改正相続法附則3条 共同相続における権利の承継の対抗要件に関する経過措置

第3条 第一条の規定による改正後の民法(以下「新民法」という。)第八百九十九条の二の規定は、施行日前に開始した相続に関し遺産の分割による債権の承継がされた場合において、施行日以後にその承継の通知がされるときにも、適用する。


衆議院 改正相続法

 

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「施行日」とは、2019(令和元)年7月1日です。

cf. 改正相続法附則1条 施行期日

民法899条の2第1項の適用については、施行日以降に開始した相続に適用されます(旧法主義)。

施行日前に開始した相続に関し遺産の分割による債権の承継がされ、施行日以後にその承継の通知がされる場合については、民法899条の2の規定を適用することとしています。

民法899条の2 共同相続における権利の承継の対抗要件

第899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
 
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。


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施行日 2019年7月1日

cf. 改正相続法附則1条 施行期日
cf. 改正相続法の施行期日

本条1項の適用については、2019(令和元)年7月1日以降に開始した相続に適用されます(旧法主義)。

cf. 改正相続法附則2条 民法の一部改正に伴う経過措置の原則

施行日前に開始した相続に関し遺産の分割による債権の承継がされ、施行日以後にその承継の通知がされる場合については、本条の規定を適用することとしています。

cf. 改正相続法附則3条 共同相続における権利の承継の対抗要件に関する経過措置
もう一歩先へ 2項:

相続により法定相続分を超えて債権を承継する場合の対抗要件、3種類

  1. 共同相続人全員(又は遺言執行者)による通知
  2. 債務者の承諾
  3. 受益相続人が遺言又は遺産分割の内容を明らかにしてする通知
cf. 民法467条 債権の譲渡の対抗要件

遺言の内容等を明らかにして通知をする場合も、債権譲渡の場合と同様に、受益相続人が第三者に対する対抗要件を取得するには、確定日付のある証書によって通知することが必要です。

cf. 民法467条2項 債権の譲渡の対抗要件

改正相続法附則2条 民法の一部改正に伴う経過措置の原則

第2条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に開始した相続については、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。


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相続開始時を基準とする旧法主義を採用(改正法は施行日後に開始した相続について適用され,施行日前に開始した相続については,旧法が適用される)。

施行日前に死亡した者の相続については、施行日前に遺産分割が終了している場合も、施行日までに遺産分割が終了していない場合も旧法が適用されます。

「施行日」とは、2019(令和元)年7月1日です。

cf. 改正相続法附則1条 施行期日

参考 改正相続法の施行期日

参考 経過措置について@法務省

民法886 相続に関する胎児の権利能力

第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
 
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。


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権利能力は出生により認められますが、胎児の間に特別に権利能力が認められる場合が本条を含めて4つあります。

cf. 民法3条 権利能力

民法969条 公正証書遺言

第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 
 一 証人二人以上の立会いがあること。
 
 二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 
 三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 
 四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 
 五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。


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民法970条 秘密証書遺言

第970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
 二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
 三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
 四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
 
2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。


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秘密証書遺言では、遺言者の署名や押印は必要ですが、自筆で内容を記載することは要件となっていません。パソコンで印刷しても問題ありません。
もう一歩先へ 2項:

民法968条 自筆証書遺言

第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない
 
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。


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もう一歩先へ 1項:
自筆証書遺言は封印がなくとも、自筆証書遺言の要件を満たしていれば、遺言書として有効です。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人又はその代理人の立会いがなければ開封できないので、相続人の誰か一人は検認期日に出席する必要があります。封印されていない遺言書の場合なら、検認期日には申立人(遺言書の保管者)だけが出席していればかまいません。

cf. 民法1004条3項 遺言書の検認

また、押印は指印でもかまいません。

もう一歩先へ 2項:
民法改正により、施行日以後に自筆証書遺言と一体のものとして財産目録を添付する場合には、その目録については自書しなくてもよくなりました。その他の部分については、今まで通り全て自書しなければなりません。

参考 自筆証書遺言の方式(全文自書)の緩和方策として考えられる例@法務省

財産目録と自筆証書遺言を「一体」として添付する場合の方法については、特に定めがないため、財産目録の署名押印の他にも一体性を確保する手段として、契印をする方法、同一の封筒に入れて封緘する方法、遺言書を編綴する方法など、遺言書の考える適切な方法を選択することができます。

財産目録には各頁に署名押印を要求する以外には、特に定めていないので、例えば、土地について登記事項証明書を財産目録として添付することや、預貯金について通帳の写しを添付することもできます。 いずれの場合も、財産目録の各頁に署名押印する必要があります。

参考 参考資料:財産の特定に必要な事項について自書によらない加除訂正を認める場合の例@法務局

財産目録の「毎葉」に、署名とともに押印される印鑑は、必ずしも自筆証書遺言の本文に押印されている印鑑と同一ではなくとも、遺言者の印鑑であれば構いません。

「毎葉」とは、財産目録の全ての用紙という意味です。自書によらない記載が財産目録の片面にしかない場合には、その印刷面を避けて裏面に署名押印することもできます。

参考 自筆証書遺言に関するルールが変わります。@法務省
もう一歩先へ 3項:
遺言書の訂正方法が本条の方式を満たしていない場合は、遺言書自体が無効になるわけではありません。加除変更がなされなかったものとして扱われます。

訂正方法は、次のようになります。

  1. 訂正した場所を指示すること
  2. 訂正した旨を付記すること
  3. 付記部分に署名すること
  4. 訂正場所に印を押すこと

訂正印は、署名の際に用いた印鑑を使います。

参考 遺言書の訂正の方法に関する参考資料@法務省

財産目録を差し替える場合は、元の財産目録を斜線等で抹消し、その斜線上に訂正印を押し、新しい財産目録上に追加印を押し、本文が記載された紙面上に訂正文言を記載して、遺言者が署名します。

参考 参考資料:財産の特定に必要な事項について自書によらない加除訂正を認める場合の例@法務局
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cf. 最判平6・6・24(遺言無効確認) 全文

判示事項
 封筒の封じ目にされた押印により自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはないとされた事例

裁判要旨
 遺言者が、自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため、遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが、遺言書であることを意識して、これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなど原判示の事実関係の下においては、右押印により、自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはない。

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cf. 最判平5・10・19(遺言無効確認) 全文

判示事項
一 カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言と民法九六八条一項にいう「自書」の要件
二 二人の遺言が一通の証書につづり合わされている場合と民法九七五条

裁判要旨
 一 カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言は、民法九六八条一項にいう「自書」の要件に欠けるものではない。
二 一通の証書に二人の遺言が記載されている場合であっても、その証書が各人の遺言書の用紙をつづり合わせたもので、両者が容易に切り離すことができるときは、右遺言は、民法九七五条によって禁止された共同遺言に当たらない。

cf. 民法975条 共同遺言の禁止

民法973条 成年被後見人の遺言

第973条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
 
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。


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