効に成立します。贈与契約は諾成契約なので、この場合、贈与者がその物の権利を取得した時からその効力を生ずるわけではなく、贈与契約の時点で効力が生じます

cf. 最判昭44・1・31(昭和43(オ)821 山林所有権移転登記抹消及び山林現地確認請求) 全文

判示事項
 一、自作農創設特別措置法に基づき国が買収した土地を目的として締結された売買契約と他人の権利の売買

 二、他人の財産権を目的とする贈与の効力

裁判要旨
 一、自作農創設特別措置法に基づいて国が買収し、所有権を取得した土地を目的とし、右土地の被買収者が第三者との間で売買契約を締結することは、民法五六〇条にいう「他人ノ権利ヲ以テ売買ノ目的ト為シタルトキ」にあたる。

 二、他人の財産権をもつて贈与の目的としたときは、贈与義務者はみずからその財産権を取得して受贈者に移転する義務を負うもので、贈与契約として有効に成立する。

民法593条の2 借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除

第593条の2 貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。


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新設 

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消費貸借と異なり、電磁的記録によってされたときに書面によってされたものとみなす旨の規定はありません。

cf. 民法587条の2第4項 書面でする消費貸借等

通則法8条 当事者による準拠法の選択がない場合

第8条 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
 
2 前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(その当事者が当該法律行為に関係する事業所を有する場合にあっては当該事業所の所在地の法、その当事者が当該法律行為に関係する二以上の事業所で法を異にする地に所在するものを有する場合にあってはその主たる事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
 
3 第一項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。


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民法695条 和解

第695条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。


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cf. 最判昭43・3・15(昭和40(オ)347  損害賠償請求) 全文

判示事項
 示談当時予想しなかつた後遺症等が発生した場合と示談の効力

裁判要旨
 交通事故による全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に、小額の賠償金をもつて示談がされた場合において、右示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた損害についてのみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた後遺症等については、被害者は、後日その損害の賠償を請求することができる。

民法636条 請負人の担保責任の制限

第636条 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。


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改正前民法636条 請負人の担保責任に関する規定の不適用

民法634条 注文者が受ける利益の割合に応じた報酬

第634条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
 
 一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
 
 二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。


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改正前民法634条 請負人の担保責任

もう一歩先へ 1号:
「仕事が完成することができなくなった」とは、仕事の完成が不能となったことをいいます。注文者に帰責事由がある場合には、危険負担の規定(民法536条2項)が適用され、仕事が未了の部分も含めて報酬全額の請求をすることができます。しかし、自己の残債務を免れたことによる利益の償還は必要となります

cf. 民法536条2項 債務者の危険負担等
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雇用、委任及び寄託にも割合的な報酬に関する規定があります。 

cf. 民法624条の2 履行の割合に応じた報酬

cf. 民法648条3項 受任者の報酬

cf. 民法665条 寄託について委任の規定の準用⇒ 民法648条3項
 
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cf. 最判昭56・2・17(昭和52(オ)630 取立金) 全文

判示事項
 工事未完成の間における既施工部分についての請負契約解除の可否

裁判要旨
 建物等の工事未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に請負契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、かつ、当事者が既施工部分の給付について利益を有するときは、特段の事情のない限り、右部分についての契約を解除することはできない。