民法1043条 遺留分を算定するための財産の価額

第1043条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
 
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。


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本条1項と民法1044条により、遺留分を算定するための財産の価額について整理すると次のようになります。

遺留分を算定するための財産の価額
= 相続開始時における被相続人の積極財産の額
+ 原則10年以内の相続人に対する生前贈与の額
+ 原則1年以内の第三者に対する生前贈与の額
− 被相続人の債務の額

cf. 民法1044条 遺留分を算定するための財産の価額(贈与に関して)

cf. 民法1046条 遺留分侵害額の請求

民法996条 相続財産に属しない権利の遺贈

第996条 遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかったときは、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められるときは、この限りでない。


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民法1009条 遺言執行者の欠格事由

第1009条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。


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制限行為能力者一般ではなく、未成年者が遺言執行者になれません。
 
未成年者又は破産者でない限り、相続人、受遺者及び遺言公正証書における証人も遺言執行者となることができます。

法人でもその目的に反しない限り遺言執行者になることができます。地方公共団体やその首長(市又は視市長等)も遺言執行者になることができます。

cf. 民法974条 遺言の証人及び立会人の欠格事由

民法1013条 遺言の執行の妨害行為の禁止

第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
 
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
 
3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。


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施行日 2019(令和元)年7月1日

cf. 改正相続法附則1条 施行期日
cf. 改正相続法の施行期日

2019(令和元)年7月1日以降に開始した相続に適用されます。

改正前民法1013条 遺言の執行の妨害行為の禁止

もう一歩先へ 1項:
遺言執行者がいる場合、相続人の処分権が喪失します。

特定財産承継遺言がされた場合に、受益相続人が対抗要件である登記を備えることは、「その他遺言の執行を妨げるべき行為」に該当しないため、遺言執行者がいる場合でも、受益相続人は単独で相続による権利の移転の登記を申請することができます。

cf. 民法1014条2項 特定財産に関する遺言の執行
もう一歩先へ
cf. 最判昭62.4.23(第三者異議) 全文

判示事項
 一 遺言執行者がある場合と遺贈の目的物についての受遺者の第三者に対する権利行使

二 民法一〇一三条に違反してされた相続人の処分行為の効力

三 遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前と民法一〇一三条にいう「遺言執行者がある場合」

裁判要旨
 一 遺言者の所有に属する特定の不動産の受遺者は、遺言執行者があるときでも、所有権に基づき、右不動産についてされた無効な抵当権に基づく担保権実行としての競売手続の排除を求めることができる。

二 遺言執行者がある場合には、相続人が遺贈の目的物についてした処分行為は無効である。

三 遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前であつても、民法一〇一三条にいう「遺言執行者がある場合」に当たる。

cf. 民事執行法38条 第三者異議の訴え

民法1018条 遺言執行者の報酬

第1018条 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
 
2 第六百四十八条第二項及び第三項並びに第六百四十八条の二の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。


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改正前民法1018条 遺言執行者の報酬

民法1023条 前の遺言と後の遺言との抵触等

第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
 
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。


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もう一歩先へ 1項:
矛盾する遺言は後の遺言が優先します。遺言に年月「日」まで記載する理由はこのためです。
もう一歩先へ 2項:
遺言と矛盾する行為は、2重譲渡類似のものとして対抗要件の問題になるのではなく、後になされた行為が有効となります。

e.g. 甲不動産をAに与える遺言をした後に、Bに譲渡する生前処分をした場合は、Bへの譲渡が有効になります。
 
もう一歩先へ
cf. 最判昭56・11・13(所有権移転登記) 全文

判示事項
 終生扶養を受けることを前提として養子縁組をしたうえその所有する不動産の大半を養子に遺贈する旨の遺言をした者がその後養子に対する不信の念を深くして協議離縁をした場合と遺言の取消

裁判要旨
 終生扶養を受けることを前提として養子縁組をしたうえその所有する不動産の大半を養子に遺贈する旨の遺言をした者が、その後養子に対する不信の念を深くして協議離縁をし、法律上も事実上も扶養を受けないことにした場合には、右遺言は、その後にされた協議離縁と抵触するものとして、民法一〇二三条二項の規定により取り消されたものとみなすべきである。